森倫洋
1993年東京大学法学部第一類卒業、99年ハーバード大学ロースクール卒(LL.M.)。95年から10年間裁判官を務めた後、弁護士へ転身。西村あさひ法律事務所で14年間(うち12年間余はパートナーとして)勤務。2019年、AI-EI法律事務所を設立、代表弁護士となる。
https://www.aieilaw.co.jp/

INTERVIEW

企業法務の分野において、現状は裁判所と弁護士間の相互理解が図られていないこともあるように感じます。特に私が扱う企業紛争分野は、裁判所が企業法務を扱う弁護士側のニーズをまだ把握できていないために、どうしてもギャップが生じてしまっています。裁判所と弁護士間にあるギャップを解消し、日本における企業紛争を扱える体制を整備していくことは、我々の仕事を発展させる素地を作るのだと思います。

元裁判官だから「弁護士の何を見ているか」がわかる

森倫洋

AI-EI法律事務所は企業向けの法律サービスを行っている事務所です。国内から海外まで、企業間の紛争および労働関係の案件を中心に取り扱っています。昨今、国際業務を取り扱う法律事務所は増えてきていますが、やはり大手事務所が中心になっています。しかしながら、大手事務所だと企業間の紛争、特に大型紛争がビジネスコンフリクト(顧客間の利益の相反)で取り扱えないことが増えるという葛藤があります。そのため、我々のように小規模でも企業紛争を相応の実績と信頼性を持って扱える事務所にニーズがありますが、まだ数が少なく、特に国際紛争も扱えるとなると一層少ないようです。

大型案件や国際業務はネットワークがないと取り扱いが難しいものです。その点我々は、私自身が大手事務所にいたこともあり、様々な案件や国際会議などを通じて国内外の弁護士とつながりを構築してきました。そのため他分野の専門弁護士や現地の弁護士と連携しながら大型・特殊な案件や国際案件にも取り組むことができます。その上で、さらにその経験・実績を通じて、当事務所に所属する各弁護士がクライアントからの信頼を得られるような業務ができるようにしていきたいと思っています。

我々がクライアントから最も信頼を得られる場面は、裁判に勝った時です。けれど、その成果を上げるためには、それまでの過程でも信頼を得ていなければならない。ではどうすればよいのか。まずはクライアントのお話をしっかりと伺い、必要な情報を引き出して、いくつかの仮説を立てる。そして場面ごとに、クライアントがきちんと腑(ふ)に落ちるように説明をすることだと私は考えます。例えば「裁判所が言っているのはこういう意味で、それは我々が提出したこの資料に基づいている。現状我々がしていることにはこういう意味があり、次はこういうことをしていくと非常に効果が高い」など、自身が見立てたことを一つひとつ丁寧に説明するのです。その積み重ねが信頼につながるのだと思います。

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後輩を「背中」で育てると同時に、裁判所と弁護士の橋渡しがしたい

こういった私の仕事の仕方を、後輩たちは見て覚えてくれています。もちろん、私のやり方が100%各自にフィットするわけではありませんが、その上で各々が自分なりに消化し、伸ばせるところを伸ばしていってくれたらと思っています。最近の若い人たちは非常に真面目で、真摯に仕事に取り組みます。私が面倒くさいなと思ってしまうようなことでも、きちんと一つひとつ丁寧に仕上げてくれている姿は、まさに彼らの強みだと思いますし、私自身、非常に助けられています。

私の使命は裁判所との橋渡しをすること。企業法務を扱う弁護士側のニーズを伝えた上で、裁判所と弁護士が一緒にできることを考えていきたいと思っています。裁判所にもできることとできないことがありますので、その理由を弁護士たちにフィードバックし、双方のわだかまりを解消するのも私の役目でしょう。

けれど何より、基準は「自分が楽しいかどうか」。仕事とは人生のうちのかなりの時間を費やすものですから、楽しくなければ意味がありません。楽しく仕事をした結果が業界の発展につながり、社会の役に立つことができれば、当然やりがいにつながります。日々楽しくチャレンジし続けたいですね。

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