齋藤浩記
1973年生まれ、東京都出身。東京医科大学卒業後、勤務医を経て2006年大宮さいとうクリニック開設。その後理事長として首都圏の複数の法人の問題解決・経営改善に関わる。その実績を買われ、要請によりさらに難しい東北海道の僻地の複数の法人を承継し、係争解決・事業承継・経営改善を実現。現在は一般財団法人SAITO MEDICAL GROUPとして、東京に本部を置き首都圏での事業承継に続き、北海道、埼玉、千葉という広範囲にわたる事業を展開。
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INTERVIEW

医療行為の対価である診療報酬は、病気の存在ありきで成り立っています。介護報酬も同様です。しかし、医療が本来目指すべき理想は誰も病気にならない社会ではないでしょうか。病気を未然に防ぎ、人々の健康を増進しながら医療機関の経営が成り立つような仕組みを構築したいと私は考えています。また、社会情勢の変化や有事の際にも安定した経営運営ができるよう、食やエネルギーの自給自足を目指しています。医療は社会資源であり、国づくりに通じるものです。人々の命と健康を守るために強い基盤を作りたいと思っています。

生命への探求心から医師の道へ

齋藤浩記

小学1年生の頃に自分には祖父母が居ないということを不思議に感じ、また、親戚や友人を立て続けに亡くす経験をしました。母親に「なぜ人は死ぬの?」と質問をしたところ「そんな当たり前のことを考えるものではありません」と窘められました。この経験から「どうすれば死は無くなるのか?」と真面目に考え、「生命とは何か。人生とは。時間とは。空間とは。宇宙とは」という問いを抱くようになりました。そして「世のため人のために医師として何をなすか」と思索するようになったのです。東京医科大学に入学した後も、人生に様々な迷いが生じ、勉強に実が入らない時期もありました。留年や医師国家試験浪人も経験、その間に実家の不動産会社が倒産し、両親は離婚、経済的にも苦しくなったことから、タクシードライバーや新聞の営業・配達等のアルバイトをして学費の足しにしていたこともありました。

研修医時代は、どの診療科を選ぶか悩みましたが、どの診療科を専門にするにしても、体を診るだけではなく、心も、社会的背景にも焦点を当て、患者さんの幸せのために何ができるのか、人生そのものに向き合いたいと考えていました。また、病気ありきの診療報酬の仕組みに疑問を感じていて、いつか自らが経営をして理想の医療を実現できる仕組みを作りたいと思っていました。ある時、勤務する病院の理事長から、買収した精神科病院の経営立て直しを依頼されました。チャンスだと思って引き受けましたが、人が作った器の中で新しいことをするのには限界があります。オーナーシップを持てなかったため、理想を実現していくことにはほど遠かったのです。私が目指すのは今までにない新たな仕組みを作ることでした。この頃から思い描いていた「食やエネルギーの自給自足」を実現するためには、自分がオーナーシップを持って取り組める場所が必要でした。そんな折、知人の弁護士から「北海道に難しい裁判を抱えている病院がある。問題解決と病院存続のために力を貸してほしい」と依頼を受け、視察のために現地に向かいましたが、大変な僻地ぶりに驚きつつも、長所に焦点を当てると夢が膨らんでワクワクしていました。

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北海道の豊かな自然を生かして自給自足を実現

天然温泉と豊かな自然があり、ここなら私が理想とする仕組みが実現できそうでした。何より、この病院がつぶれると地域の人が困るだろうと考え、事業承継に踏み切りました。火中の栗を拾う行為かもしれませんが、やるしかないと強く思いました。半年前に埼玉県のクリニックを開業したばかりだったので、埼玉と北海道を週に何度も行き来し、裁判が円満解決すると、病院の再建に本腰を入れました。

私は、「自然と一体となるような木の病院を作り、温泉資源を利用して自給自足を実現する」とスタッフにプランを伝えました。私の両親と同世代のスタッフは「齋藤理事長は若いから夢みたいなことばかり言う」と呆れていました。そんなことはお構いなしに夢を語り行動し続けました。年配の人をシルバーと呼ばずにプラチナ(強酸性の川湯温泉でも溶けない)と呼称して知恵を出してもらったり、法人内外の周囲を巻き込んでいきました。地域の方も行政の方も初めはいぶかしげに見ていましたが、プランが形になっていくにつれて、協力者の数は増えていきました。承継から5年目、柔らかな日差しと無垢材の香りに包まれた川湯の森病院が完成しました。院内では暖房設備に温泉熱やヒートポンプを活用し、太陽光パネルも設置してエネルギーの自給自足を実現しています。外では広大な土地に自家農園を作り、野菜や果物、ワイン造り、コーヒー栽培にも取り組んでいるところです。今後も「医食同源」と「自然との共存共栄」をテーマに、規模を拡大し、新たな医療モデルの構築を実現していきたいです。

私は「真実一路」という言葉を信条としています。いかなる時も物事の真実・本質を見据えるということです。どんな逆境にあっても、本質を見失わなければ道が開き、未来に展望を描くことができるはずです。人生、一寸先は闇です。昨日まで悪かったから明日もこのまま悪いとは限りませんし、昨日まで良かったから明日も良いとは限りません。両方とも根拠はないのです。大切なのは、「やればできるんだ」と信じてみて、前を向いて行動し結果で証明することです。私も、スタッフたちと共に、永続発展を目指して成長していきます。

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