謝端明
1962年生まれ、インドネシア出身。91年、コニカ(現コニカミノルタ)に入社し、生産技術の研究に従事。94年秋にAndersen Consulting(現アクセンチュア)へ転職し、経営コンサルタントに転身。以後20年間、製造業のSCM(サプライチェーン・マネジメント)関連のコンサルティングに従事。2015年秋にBoCoを創業。
https://boco.co.jp/

INTERVIEW

ものづくりに一番必要なものは、パッションです。うちでは良い製品を作るために社員たちと夜中までああでもないこうでもないと議論しますし、パートナー企業様も私たちに賛同し、同じ熱量で向き合ってくださっています。今までにない新しいものを生み出すのは難しいことですが、だからこそ面白いと思います。失敗の連続ですが、うまくいった時の喜びと興奮はひとしおです。その瞬間が、社員たちや技術に携わるすべての人のパッションにつながっています。

日本に留学し、経営工学を学ぶ

謝端明

故郷の中国で大学を卒業すると、機械設備の研究所に就職して食品メーカー向けの生産設備の研究開発を手掛けました。若かったので、ものづくりへの思い入れはそれほどなく、ただ一エンジニアとして担当の分野を必死に勉強していました。
私の妻が日本に留学していたので私も4年で会社を辞め、日本に渡ってホテルで配膳のアルバイトをしながら日本語学校に通い、大学院で経営工学を学びました。
写真が好きだったので、写真フィルムメーカーのコニカに外国人留学生の第一号として就職しました。生産技術センターに配属されて生産ラインの設計や物流センターの改善に携わったのですが、ものづくりの奥深さや楽しさに魅了されたのはこの時ですね。写真フィルムに十何層もの異なる材料をミクロン単位の薄さで均一に塗布する高度な技術、粉塵や傷一つ許されない緻密さ。毎日が驚きの連続でした。
他の会社のものづくりも見てみたくなって、先輩の勧めでコンサルティングファームに転職しました。精密機械や液晶メーカー、食品メーカーなど様々なジャンルの製造業に触れることができて、刺激が多く勉強になりました。ただ日本の製造業は保守的なところがあり、せっかく素晴らしい技術を持っているのに生産性が向上しない会社もたくさんありました。「私が経営者ならこうするのに」と、もどかしく思うことが何度もありました。そして、それなら自分の手で会社を作ってみようと思ったのです。しかし、何を製造すればいいのか分からなかった。そんな矢先、知人の伝手で骨伝導専門メーカー「ゴールデンダンス」を創業した中谷任徳氏と出会い、骨伝導の技術を初めて知りました。従来のように耳の鼓膜ではなく、骨に振動を加えて音を伝える技術で、実際に音を聞かせてもらった時の、手首まで振動が伝わってくるような衝撃は今でも覚えています。この素晴らしい技術を事業化して普及させたいと考え、会社を立ち上げてゴールデンダンスとパートナーシップを組みました。

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見えにくかったら眼鏡をかけるのと同じように

この技術は、聴力に不安のある方にとって大きな助けになると確信しました。視力が悪くなれば誰でも当然のように眼鏡をかけますが、聞こえづらくなって補聴器を使う方はわずかです。従来の補聴器は、マイクから拾った音を増幅して鼓膜を叩く仕組みなので、突発音や騒音に弱く、使い心地は快適ではありません。骨伝導の力で眼鏡のように聴力を自然に補助できれば、聞こえに不安のある方のQOL(生活の質)をもっと向上すると思いました。
また、健聴者もスマートフォンの普及でイヤホンの使用頻度と使用時間が長くなったことで、若年者の難聴リスクが社会問題になっています。鼓膜を通さない骨伝導の技術でそのリスクを軽減できれば、もっと世の中の役に立つことができます。
製品開発にあたって、一般的な補聴器がどんなものなのか分からないのでみんな必死で調べようとするのですが、私は既存製品のカタログやパンフレットを見ることを禁じました。これまでにない新しいものを作ろうとしているわけですから、固定概念を捨てて真新しいアプローチを考えていこうと社員たちに訴えました。
聴覚補助用のイヤホンは、音楽鑑賞用のイヤホンと同じデザインにしました。耳が不自由であっても特別感のない、眼鏡のように日常にあふれるデザインにしたかったのです。一人でも多くの聞こえに不安のある方が、既存の補聴器に代わって気軽に骨伝導イヤホンを使ってくださる世の中にしたいですね。聞こえの不安が解消されてコミュニケーションを取ったり音楽やラジオを楽しんだりするようになれば高齢者の認知症の発症を遅らせるなど、様々な可能性が広がります。これを実現できれば、BoCoは世界中に愛される企業になれるはずです。

若者のみなさん、ものづくりは楽しいですよ。ぜひ飛び込んでみてください。日本は製造業において偉大な国です。日本の製造業の衰退を食い止めるためには、若いみなさんの頑張りが必要です。日本にはもっとベンチャーを起こすべきです。一緒に日本の製造業を盛り上げていきましょう。頑張りましょう。

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