田中美光
1957年東京都江戸川区出身。80年、中央大学商学部会計学科卒業後、大手会計事務所勤務を経て95年に税理士登録。同年、田中会計事務所を開業。
https://田中会計事務所.com/

INTERVIEW

私が独立した年に、ちょうど定年退職を迎えた父は「手伝えることがあれば協力する。お給料はいらないから、いつでも声をかけてほしい」と言ってくれました。そして還暦を過ぎてパソコンを一から学び、86歳まで黙々と事務作業を手伝ってくれたのです。父が事務所に姿を現すと、スタッフみんなが「お父さん」と慕っていました。見返りを求めずに尽くすことの尊さを、父は教えてくれました。

他の税理士がやらないことに取り組む

田中美光

子供のころから数字が好きで、そろばんを習っていました。サラリーマンの父には「会社勤めでは、いくら頑張っても評価してくれる人は少ない。自分で商売をしなさい」と言われて育ちました。他にも「約束の時間に遅れるな。遅れた時点で不利になる」「生きたお金を使いなさい」というようなことをよく忠告されていました。大学で会計学を学び卒業すると、父のアドバイスの通りサラリーマンにはならず、税理士の資格を取りました。初めての顧問先は、中学時代の友人の実家です。彼の家は地域でも指折りの資産家で、いくつもの不動産を所有していました。「家賃を払ってくれない住人がいる」とか「大規模修繕をどうするか」といった不動産所有者ならではの様々な悩みがあることを知り、解決に向けて一緒に悩んだものです。彼とは今でもお付き合いがあります。

税理士の多くは、年に一度決算料を支払うだけの不動産所有者のお客様よりも、毎月顧問料を払ってくれる中小企業のお客様を歓迎します。しかし私は、初めての顧問先と一緒に不動産にまつわる悩みを解決してきたことに思い入れがあったので、不動産や相続に特化した税理士として活動してきました。特に、全国でも対応している事務所が少なかった賃貸住宅の消費税還付制度に精通していたので、県外にもお客様が増えていきました。他の税理士がやりたがらないことに取り組むことで、独自色を出すことができたのだと思います。

常日頃からアンテナを張り情報収集を欠かさず、「この制度はあのお客様に使えないだろうか」と考えています。お客様から先に「先生、こんな制度があるのを知ってました?」と言われるようではだめですね。こちらから「この制度を使うといいかもしれません」といち早く提案すれば、お客様は「自分のことを見てくれている」という安心感を持ってくださるはずです。常に気にかけていることが伝われば、お客様の方から離れていくことはありません。他に安い事務所を見つけたからと離れていってしまうなら、それはこちらのサービスが値段に見合っていないということかもしれません。

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大手事務所にはないお客様とのつながりを大切に

相続のご相談も多くいただきますが、まずはもめないこと、そしてできるだけ税金が少なく済み、相続した方が豊かに暮らせることに重点を置いてアドバイスしています。一度相続のご相談を受けると、相続した不動産の売買や、その次の代の相続のご相談など、1世代限りではなく次の世代までお付き合いが続くことがあります。このようなお客様との関係性を大切にしたいですね。お付き合いが長くなり、お客様の家族全員で集まる食事会の席にご招待していただくような時は本当に税理士冥利に尽きます。大手の事務所では担当の税理士が2年ぐらいで代わってしまうので、気心の知れた関係を築くことはなかなか難しいのではないでしょうか。うちはスタッフが30人弱で決して大きい事務所ではありませんが、私の目がすべての案件に行き届くには、これぐらいの規模がちょうどいいと思っています。私の一人娘は医学の道に進んだので後継ぎがいませんが、この事務所で育った若い税理士がいつか私の意志を引き継いでくれることを期待しています。

税理士は一匹狼的な職業ですが、私の周りにいるお客様もスタッフも良い方ばかりで、周囲の人に恵まれているとつくづく感じます。父がしてきたように、見返りを求めずに人に親切にすることを心がけたからかもしれません。若いころ、相談できる先輩や年長者が近くにいると心強く感じていました。今はお客様もスタッフも私より年下の方ばかりですから、私が先頭を走ってリードしているつもりです。これからもぶれることなく、「私の後をついてくれば、きっとうまくいくよ」という力強いオーラを出しながら、お客様の繁栄のお手伝いに注力していきたいと思います。

人生はいつも選択の連続です。岐路に立った時には正解など分かりませんが、熟慮し、先人の歩んだ道を参考にし、情報収集を欠かさない。今までその3つを心がけてきましたし、それで大きく間違った方向に行ったことはありません。この先も、その繰り返しだと思います。

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