NEC 深澤克之氏、NEC 久留みゆき氏、NEC 野口修一氏

提供:NEC

バルセロナで独自のスマートシティ構想を展開 NECが描く「ひと・まち・くらしの豊かな未来」

NECは2023年11月、スペイン・バルセロナ市で開かれた世界最大級のスマートシティイベント「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス 2023」の日本パビリオンの一角にブースを出展。パネルディスカッションやセミナーでも独自のスマートシティ構想や国内外での実装例をアピールし、大きな反響を得た。NECが描く「ひと・まち・くらしの豊かな未来」はバルセロナでどう表現されたのだろうか。

NECが世界最大級の
スマートシティイベントに出展

2023年11月7日~9日、スペイン・バルセロナで「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス 2023」(以下、エキスポ)が開催された。2011年から毎年開催される、世界最大級のスマートシティイベント。スマートシティやグリーンシティを推進する世界の都市リーダーや技術・ソリューションを提供する企業、団体などが多数集結し、ブース出展や国際会議が行われた。

このエキスポに関わった日本企業の中では、昨年に続いて参加したNECの存在感が目立った。例えば、グローバルパートナープログラムの一環として開催されたパネルディスカッションには、NEC コーポレートSVP兼海外スマートシティ統括部 統括部長 アーロック・クマル氏、NECフェロー・望月康則氏が登壇。クマル氏はAI、スマートインフラなどの技術革新が都市にもたらす変革の可能性を示唆しつつ、世界の都市はデジタルの未来に対応できているかと問題提起した。望月氏は「新興テクノロジーの導入からインフラの再構築、グローバルなコラボレーションの促進まで、各都市は気候変動など未曽有の課題に先手を打つための戦略も模索しつづけている」として、革新的で機智に富むガバナンスの必要性を訴えた。

NECフェロー・望月康則氏

一方、ブース出展では会場内に日本パビリオンが設けられた。官民学共創プラットフォームのスマートシティ・インスティテュートが主催するもので、総合テーマは「市民のWell-Being向上を目標とするスマートシティ」だ。隣接する東京都ブースも含めると、昨年比1.5倍の408m²というスペースで、エキスポに出展する公共セクターのグループ中でも最大級ブースとなった。

NECフェロー・望月康則氏
NECブース

「グリーンシティ」が最大のキーワード
NECの海外スマートシティ構築事例に関心高まる

久留 みゆき 氏

NEC
海外スマートシティ統括部 主任
久留 みゆき

日本パビリオンでは内閣府をはじめ、自治体、研究機関、民間企業から25社が出展。昨年に続いてNECも単独でブースを構えた。NECはグループ企業・海外法人も含めて社内で出展スタッフを募り、50人弱の社員総出で、スマートシティに向けた同社のビジョン、国内外の事例紹介に努めた。スタッフの数は昨年の倍。そこからも、グローバル視点のスマートシティ事業推進に向けたNECの意気込みがうかがえる。

NECブースには内外の多数の関係者が訪れた。NECの海外スマートシティ事例紹介を担当した久留みゆき氏はこう語る。

「例えばポルトガルのリスボンではAI(人工知能)やIoT技術により街中のデータを収集・分析し市民や観光客によりよいサービスを提供しています。インドの都市シルバサでは統合コマンドコントロールセンターの導入により市民による公共サービスへのアクセスを便利にするとともに安心安全な都市運用をサポートしています。こうした事例を紹介すると、NECはそこまでやっているのかと驚かれる人が多かったです。私の担当ブースには大陸を問わず28カ国の人々が訪れ、スマートシティへのグローバルな関心や市場性の広がりを実感しました。海外のスタートアップ企業が当社との関係を強めたいと話を持ちかけてくる例もありました」

NECブース
深澤 克之 氏

NEC
スマートシティ事業部門 国内スマートシティ営業統括部
第二国内ソリューショングループ グループ長
深澤 克之

「欧州ではこれまで以上に温暖化対策に重きを置くようになりました。今年もCO2削減、グリーンシティ、ブルーカーボンなどのキーワードが飛び交いましたが、その流れは前回よりも強まっています」とエキスポ全体の印象を語るのは、展示全体の責任者である野口修一氏だ。

国内スマートシティ事業の営業責任者である深澤克之氏は、「先のCOP28では当社の社長である森田が豪雨や猛暑といった異常気象からの被害を軽減する適応策への投資の重要性を訴えましたが、スマートシティ構築に向けてもその観点が重要であるとあらためて認識しました。また、街をデジタルで構築して未来を予測するデジタルツインの技術はNECの強みの1つですが、その流れが海外企業にも波及していることも実感しました。さらに、国や行政や企業だけでなく、市民もまた気候変動などへの耐性を持つスマートシティを自分ごととして考えるようになっています。市民参加型のスマートシティ構築。その気運が高まっていることを今回のエキスポで目の当たりにしました」と語る。

スマートシティ実現のためには
デジタルツイン、生成AI、Beyond 5G
などの技術が重要になる

「都市間が有機的につながり、ひと・まち・くらしの豊かな未来を創出」というのがNECのスマートシティに関するビジョンだ。多様なアイデンティティが調和する地域・文化の形成、市民・地域主導の自律型のまちづくり、地域連携による新たな経済圏の創出で産業と都市が発展する未来を描く。

こうした未来を創出するために、NECができることは何か。1つはこれまでの都市経営に関わった経験を通して培ったコンサルティング能力だ。スマートシティ社会実装コンソーシアムなど官民学パートナーシップを推進した豊富な実績がNECにはある。

もう1つは、将来のスマートシティに向けた標準化技術の導入、推進だろう。NECは分野や地域の垣根を越えてデータを連携させることにより街と人の情報をつなげ、複雑な地域課題の解決や新たなサービスを実現するためのものとして「NEC都市OS」というプラットフォームを提供している。

野口 修一 氏

NEC
スマートシティ事業部門 国内スマートシティ営業統括部
事業戦略グループ シニアプロフェッショナル
野口 修一

そして、NECはこのプラットフォーム上に生体認証やID管理など様々なマイクロサービスを搭載して共通に使えるようにすることを目指している。そこではNECが開発したサービスだけでなく、オープンソースも活用される。さらにNECはオープンソースFIWAREの国内コミュニティー「iHub Base」の運営を担うだけでなく、先のスマートシティ社会実装コンソーシアムなど企業の枠を超えた座組みを活用して、オープンイノベーションを進めている。日欧のデータ連携基盤である「GAIA-X」や次世代ネットワーク基盤「3GPP」などの標準化技術に関しても、NECは先駆けて取り組んでいる企業の1つだ。

このほかにも、将来のスマートシティ実現には、デジタルツイン、生成AI、Beyond 5Gなどの技術が必須とされるが、これらの要素技術についても、NECの技術は世界レベルに達している。

「人々の予想を超え複雑化する課題を解決するためには、未来を予見し未来をつくるという取り組みが欠かせません。NECは国内・海外でさまざまなスマートシティ構築の経験を積み、必要な技術を洗練させながら今日に至っている。今回のエキスポでもその全体像を発信できたと思います」

野口氏はエキスポにおけるNECのプレゼンス(存在感)をそのように総括する。

エキスポ参加でスマートシティへの
視座を高める国内自治体

日本パビリオンにブース出展した自治体が10を超えるなど、日本の自治体が熱心にエキスポに取り組み、日本からの発信に厚みが増したことも今回のエキスポの収穫の1つだ。つくば市長はグローバルコングレスセッションに、名護市長はジャパンパビリオンミニセミナーに登壇。なかでも内閣府のスーパーシティ特区に指定されているつくば市の五十嵐立青市長は全編英語でスピーチ。単にスマートシティの理念を語るのではなく、自治体が抱える具体的な課題を首長自らがリーダーシップを発揮しながら解決していることを訴え、国籍を問わず聴衆の共感を得ていた。

その他、神戸市、東京都、千葉市、大阪府、大阪市、横浜市、茨城県境町、京都市などもブースでスマートシティの取り組みを紹介した。また、東京都は単独展示で「SusHi Tech Tokyo」を今年も開催することをアピール。イノベーション創出で世界共通の都市課題を解決し、未来の都市モデルを発信する東京の立ち位置を示した。

以前から官民連携でスマートシティに取り組む浜松市が、日本の自治体としては初めて、FIWARE foundationの構成メンバーになり、エキスポ会場で調印セレモニーを開催したことも、国内自治体の関心の深さを物語るトピックだ。日本の自治体が国際標準を意識し、積極的に世界と交流を始めた事例としても注目される。

国内自治体のスマートシティへの関心は確実に高まっており、その一環としてエキスポへの参加があったことはたしかだろう。エキスポで海外先進事例を学び自らの考え方を整理することで、各自治体のスマートシティへの視座は一段と高くなる。NECがブースで紹介した海外事例にも国内自治体関係者が熱い視線を寄せていた。ブースを訪れた自治体リーダーへの説明役を担当した久留氏はこう語る。

「日本の自治体がなぜエキスポに参加するかと言えば、デモを見て、触って、人と話すよい機会だからです。海外事例のどんなユースケースが今後の自分たちの自治体の取り組みに生かせるか、横展開できるかを真剣に探っていたようです。エキスポ自体がスマートシティ実現に向けたインターナショナルなプラットフォームであり、ショーケースであることを自治体リーダーの反応を見て実感しました」

エキスポでは付随イベントとして、バルセロナ市内のスマートシティ化の現状を視察するツアーも開催された。例えば、碁盤の目状に区分けされた区画の一部をブロックして、その内部の道路は地元住民の自動車、自転車、歩行者のみが通行できるようにした「スーパーブロック」。市民を排除するのではなく、むしろ自動車に奪われていた道路を市民に開放して、コミュニティーを再構築する試みだ。今後のスマートシティ化にあたってのヒントの1つではある。

NECブース

日本の防災ソリューションに寄せられる期待

エキスポは日本からの参加者が海外事例を学ぶ場である一方、海外の参加者が日本の独自のスマートシティ事例から刺激を受ける場でもある。NECも国内自治体との取り組みについて発信を深め、海外の自治体関係者から大きな関心を集めた。なかでも、近年の気候変動と自然災害の多発を受けて、災害先進国・日本の取り組みや街ぐるみの防災ソリューションには高い関心が寄せられた。

「例えば、中東やアジアでこれまで経験したことのないレベルの洪水が起こっているということもあり、災害大国日本において、防災観点でのソリューションがどのようにスマートシティに組み込まれているかを知りたいという質問が多かったです」と久留氏は言う。

自然災害による被害を最小限に抑えるためには、自助・共助・公助の必要性が以前から指摘されているが、共助が発揮される場としてスマートシティの重要性を指摘するのは、深澤氏だ。

「共助の一例として避難行動支援がありますが、NECはそれを可視化する取り組みを進めています。自治体が持つ過去の災害事例や災害弱者の居住マップを取り込み、自治会、民生委員、消防団など地域の人的資源も巻き込んで共に助け合う仕組みづくりです。また日本では災害を想定して、近隣以外の自治体との間に復旧支援協定を結ぶ動きも強まっています。この自治体間共助という考え方は、今後世界のスマートシティ構築に欠かせないものになります。さらに、自然災害を軽減するための適応策への投資スキームを提示することによって、企業はICT(情報通信技術)以外の領域でも自治体を支援し、それに伴走することもできます。このように日本の自治体と企業が協働で目指す防災の取り組みは、これから世界が参照すべきモデルであり、海外へも輸出できるものです。今回参加できなかった自治体も次回のエキスポにはぜひご参加いただき、日本における防災スマートシティの試みを紹介してほしいと思います」と深澤氏は呼びかける。

国内外でスマートシティ事業に関わるNECは、国内自治体にとっては海外事例を紹介してくれる窓口の1つであり、海外自治体にとっては日本のレジリエンスなスマートシティ構築の事例を知る情報源になる。その間に立ってスマートシティ実現のための人と経験・技術をつなぐハブになることが、NECには求められている。

深澤克之氏、久留みゆき氏、野口修一氏
バルセロナ
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