高橋彰
神奈川県出身。1989年、千葉大学工学部建築工学科卒。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年、高性能な住まいの相談室として住まいるサポートを起業。
https://sml-support.com/

INTERVIEW

若い頃から自分の取り組みで社会に良い影響を与えたいという思いが強く、社会とキャッチボールをしているような気持ちで仕事をしています。「こうすればもっと世の中がよくなると思いますが、どうですか」とボールを投げかけて、それに対して社会からの回答を受け止め、また投げ返す。これを常に繰り返しているような感じです。これからもその感覚は変わらないと思います。

日本の住宅性能は劣っていることを知ってほしい

高橋彰

サラリーマン時代に欧州の省エネ住宅の視察旅行に参加した時、欧州の住宅の断熱・気密性能の高さにとても驚きました。ちょうどシリアからの難民の流入が問題になっていた時期で、ドイツでは難民向けに仮設住宅が建てられていました。その仮設住宅でさえも日本ではめったにお目に掛かれないような品質の高気密・高断熱住宅でした。そのような高性能な住宅に住むことは人間の権利であるという考え方に驚くとともに、異国の難民に対しても同じような居住環境を提供するという国の姿勢に衝撃を受けました。
一方、同時期に日本では、東日本大震災の被災者が暮らす仮設住宅の断熱性能が低すぎるあまり、床から天井まで結露によるカビだらけになり、喘息を患う被災者が後を絶たないということが報じられていました。住宅性能に対する価値観が欧州とはかけ離れていることを痛感しました。
日本の住宅性能は優れていると思われがちです。実は他の先進国に大きく水をあけられている事実をほとんどの人が知りません。日本ではいまだに新築住宅でも冬に結露が生じますが、EUで同じことが起これば施工者は責任を問われます。断熱と気密性能を高めれば、結露は生じなくなります。特に窓の性能には大きな差があります。日本で最高ランクの断熱サッシでも、欧米では最低基準を満たさず違法になってしまいます。冬に室内の暖房した熱エネルギーの約6割は窓から逃げています。窓の性能が低いと、冷暖房の効率が落ち光熱費がかさみます。また結露が発生するとカビやダニの温床になりアレルギーや喘息を引き起こします。さらに室内の温度差によるヒートショックで交通事故死者数の何と6~7倍もの方々が毎年亡くなっています。住宅の性能が低いために、健康や命がおびやかされているのです。私は多くの消費者が日本の住宅性能の低さを知らないまま家づくりという一生に一回の買い物をしてしまっていることをとても残念に思い、日本の住宅のレベルを引き上げるために何ができるか考えるようになりました。

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家の性能に対する消費者ニーズを顕在化させたい

もともと住宅事業者に情報を発信する仕事をしていたのですが、事業者側に住宅性能の重要性を発信しても、消費者ニーズがなければ日本の住宅のレベルは変わらないことを痛感しました。まずは、消費者に向けて発信することで、消費者が「こんな家に住みたい」という意識をしっかり持ち、ニーズを顕在化させていくことが第一歩だと考え、起業に踏み切りました。
高気密・高断熱の住宅が良いと思っても、どこに頼めばいいか分からない方がほとんどです。そこで私たちは高気密・高断熱住宅に関する情報を発信しながら、信頼に値する高性能住宅を手掛ける工務店・ハウスメーカーを厳選し、家づくりを検討している方とマッチングするサービスを立ち上げました。
日本の新築住宅全体の市場は、少子化や人口減少にともなって右肩下がりが続くと予想されています。しかし、高気密・高断熱住宅の価値に気づき始めている消費者は確実に増えてきていると感じます。中には、大手ハウスメーカーで一度契約したものの、情報収集を重ねるにつれて高気密・高断熱の必要性に気づき、契約を破棄して当社に相談に来てくださる方もいらっしゃいます。「こんなサービスがあって助かった」とお客様に喜んでいただけることが何よりもうれしいですね。日本の住宅の半数以上が本当の意味での高気密・高断熱の仕様になることを目標に、これからも情報発信、啓蒙を続けていきたいと思います。

今の社会は、私たちの若い頃のような分かりやすい人生のロールモデルがない上に、60歳以降も働き続けることが前提の世の中になり、一つの会社で定年まで勤め上げる時代ではなくなりました。若い方々にとって、人生の選択は難しくなっているのではないでしょうか。しかし、一生ひとつの会社にいることが前提ではなくなったので、逆に軌道修正が容易になったと思います。若者のみなさんには思い切ったチャレンジをしてほしいと思います。自分が社会に対してどのように貢献できるのかという観点から、人生を選択してみてください。

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