提供:NEC

バルセロナ存在感発揮
NECがささえる
世界スマートシティ

NECは2022年11月、スペイン・バルセロナ市で開かれた世界最大級のスマートシティイベント「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス 2022」の日本パビリオンの一角にブースを出展。セミナーでも独自のスマートシティ構想や国内外での実装例をアピールし、高い反響を得た。NECはここで何を語ったのか。エキスポ参加リポートを紹介する。

未来志向の都市実現へ
世界中のプレーヤーが集結

 2050年には世界の人口は100億人に達し、そのうち70%が都市部に住むと予想される。人と環境に焦点を当てた未来志向の都市を創造するためにデジタル化は不可欠で、実現に向けた様々な協業やイノベーション(技術革新)が始まっている。

 11年からスペイン・バルセロナ市で開催されている「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス(世界会議)」は世界の都市・企業・研究機関だけでなく、社会イノベーターや官民コンソーシアムも参加する一大イベント。会場では先進的なエネルギー、インフラ、情報通信技術(ICT)、環境関連のスマートシティ技術やサービスが紹介され、未来都市の在り方が議論される。

スマートシティエキスポ世界会議

 12回目にあたる22年11月の会議には134カ国・地域、853の出展、400人以上のスピーカーが参加。オンラインも含めて5万人近くの来場者を集めた。日本は今回、初めて地方自治体と企業が「日本パビリオン」を共同出展。国内外でスマートシティ実装の実績を持つNECはブース出展に加えてセミナーにも登壇し、「NEC都市OS」や内外での事例を紹介した。

NECブース

 現在、都市問題では人々のWell-being(健康な暮らし)、レジリエント(強じん)な防災対策、観光体験の向上、地球環境との共存などで様々なイノベーションが起きている。それらは個別最適化されているものの、ベースになる都市間のデータ連携は十分とはいえない。「NEC都市OS」は、分野や地域の垣根を越えてデータを連携させることにより街と人の情報をつなげ、複雑な地域課題の解決や新たなサービスが実現しようというコンセプトであり、各都市が共有できるデータプラットフォームの提案でもある。

 このプラットフォーム上に生体認証やID管理など様々なマイクロサービスを搭載して共通に使えるようにする。そこではNECが開発したサービスだけでなく、オープンソースも活用される。オープンソースFIWAREの国内コミュニティー「iHub Base」や「スマートシティ社会実装コンソーシアム」など企業の枠を超えた座組みを活用して、オープンイノベーションが進む。オープンかつスタンダードなテクノロジーを使う限り、ある都市の実績を他の都市にも横展開できる。このポータビリティ(移植性)も「NEC都市OS」の特徴だ。

Well-beingに焦点
次の社会課題、日本が先取り

 もちろん国や都市によってスマートシティの課題や優先順位は異なる。3日間の会期中にたびたび登壇してスピーチを行った、NECの菊池晃治クロスインダストリーユニット・シニアディレクターはこの点を「2プラス1」という言葉で整理する。

菊池晃治 氏

NEC
クロスインダストリーユニット・シニアディレクター
菊池晃治

 欧州や北米などは環境配慮型のスマートシティに注力する一方、中東や中南米ではテクノロジーを活用した都市インフラの構築が最優先の課題だ。この2つに加え、今回鮮明になったのは、日本・北欧・ベルギーなど人のWell-beingにフォーカスしたスマートシティのコンセプトだ。

 「先進技術をインフラや環境改善に役立てるだけでなく、個人と社会が調和した街や、人に寄り添い心躍る暮らしなど、スマートシティは未来の都市生活者のより高品位な生活の質を支えるものであるべきだ。実際、目下の課題をインフラ整備だと考える国々も会議で会って話してみると、『日本のスマートシティはWell-beingという次の課題を先取りしている。その成果はいずれ自分の国でも参考にしたい』と語る人が多かった。日本を含むプラス1のグループは、スマートシティの新たな課題を先取りして示すことができた」と菊池氏は強調する。

 NECはこうしたコンセプトづくりから、具体的なソリューションの開発、データセキュリティーの保証、そして実際の都市へのハード・ソフト両面でのインテグレーションまでトータルかつ垂直的に関わり、それをグローバルに展開する数少ない企業の一つだ。

 グローバル展開の例として菊池氏が講演で紹介したのは、ポルトガルの首都リスボン市の例だ。様々なデータを統合管理する「リスボン・インテリジェント・マネジメント・プラットフォーム」は、AI(人工知能)やIoT(モノのネット化)技術により街中のデータを収集して分析。市民や観光客によりよいサービスを提供するとともに、公共の安全やモビリティー、省エネルギー、廃棄物の管理などを高いレベルで実現している。

 また米バージニア工科大学交通研究所とともに進める、AIベースの映像解析を活用した交差点における安全・安心の向上に向けた共同実証の成果も紹介。交差点内に歩行者や動物などが飛び出してくる様子を路面に設置したカメラが感知。次世代通信規格「5G 」ネットワークを通して、わずか0.5秒で車両に伝えるというものだ。

 「NECが世界のスマートシティ構想に深く関わっていることをあらためて知った来場者も多かったのでは。今回の会議では個別のテクノロジーを持っているというだけでなく、そのテクノロジーを生かして実際にどれだけ二酸化炭素(CO2を削減できたかなど、結果を示せる企業に注目が集まった」と菊池氏は語る。

幸田拓也 氏

NEC
スマートシティ事業推進部門
民間共創統括部
ディレクター
幸田拓也

 「官民協働のスキームにおいて企業が果たす役割への関心も高かった」と話すのは、主に日本パビリオン内で海外参加者の対応に当たったNEC スマートシティ事業推進部門のディレクター、幸田拓也氏だ。「行政のオープンデータ活用に初期段階から関わり、官民協同でイノベーション創出や規制緩和に挑戦し、今ではデジタル田園都市国家構想にも深くコミットしているNECは、スマートシティ推進における企業の在り方として今回の出展は大いに参考になったのではないか」と幸田氏は考える。

国内自治体の事例に世界が注目
社会実装に共通の課題

 日本パビリオンには日本のスマートシティの進捗状況に関心を持つ人々が大勢押し寄せた。そこで紹介されたのはNECも参画する、日本全国の自治体に広がる産学民官連携の取り組み事例だ。例えば高松市では河川や海岸部にセンサーを設置し、水位・潮位の変化をリアルタイムに取得しマップに表示。集中豪雨などが発生した際の地域の危険を見える化することで住民の危機意識の向上や注意喚起につなげている。これらの取り組みは防災だけでなく、GPSロガーを用いた観光客の動態調査やウエアラブル端末による高齢者の見守り、交通、農業、健康さらにIoT人材育成などの幅広い分野に広がる。

日本パビリオン

 センサーネットワークを用いて収集した様々なデータを分析・活用することで、地域の新たな価値創出を進める富山市の事例も紹介された。児童にGPSセンサーを持たせて登下校時の位置情報を収集。そのデータを分析し、登校時・下校時の移動経路の違いや学年別の移動経路の違いなど、児童の登下校路の実態を「見える化」した例だ。

 「ブースの来場者からは富山市のセンサーネットワークに使われている無線通信の規格や、そのコストは誰が負担しているのかなど、突っ込んだ質問もあった。ただ日本のように通学バスや親の付き添いなしに児童だけで登下校させる国は珍しいようで、『日本ではそれが当たり前なのか』と驚く人もいて、国情の違いを感じた」という。

 さらには「スマートシティは自治体主導で機器を導入すればすべてうまくいくというものではない。富山市でも学校やPTAなど地域の人々との丁寧な協議があり、実際のデータを示しながら児童の安全な登下校についての議論を深めた。課題やソリューションの違いの程度はあれ、地域に密着した推進体制づくりなど、社会実装のプロセスは世界共通ということを認識するよい機会になった」と話す。

NECブース

デジタルツイン、AIを武器に
グローバル戦略を展開

 新たな技術が社会実装されるまでには市民の積極的な行政への参加や、市民によるデータ主権原則を踏まえた対等な立場での発言力の確保など、社会自体のイノベーションも求められる。その上で、国内での実績の海外への水平展開や、逆に海外で実証された先進技術が国内に導入されるという動きが活発化するはずだ。グローバルにスマートシティ事業を展開するNECは、そうした内外技術や事例がクロスするハブの役割を期待されている。

 「当社はインド国内で多数の交差点に高解像度カメラを設置し、映像をAIで分析することでナンバープレートの自動認識や信号違反の検知を行い、違反者を発見するような交通監視システムを提供している。今後も日本、欧米、そしてアジアのスマートシティ技術とその経験を共通のプラットフォームで融合していきたい。そこでカギを握る技術は未来社会を予兆するデジタルツインであり、人と協業するAIの技術。そこにノウハウを持つのは当社の強みだ。グローバルでの戦略・デリバリープロセスを実行しながら、その上で地域の文化やコミュニティーの活性化にも貢献していきたい」と菊池氏は力を込める。

 世界各地でのスマートシティ実現に向け重要な役割を果たすNEC。その存在感が際立つ展示会だったようだ。

菊池晃治 氏 幸田拓也 氏
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