経済学者

伊藤元重氏

イノベーションを生むのは
「好奇心」と「現場主義」

 研究者としてだけでなく、政府の経済戦略会議やIT戦略会議委員、企業の社外取締役として、現実の経済政策の提言などでも多彩な挑戦を続ける経済学者・伊藤元重氏。好奇心と現場主義で「社会をより良く変えるイノベーション」を探求する伊藤氏が考える、日本経済や自動車産業の挑むべきイノベーションとは――。

伊藤元重氏

異なる発想のぶつかり合いが
最大の学びの場

 エンジニアだった父の影響から数学や理科が好きで高校時代は理系クラスを選択していましたが、文系にも得意分野を生かせる学部があると知り、大学受験前に志望変更。入学した東京大学経済学部では当時、マルクス経済学が主流でしたが、政策をリードする活動にも積極的な若手の近代経済学の先生方の講義を聴き「学問は社会を変える力になり得る」ことを目の当たりにしたのです。大きな刺激を受けた私は、「アカデミックな分野でもっと勉強したい」という思いを次第に強くし、就職せずに大学院へ。米国留学で博士号を取得して助教授となり、帰国後、都立大を経て東大に復帰しました。

 研究室で一人、理論研究と論文執筆に明け暮れていた35歳のとき、転機が訪れました。先輩教授だった小宮隆太郎先生から「俺と一緒に論文を書け」と共同執筆に誘われたのです。若手理論家との経済論争や政策研究など行動派で見識の広い小宮先生との作業は、好奇心を刺激する発見の連続でした。理論を現実的経済へつなげることへ興味と挑戦の幅が広がり、異なる発想の人とディスカッションすることこそが最大の学びだと確信する経験になりました。

ビジネスや政策の最前線へ
挑戦を広げる

 現実的経済へ関心が広がり、学界以外の方たちとも積極的に関わるようになると、省庁から政策に関する依頼も舞い込むようになりました。40歳を目前にした頃にはさらに人脈も広がり、ダイエーの中内功氏、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏、イオンの岡田卓也氏などビジネス界のトップに話を聴く機会も増加。1998年には小渕内閣で経済戦略会議、続く森内閣ではIT戦略会議の委員も拝命しました。

 どれも経験のない、生半可な気持ちでは臨めない挑戦でしたが、重圧に負けないよう私が大切にしたのは「好奇心」と「現場主義」。工場や店舗の人たちとのふとした会話にこそ深いヒントが隠れていて、現場の光景そのものがビジネスの現在と未来を表していることを痛感しました。現場の事象を見逃さず、自分の思考にはね返させるには、好奇心や直観力、注意深さが役立ちました。そして、貴重な経験を一つひとつ乗り越えていくことが、次の挑戦に立ち向かう原動力となりました。

 今後は現場から学んだものを集大成した本の執筆によって、また、いくつかの企業の社外取締役として、企業の中から社会をより良く変えるイノベーションを起こしていきたいと考えています。

スカイライン

「自車を取り巻く全方位の危険から、車が人を守る」という予防安全の考えを基にした、スカイラインの「全方位運転支援システム」。20年を超える開発の歴史から生まれた数々の世界初技術を搭載し、事故の低減、疲労軽減、意のままに操る醍醐味を支え、クルマの未来をリードしていく。

新たな付加価値で
イノベーションを

 自動車産業は、家電産業とともに戦後の日本経済をけん引し続けてきました。家電が価格競争に陥る一方で、自動車は走行性能のみならず、環境性、安全性、自動運転など次々と新たな付加価値を消費者に提案することに成功。例えば、剛性が高い車ほど安全だといわれていた当時、衝突安全ボディーなど新たな発想で日本車は世界を驚かせました。超高齢化社会、人口減少も見据え、自動車は今後どうあるべきか――。誕生以来、世界初の技術に果敢に挑戦してきたスカイラインには、これからもイノベーションを生み出し続けてほしいですね。(伊藤氏)

※記事は2018年9月21日のものです。
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伊藤元重氏

プロフィル伊藤元重氏(いとう・もとしげ)

1951年静岡県生まれ。74年東京大学経済学部経済学科卒業。78年米国ロチェスター大学大学院経済学部博士課程修了。79年経済学博士号(Ph.D.)取得。その後、米国ヒューストン大学経済学部助教授、東京都立大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、東京大学経済学部教授、東京大学大学院経済学研究科教授、東京大学大学院経済学研究科研究科長(経済学部長)、総合研究開発機構理事長、税制調査会委員、復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、社会保障制度改革推進会議委員、公正取引委員会独占禁止懇話会会長、企業の社外取締役などを歴任。現在、学習院大学国際社会科学部教授、東京大学名誉教授。

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