新NISAの成長投資枠では、個別株の長期投資も視野に入る。安定運用の視点から、未来に向けて取り組む企業からのメッセージと、株式投資に欠かせない「応援」の意識を紹介する。
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出光興産(東証プライム 証券コード:5019)
企業価値・株式価値の向上へ
創業112年の歴史を持つエネルギーと素材の出光興産は、2023年11月に企業価値・株式価値の向上に向けて、2025年度ROE目標の見直し(8%から10%以上へ)、および株主還元の充実(増配、機動的な自己株式取得の実施)、株式分割の実施を決定、公表しました。株主還元方針は、現中期経営計画期間(2023~25年)を対象に、3カ年累計の在庫影響を除く当期純利益に対し、配当と自己株式取得を合わせた総還元性向50%以上を掲げています。今後、株主様専用サイト「いでみつコネクト」を起点に、事業所見学会の実施ほか、3月末時点500株以上保有の株主様に対しては、「題名のない音楽会」収録ご招待、「キッザニア」入場券贈呈など、抽選優待制度をスタートします。
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日本酸素ホールディングス(東証プライム 証券コード:4091)
レジリエントな事業モデルで堅実に成長
日本酸素ホールディングスは、32の国と地域をカバーする産業用ガスサプライヤーです。供給先は自動車、化学、医療など。冷凍食品や炭酸飲料などの食品製造に利用するガスも手がけます。また、魔法びんをはじめとするサーモスブランド製品もグローバルに提供しています。幅広い地域、業種への事業展開により、局所的な景気動向に左右されない経営を実現してきました。足元では、業績は右肩上がりに伸長。増配も継続中です。ガスの用途は技術が進歩する中で多様化しており、半導体関連製品にも欠かせません。DXやGXに伴う需要増など、世界経済の成長や環境の変化に応じて拡大していくガス市場とともに、堅実な成長を維持します。
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高島(東証プライム 証券コード:8007)
老舗の実績生かしカーボンニュートラル社会へ
高島は、創業100年を超える商社です。建材、太陽光発電、産業用資材、電子部品など多角的に扱います。仕入販売だけでなく、加工、物流、施工といったソリューションも提供する「機能商社」型ビジネスが特徴です。積極的なM&Aで事業領域を広げるなど、成長投資にも力を入れています。また、連結配当性向40%以上を目標とするなど株主還元も重視。より多くの方に投資してもらえるよう、2023年10月には株式分割を実施しました。
省エネ化・省力化の分野では、断熱材60年、太陽光パネル30年の取り扱い実績があります。2026年に向けた中期経営計画「サステナV(バリュー)」のもと、今後もカーボンニュートラル社会へ適応した持続的成長を目指します。
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アステリア(東証プライム 証券コード:3853)
業務のデジタル化やDXニーズに貢献
アステリアは、企業システムなどを「つなぐ」製品やサービスを提供するソフトウェアメーカーです。粗利率は常に8割前後で推移する収益性が高いビジネスモデルを確立。主力製品ASTERIA Warpはプログラミング技術不要の「ノーコード」をコンセプトにしたデータ連携ソフトで、累計1万社以上に導入され、モバイルアプリ作成ツールPlatioも昨今のIT人材不足はもとより、デジタル行財政改革、物流・建設の2024年問題などの社会課題にも貢献し受注を拡大しています。2010年3月期から安定配当を続け、今年から500株以上の継続保有株主様(保有期間1年以上)対象の中長期保有株主優待制度を開始。株主還元施策の充実を図っています。
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平和不動産(東証プライム 証券コード:8803)
WEBカタログギフトなどの株主還元も
平和不動産は、1947年に証券取引所ビルのオーナー企業として設立され、日本の金融市場のインフラを支える重責を担いながら、「証券・金融・投資の街」として知られる日本橋兜町・茅場町に軸足を置く会社として、地域の発展に寄与してきました。株主還元にも力を入れており、2024年3月期の1株当たり配当金は年間116円、7期連続の増配を予想しています。株主優待は3000円相当のWEBカタログギフトを進呈。長期保有株主様へは5000円相当となる優遇制度があります。また、個性あふれるにぎわいのある街へと変化している日本橋兜町・茅場町の街歩きを通して、平和不動産の街づくりを体感いただける個人株主様向けイベントも好評です。
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三菱食品(東証スタンダード 証券コード:7451)
「次世代食品流通業への進化」を目指す
当社は、連結売上高約2兆円の総合食品商社です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店に並ぶ加工食品、低温食品、酒類、菓子などを幅広く取扱い、多様化する生活者のニーズに応えた商品を調達・提供しています。
皆さまの食生活を支える必要不可欠な社会インフラとして、食のサプライチェーンの最適化・効率化に取り組むとともに日本の食文化の維持・発展に貢献してまいります。オリジナル商品の開発にも力を入れておりチューイングキャンデーの「かむかむレモン」や健康志向の「からだシフト」などを展開しています。
今期は3期連続の過去最高益更新を予定しており、株主還元強化の方針により配当も3期連続の増配予定です。
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ブロードエンタープライズ(東証グロース 証券コード:4415)
高成長を続ける事業と挑戦でプライム市場を目指す
ブロードエンタープライズは不動産賃貸市場をターゲットに事業展開し、社会課題である空室問題の解決を図るため、物件やお部屋のバリューアップに貢献しています。主事業であるマンション向け高速インターネット「B-CUBIC」は全国18万戸以上にサービスを提供しています。また、全国860社以上の管理会社様、50社以上の販売代理店との提携基盤を活かして売上規模を拡大し続けており、2023年より宅内IoTリノベーション「BRO-ROOM」をスタートさせ、新たな価値創造の取り組みにも注力しています。株主還元として株主優待制度を取り入れ、すべての株主様に所有株式数に応じてオリジナルQUOカードを進呈しています。
企業とつくる未来 成長投資枠通じて
「企業を応援して、よりよい未来を」と
FPの岩永 慶子氏が成長投資枠の活用に期待を寄せた。
ノースアイランド 専務取締役CFP®
岩永 慶子氏
これからの株式投資では「未来に投じる」意識を持ってほしい。例えば、10年先のよりよい未来を想像し、実現に必要なサービスや仕組みに関する企業から投資先を選ぶ。企業が開示する長期ビジョンや、保有する人材や技術の生かし方に共感できるか確かめるのもいい。企業と投資家の見据える先が重なれば、株式投資は資産形成の役割だけでなく、未来をつくる価値を持つ。新たな視点が加わることで、普段は関わりが少ない企業の魅力にも気づくはずだ。
企業への応援は、株価の上昇や配当金としてだけでなく、様々な形で投資家に還元される。新サービスや技術の提供は暮らしの質の向上に、事業の拡大や企業の成長は賃金上昇にも波及するだろう。私たちは株式投資を通じて、よりよい社会を目指す流れに参加している。
未来に向けた長期の株式投資と、新NISAの成長投資枠は相性がいいといえる。非課税期間の制限がないことに加え、年間の投資上限額が決まっているため、短期売買よりもじっくりと腰を据えた運用が選択肢となりやすい。なお、長期投資では配当金を受け取る機会も増えるが、非課税とするには株式数比例配分方式を選ぶ必要があるので注意しよう。
国内の株式市況を見ると、個人投資家全体のうち、40歳未満の占める割合は1割程度にとどまる。ボリューム層である60歳以上の既存投資家においても長らく資産の棚卸しを行えずにいるケースが少なくない。新NISAを契機に若手層や既存投資家の積極的な市場参加が進み、株式市場のさらなる活性化、よりよい未来に向けた成長につながることを期待する。
取材協力:ノースアイランド
日本を代表するFP会社。創業理念である「FPが身近にいる安心」をモットーに個人・金融機関・職域に向けてサービスを提供している。昨今は金融機関向けコンサルツールや勤労者向けスマホアプリなどのシステム開発にも注力しており、複数の特許も取得している。
https://www.knowsi-land.co.jp/