小川輝
1979年生まれ、千葉県出身。高校卒業後、陸上自衛隊入隊。第33普通科連隊所属、信務業務を担当。退職後、民間企業を経て2002年富士テクニカルコーポレーション入社。FC店舗マネージャー、仙台支店長、東京支店長、常務取締役と順調にキャリアアップを重ね17年、副社長に就任。太陽光発電事業部長、経営企画部長も兼務し、太陽光発電事業を基盤に様々な事業展開を見据えている。
https://fuji-technical.jp/
※本サイトに掲載している情報は2022年8月 取材時点のものです。

INTERVIEW

高校時代に図書館でリポートのネタを探していると、日本のエネルギー問題を取り上げている本が目に留まりました。さほど関心があったわけではないのですが、リポートを書かなければいけないのでひと通り読もうというつもりで読んだのですが、地球温暖化問題や日本のエネルギー自給率の低さに危機感を覚えました。日本には資源がないので、海外に依存するしかありません。それは大きな弱みです。資源の必要な火力発電でも安全性に不安のある原子力発電でもない、新しいエネルギー源を考えなければと真剣に考えるようになりました。その時の思いが、現在の事業にもつながっています。

国防の最前線を知りたくて、自衛隊に

小川輝

私の父は太陽熱温水器の会社を経営し、プライベートでは近現代史の研究に熱心でした。私も日本の教育や安全保障、憲法問題などについて父からしばしば話を聞かされ、メディアの情報を鵜吞みにするのではなく、自分でよく調べて判断することが大事だと思うようになりました。父の影響で日本の国防に関心を寄せるようになり、高校卒業後は自衛隊に入隊しました。給料も安くきつい仕事なのは分かっていましたが、この国の防衛の最前線を、聞きかじった話ではなく実体験で理解したかったのです。想像以上にハードな日々でしたが、この経験があれば何だってできると自信がつきました。

自衛隊を除隊すると、父を助けるために家業を手伝い始めました。その頃は住宅用の太陽光発電事業を始めていて、私も訪問営業に駆り出されました。20代の若造がいきなり訪問してきて数百万円の太陽光パネルを売ろうとするわけですから、行く先々で怪訝(けげん)そうな顔をされたり、帰れと怒鳴られたりします。つらくて辞めていく社員も多く、本当にこんな営業方法しかないのだろうかと悩みました。やがて太陽光発電業界全体が伸び悩み、撤退する事業者も相次ぎました。私たちも深刻な経営不振に陥っていました。

東日本大震災以降、FIT(固定価格買取制度)が施行され、再び太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーが脚光を浴びるようになりました。このおかげで経営不振から立ち直ることができたものの、今の状態が続くわけがない、これは一過性のブームに過ぎないという危機感を持っていました。ブームに乗じて大手や異業種からも参入してくるようになりましたが、「雲行きが怪しくなったらすぐに撤退するだろう」と思いながら見ていました。

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地域や自然との調和を目指して

事業は「やれと言われたから」「流行りだから」で取り組むのではなく、課題意識と主体性を持って自分から入り込んでいかなければ続きません。私たちには、再生可能エネルギーを純増し、将来の日本の利益につなげたいという信念があるので、簡単には撤退するつもりはありません。そのためには収益を上げられるビジネスモデルを作らなければならないので、次の一手として太陽光の自社発電所を立ち上げ、電力事業に着手しました。時代に合わない訪問営業も廃止しました。この業界で私たちよりも大きな会社や営業力の高い会社が倒産する中、ここまで生き残ることができたのは弱小企業であることを自覚し、時代の変化に対応してきたからです。一方、太陽光パネルが急増したことで、景観の破壊、ずさんな工事による危険性、不法投棄の恐れなど、地域住民の方々から歓迎されない面も見えてきました。私たちが掲げる「クリーンエネルギーと自然との共生」という理念の通り、最先端の技術を集約した発電施設が地域や自然と調和し、人々の協力を得られるようにしていくことがこれからの課題です。

現在、太陽光発電事業以外の軸として、フィットネスやリゾート事業も展開しています。見識を広げるのに、異業種交流会などで出会う人の話を聞くのもいいのですが、それでは表面的な理解しか得られません。実際にその事業をやってみることで、本当の意味で視野を広げることができると考えています。将来何が起こるかは予測できませんが、できるだけアンテナの感度を上げておきましょう。世の中を広く長期的に見通し、先手を打って自分が活躍できる環境を作っていくことが、成功への近道です。

目の前の生活で精いっぱいの状態では近視眼的な見方しかできなくなり、目先の利益にとらわれてしまいます。そうならないためにも、無理をせず心に余裕を持つことが大切です。そして、うまくいっている時こそ慢心せず、次の一手を打つことです。そして悪い時も「状況は必ず変わる」と前を向くことです。

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