岡井有子
看護師として京都市内の産婦人科勤務を経て、大阪歯科大学に入学。同大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。2017年、港区に「こどもと女性の歯科クリニック」開院。
https://cw-cl.jp/

INTERVIEW

小児歯科医として、歯だけを見るのではなく子どもたちをより良い方向に成長させてあげるために何をしてあげられるかをいつも考えています。
虫歯の治療ひとつにしても、悪いところを治すだけでは解決になりません。その後ご自宅で上手に歯磨きができないと、また虫歯になるでしょう。うちでは何度も染め出し液を使って正しい歯磨きの練習をしますし、歯を削ると咬合(こうごう)に影響が出て成長や発達の妨げになってしまうので、できるだけ削らない治療を実践しています。
治療には、子ども本人の力が必要です。小児歯科医はそれをサポートすることが役目だと思っています。

看護師から歯科医の道へ

岡井有子

歯科大学に進む前は看護師として働いていました。高齢の患者さんと接する中で、入れ歯を洗浄するだけの口のケアに「これでいいのだろうか」と疑問を持っていました。また、胃ろうの患者さんが口から食べるトレーニングを重ねて経口摂取ができるようになり、とても元気に回復されたのを見て、口の健康の大切さを痛感し、歯科の道に進もうと決意しました。
最初は衰えてしまった機能を回復することに重点を置いていましたが、勉強するにつれて、治療が必要な状態にならないように子供の頃から予防することが大切だと考えるようになり、大学院では小児歯科学を専攻しました。
開院したクリニックで「子どもと女性」と標榜(ひょうぼう)したのは、私自身が女性であり子供を産む経験をしたからです。かつて産婦人科の看護師として働いた経歴も生かせると考えました。赤ちゃんや子どもの口の健康はもちろんのこと、自分のことは後回しになりがちな妊産婦さんの口のケアや授乳指導も行い、女性が安心して通えるクリニックにしようと思いました。
産婦人科で働いていた時に気付いたのですが、エコーで見る妊婦さんの子宮の形は、円形やハート形、三角形など、様々でした。丸い子宮の方はお産もスムーズだったのです。歯科医師になった時、赤ちゃんの口の中の状態はお母さんの子宮の形と関連があることが分かりました。お母さんの子宮の形がいびつだと、赤ちゃんは楽な姿勢をとることができず、顎の形や頭の形に影響を及ぼし、成長した時にかみ合わせや姿勢、発達に不具合が生じることがあるのです。それを赤ちゃんがお腹にいる時から見つけて未然に防ぐ取り組みに力を入れています。赤ちゃんには育つ力が備わっています。生後に問題が分かったとしても、良い方向に力をかけてあげると上手に軌道修正するんです。赤ちゃんを連れて来られるお母さんもそれを信じてくださっているので、どんどん良い方向に変わります。

  • 岡井有子
  • 岡井有子

発達の遅れにも早期介入で改善を目指す

今は、顎顔面口腔育成治療という矯正治療をベースにしたRAMPAセラピーという治療に注力しています。歯を動かしたり抜いたりする従来の矯正治療とはまったく異なる手法で、歯並びを治すというよりも、歯並びが悪くなる根本的な原因である中顔面領域(鼻の部分)の発達にアプローチするものです。こちらの骨格要因の根本的改善により、歯並びはもちろんのこと、口呼吸や鼻炎、喘息などの呼吸器疾患や耳鼻疾患をはじめ、様々な症状や問題の改善につながったと多くのお子さんたちに喜んでいただいています。私自身も子供の頃たびたび中耳炎を患っていて、耳鼻科通いが辛かったことを覚えています。当時の私のような思いをしている子どもたちを少しでも楽にしてあげたいですね。
私は顎顔面口腔育成研究会の先生方と偶然出会うことでこの治療法を知ることができましたが、まだ症例も少なく認知度も高くありません。クリニックでRAMPAセラピーを扱って4年、データも少しずつ出そろってきたので、今後はその内容を広く発信していきたいです。

体が不自由なお子さんや発達に遅れのあるお子さんにも歯科的アプローチから注力したいと思っています。クリニックはベビーカーだけではなく車いすも通れるようバリアフリーに設計していますし、医療ケアが必要なお子さんへの訪問診療にも取り組みたいですね。

自分の子供や家族にも受けさせたいと思える治療だけを患者さんに提供しています。すべての子どもたちに、とにかく元気に育ってほしいですね。たとえ何か問題を抱えて生まれてきたとしても、気にならないぐらい元気に育ってくれることが私の願いです。
お子さんの発達が遅れていて不安なお母さんはたくさんいらっしゃると思います。できることはいろいろあるので、諦めないでと伝えたいです。早期の介入で解決することがたくさんあります。発達の遅いお子さんが、病名をつけられて普通学級に入れないというようなことをなくしていきたいです。「発達障がいなんて言わせない」を目標に、赤ちゃんや子どもたちへのアプローチをこれからも続けていきます。

ページの先頭へ