遠山正道
1962年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、三菱商事株式会社に入社し、建設部や情報産業部門に所属。 97年、日本ケンタッキーフライドチキンに出向。1999年、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」開店。翌年、三菱商事初の社内ベンチャー企業として株式会社スマイルズを設立。ネクタイブランド「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」の企画・運営。
http://www.smiles.co.jp/

INTERVIEW

ビジネスや経済には多くのルールやしきたりがあるので、その枠の中で物事を考える癖がついてしまうものです。本来、ビジネスも経済も人のためにあるもの。私たちは経済のために生きているわけじゃないですよね。もっと一人ひとりが自分の考えや思いを信じて、それを軸にやりたいことをやっていくほうが自然だと思います。 私たちの場合、自分ならこうしたいという思いを形にしたのが今の事業ですが、特殊なことをしているわけではなく、ただ楽しいことや大事にしたいことを実践してるだけなんです。世界一になりたいとか、100年続けるとか大それたことは考えていません。背伸びしすぎない生身のサイズ感が私や社員にとっては心地いい。でも、人と同じじゃ嫌だし自分らしさは大事にしたいと思っています。「おしゃれだね」とか言われるより、「遠山らしいね」と言われるほうが私はうれしいですね。

商社勤めの傍ら、絵の個展を開く

遠山正道

私の家族はみんなおっとりしていて、兄弟げんかをした記憶はないし、母もガミガミ怒ることはありませんでした。 そんな環境で育ったからか、今もネガティブなことには目が向かないんです。もちろん辛いことはたくさんあったけど、すぐ忘れてしまうんですよね。今のスマイルズの仲間も含めて、私の周りにも似たような人が集まっていると思います。ガツガツしないというか。

商社に就職して10年経った頃、ふと思い立って絵の個展を開いたことが一つの転機になりました。仕事は充実していましたが、このまま商社マンとして定年まで組織の中で過ごすことに漠然とした不安があって、自分の力で何かやってみたいと思ったんですよね。仕事も個展も中途半端にやるわけにはいかないので実際に動き始めるとかなり大変でしたが、仲間に協力してもらい個展の評判は上々でした。人に褒められたことがうれしかったし、やり遂げたことが自信にもなりました。自分のために半ば衝動的に始めたことだけど、気が付くといろんな人を巻き込んでいて自分だけの事ではなくなっている。何か事業をやろうと思ったのはこの時ですね。

当時、情報産業グループという部署にいたのですが、もっと手触り感のある食や小売にかかわってみたくて、会社に頼み込んで外食産業をしている関連会社に出向させてもらいました。そこで勉強しながら頭の中でいろんな構想を練っていたところ、ふと、女性がスープを飲んでほっとしている光景が思い浮かんだんです。これはすごく大事なものかもしれないと感じましたね。

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スープ屋だけどテーマは「共感」

そこから3カ月かけて「スープのある一日」というストーリー仕立ての企画書を描き上げました。単にスープを売りさばきたいわけではありません。私たちが良いと思うものを提案して、お客様に「いいね」とか「これはちょっと」とかいろんな意見をもらいながら「共感」の関係性を築いていきたいと考えました。スープはそのための軸です。思いついたのがスープじゃなくてラーメンだったら全然違う会社になっていただろうし、もっと雄々しい社名になっていたかもしれませんよね。

出向しながらSoup Stock Tokyoを立ち上げスマイルズの設立から8年で独立して、今16年目になります。スープを含め全部で4つの事業をやっていて、どれも決して目新しいジャンルではありませんが「スマイルズがやるとこうなりました」という私たちなりの価値を打ち出すことができていると思います。正直、どの事業も軌道に乗るまでは本当に大変でしたが、私たちの思いやセンスをねじ曲げることなくここまで来ることができたので上出来です。

今後は、社員一人ひとりのアイディアや行動力を大事にしていきたいと思っています。小粒だけどちゃんとひとつひとつに価値がある。そういうものを増やしていきたいですね。 「言われてやるのは作業、自分で見つけてやるのは仕事」という事をよく言っています。自分の力を生かす場があれば楽しいし、「あいつじゃないと」と思ってもらえたらうれしいですよね。

私は今54歳ですが、人生ってとても短くもあり、長くもあると思うんです。思ったことをやらずに漫然と過ごせば人生はあっという間に終わってしまうでしょう。でも逆に、やろうと思えばまだまだ何でもできるし、とても大きな可能性もあるんですよね。結局は自分の意志次第です。若い皆さんには自分のしたいことにおおいにチャレンジしてほしいと思います。

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