野中等
1958年生まれ、愛知県出身。防衛大学校航空工学科を卒業後、航空自衛隊に入隊。丸文株式会社を経て、ドイツの膜厚測定器メーカーヘルムート・フィッシャー社の日本法人フィッシャー・インストルメンツの代表取締役に就任。機器の精度に定評があり、国内外の自動車メーカーやエレクトロニクスの分野で塗料やメッキの厚み測定などに使われている。
https://www.helmutfischer.jp/

INTERVIEW

新型コロナウイルスの影響で、働き方は社会全体で大きく変わりました。私たちもウェブ会議やテレワークを導入していますが、展示会も開催できずお客様を訪ねることもできない中でどのように製品をPRしていくかが今の課題です。機器の取り扱いのデモンストレーションをオンラインで公開するなど、ウェブコンテンツの拡充が急務かもしれません。
何がうまくいくか予測できない時勢ですが、同時にチャンスでもあります。製品の良さを広めて「膜厚測定といえばフィッシャー」を定着していきたいですね。

航空自衛隊から商社マンへ転身

野中等

名古屋の下町で生まれ育ち、小学生で野球、中学高校はバスケ部と、スポーツに打ち込む少年時代をすごしました。防衛大学に進学したのは、勉強も運動もしてパイロットを目指せるのは理想的だと思ったからです。自衛官になりたいというよりは、熱い青春を送りたい気持ちでした。体力には自信があったので腕立ても余裕でしたが、最初の半年ぐらいは厳しさに慣れるのに苦労しました。
2年生になると所属が陸海空に振り分けられます。実は防大に入校してくるうちの半数はパイロット志望なので空は狭き門なのですが、希望通り航空工学科に割り振られた時はうれしかったですね。上下関係には気を遣いましたが理不尽な厳しさはなく、集団生活で同じ釜の飯を食った仲間たちとは今でも親交が続いています。
卒業して航空自衛隊のパイロットとして毎日訓練に明け暮れていましたが、民間企業で働いてみたくなって、エレクトロニクス専門商社に転職しました。欧米から輸入した航空宇宙分野や防衛分野の機器を扱うので、防衛省とも取り引きがありました。もともと英語が好きだったので、一人で海外メーカーの視察を命じられた時はわくわくしましたし、自信と度胸がつきました。
数年後、同社が扱う機器のメンテナンスを担う子会社に移り、代表取締役になりました。親会社から次々と送り込まれて来る社員たちのモチベーションをどうすれば上げられるか思案する日々でしたが、親会社に依存しないように、独自にクライアントを増やして海外のハイテク製品のメンテナンスができる体制を整えていきました。ところがリーマン・ショックの影響で業績は悪化。希望退職とはいえ人員削減を余儀なくされてしまったことに責任を感じて、私も退職しました。

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最初は組織の体をなしていなかった

転職先を探している時に、後任社長を募集中のフィッシャー・インストルメンツから声をかけてもらいました。親会社であるスイス法人のCEOと直接面談し、数十人の候補者の中から採用していただいたのですが、いざ入ってみると、社内では就業規則も開示されず、給与体系や評価も場当たり的で、組織としての体をなしていない状態だったのです。情報共有ができていないので誰がどこで何をしているのか分からず、社員も疑心暗鬼になっていました。離職者も多かったです。
私が正式に社長に就任するまでの1年足らずの引き継ぎ期間で、まず就業規則を整備し、グループウェアを導入してスケジュールを可視化しました。情報共有ができたことで腹の探り合いのようなことがなくなり、みんな目の前の仕事に集中できるようになったと思います。また、社員たちの信頼を得るために充分なコミュニケーションを取るようにしました。私自身、ごますりもひいき好きではないので、フラットな雰囲気を作るように心掛けています。もちろん先輩や経験者の話に耳を傾けリスペクトするのは大事なことですが、お互いの立場を尊重すれば上下関係ではなく仲間意識が生まれるはずです。一人一人がプロ意識を持って専門分野を磨き、お互いをリスペクトする形が理想ですね。社員はみんな私のことを社長ではなく「野中さん」と呼んでくれますし、新入社員も私に直接相談してくれるような風土ができています。大企業だとまた違うかもしれませんが、うちのように社員30人程度の規模の企業にはこの雰囲気が合っていると思います。

これからはポストコロナを見据えて備えていかなくてはなりませんが、変わらないことは目の前の課題に集中し、一生懸命取り組むこと。その積み重ねで人は成長できるのです。
若い人たちにアドバイスを送るとしたら、コミュニケーションツールとして英語は身につけたほうがいいです。私自身、英語を通じて取引先やパートナーとのコミュニケーションを楽しんでいます。いろんな文化圏の人と交流していて感じるのですが、日本人ってけっこうリスペクトされているんですよ。皆さんにもそれを肌で感じてほしいと思います。チャンスをものにして、羽ばたいてください。

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