レーシングドライバー/医療法人さわらび会 副理事長/社会福祉法人さわらび会 理事

山本左近 氏

元F1ドライバーがスカイラインを徹底比較

ProPILOT2.0 with 3.5L V6 HYBRID
vs 400R with 3.0L V6 Twin-Turbo

自動車レースの最高峰F1で、スーパーアグリF1チームなどのレーシングドライバーとして世界を舞台に活躍してきた山本左近氏が、スカイライン2モデルに試乗。トップドライバーならではの鋭い評価とともに、モータースポーツと医療福祉分野の経営者という両軸で活動する先に見据えるクルマの未来について聞いた。

山本左近氏

ProPILOT2.0 with 3.5L V6 HYBRID

「長い距離を楽しむことも、
走る楽しみだと思う」
(山本左近氏)

 世界初の運転支援システムプロパイロット2.0(以下PP2.0)。高速道路「同一車線内ではハンズオ(※1)が可能となるナビ連動ルート走行」を備え、車線変更や道路分岐も含め、目的の高速道路出口までの走行を統合的に支援する。解放される時間と、操る喜び。2つの選択肢を1台で手にする。

「長い距離を楽しむことも、走る楽しみだと思う」

「PP2.0を作動させても、自分の思う感覚でクルマを走らせられる。これが、実はなかなか難しいことで、従来の市販車の運転支援デバイスは、僕の感覚では安心できるレベルまで到達しているものは少なかった。でも、このPP2.0の実力は安心につながると実感できました」(山本氏)

PP2.0 の「自然さ」は
未知なる体験

 高速道路でハンドルから手を離していても100キロで巡航していくのは、今までにない経験ですよね。まさに、未知なる体験(笑)。クルマの流れや道路の制限速度を瞬時に検知して100キロから80キロに落ちて、ごく自然にまた100キロに上がってくる違和感のなさは、驚きますね。ちゃんとスピードメーターを見ていないと気づかないくらいの感じで、スピードと前後の距離のコントロールをしていることにすごく価値がある。周りにクルマが多いときの加減速も、僕にも十分なレベルで「ありがたいな」と。

 コーナーでもこれだけきれいに曲がってくれると安心できますね。他のレーンアシスト付きのクルマと比べて、右や左に外れていくことがなく、すごく優秀。ステアリングの動き、レーンの位置取り、車間距離やスピード感など全ての面で様々な不自然を乗り越えてきた技術開発の努力の賜物(たまもの)だと思います。

快適さと爽快な加速で
「大人なクルマ」

 高速道路では「おとなしいな」と思っていたんですが、箱根をスポーツモードで走行し、踏むと意外と出る。HYBRIDは、出足のトルクがすごく良くて、車重を感じさせません。特に箱根の登りは、ターボだと過給するまでのラグがでるので、「モーターの加速の方がいいんじゃないか」というくらい。モーターとエンジンのどちらの良さも出ているというか、うまく融合しています。

 いやー、快適ですね。疲労感が違うのは、本当に大きいな。僕も帰りの渋滞はやはり眠くなるし苦痛です。一般的に長距離になればなるほど疲労は蓄積しやすく、特に夜間は視野が狭まり、事故も起こりやすい状況なので、ドライバーの負荷が減り、より安全な環境になるPP2.0の機能はさらに有効だと思いました。

 走る楽しさって、決して飛ばすことが全てではないと思うんです。このクルマの一番の良さは、長い距離を安心して疲れずに走れること。それは、長くクルマを楽しめることでもある。自分のペースを保ちながらも周囲と調和し、夫婦で運転を交代しつつ走っていく時などには、いいですよね。「大人なクルマ」です。非常に楽しませてもらいました。

プロパイロット2.0 の仕組み

プロパイロット2.0 の仕組み

 カメラ、レーダー、ソナー、GPS、3D高精度地図データを組み合わせ、車両周囲360度の情報を把握することで実現したシステム。特に、新開発の「トライカム(フロントカメラ)」は、異なる検出エリアをカバーする3つのカメラを組み合わせ、以前よりも広く遠くまでの状況把握を可能にした。また、3D高精度地図データを使い、センチメートルレベルの精度で道路上の自車位置を把握。高速道路上のレーン、速度標識、案内標識、周囲の車両の複雑な動きをリアルタイムでキャッチし、滑らかな走行を提供する。

※1 ハンズオフは、高速道路や自動車専用道路を走行中、道路側の制限速度を上限に、ドライバーが常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じて直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて可能です。ハンズオフ機能は対面通行路、トンネル内、急なカーブ路、料金所、合流地点及びその手前などでは使用できません。非作動区間に入る際には、システムが事前にドライバーに報知しますので、ハンドル操作を行ってください。
*ドライバーが自分の意思で車線変更を行いたい場合には、ハンドルに手を添え方向指示器を操作し、クルマ側が車線変更可能と判断すると支援を開始します。ドライバーの判断で、車線変更や追い越しをすることも可能です。
*あくまで運転支援システムであり、安全運転を行う責任はドライバーにあります。

400R with 3.0L V6 Twin-Turbo

「攻めさせてくれる、
走るってこんなに楽しいんだ」
(山本左近氏)

 スカイライン史上初となる400PS超えのハイパフォーマンスエディション。専用チューンされたダイレクトアダプティブステアリング(以下DAS)、新開発インテリジェントダイナミックサスペンション、4輪アルミレッドキャリパー対向ピストンブレーキを搭載。極限まで追求した走りを手に、日産では特別な意味を持つ「R」を冠す。

「攻めさせてくれる、走るってこんなに楽しいんだ」

「コーナーに入っていった時に、制御のない状態だとリアが振られたりしてもおかしくないんですが、今回は一切なかった。こうした安全につながる制御も〝あー、制御が入っちゃって攻められなかった〟と感じたところもなくて、すごくいいチューニングがされています」(山本氏)

操縦性と運動性能がすごい

 箱根でまず感じたのは、5~6000回転くらいでのターボの利きや吸気の掛かるタイミングがすごくいい。普通は5000回転以上になるとトルクは減る方向なのですが、ターボでそこをカバーして、レスポンスがすごくよく、踏んだ瞬間にバンッと加速してどこまでも気持ちよく踏み出してくれますね。グーッとコーナーを回り込んだ時に、クルマがしっかりと路面にくいつきながら、高回転域でもさらに回っていってくれる。こちらは車重が軽いので、減速や曲がり、コーナー立ち上がりの加速も有利で、よりドライバーのリニアな感覚に近い。ステアバイワイヤー(DAS)については、ステアリングとタイヤ角のギャップはなく、違和感はない。自分の感覚と違ったらどうしようと思っていたんですが「これ、すごいな」と。

誰でも安全にかっこよく走れる

 スタンダードモードで高速道路を走ると急に街乗りになりますね。思っていたよりソフトな乗り心地で、同乗者も心地よい乗りやすいクルマだと思います。どの速度域でも快適性が一定なのは意外でした。普通は速度域により、ステアリングの重さやバランスが変わっていくんですが、高速でも街中でもトルクを十分に感じながら安定した姿勢で運転できる。モードを切り替えることでそれぞれのシーンに合った走りになり、クルマとしての性能の幅は非常に広い。普通の顔と、速く走れる顔だけでなく、もっと多面的な表情を見せてくれる。

 僕らからすると制御されている感じが鼻につくと、「面倒くさいから全部切って!」となるんですが、制御が適切に入っている時は嫌だとは思わないんです。ドライビングツールとして受け入れて運転できる。どんな状態でも安全に曲がり切れるように計算された、さりげない気遣いがすごい。コーナーであえて加速していけるクルマを作っているというのは、走る楽しみをドライバーに感じてほしいという、作り手のおもいがそこにあるんじゃないかな。誰でも安全にかっこよく走れる。「クルマってこんなに面白いんだ」と走る楽しさを安心して覚えられるのも400Rの魅力だと思います。

誰でも安全にかっこよく走れる

「結構いいなと思ったのは、パドルシフトのシフトアップのギャップが短いことです。ここのリニアさって大事だと思っていて、ハイパワーの車でシフトアップのラグが大きいと気持ちが冷めるじゃないですか。それと、スポーツ+モード(400R専用)は、スポーツモードよりも高回転域がより使いやすくなる。4500回転ぐらいからグーンとパワーがでるイメージです」(山本氏)

ドライブモードセレクター

「等身大、それでいて
ちょっと上の自分を
引き出してくれる」

 今回初めてスカイラインに乗って横浜‐箱根を往復しましたが、一番感じたのは「セダンでここまでの走りができるクルマって、ほかにあったっけ?」ということです。ぱっと見は控えめな雰囲気だけれど、ひとたび走り出すと、ものすごくレベルの高い走りができる。高揚感がすごくあって、でも、きちっと安全な形だから余裕が生まれる。あくまでも等身大でありながら、ちょっと上の自分を引き出してくれる。それがスカイラインの良さだと僕は思います。

F1 Driver’s EYE!
1000分の1秒の感覚で捉えた
スカイライン

 F1のように時速300キロで走る世界では、1秒間に約80メートル進むので、1秒ボーッとしてブレーキが遅れたら、80メートル先の壁やガードレールに普通はぶつかってしまいます。0.1秒でも8メートルだから、一瞬も気を抜けない。レーシングドライバーは1000分の1秒単位や10センチ以内の単位でレースを捉え、感覚を研ぎ澄ませて戦っています。そうした僕らの感覚でも、HYBRID、400Rどちらのモデルも非常にレベルが高いと感じました。

 街中での乗り心地では、2台ともに快適で大きな差は感じません。HYBRIDはバイパス道路などで中低速くらいだと、ほとんどEV走行ですね。400Rのようなスポーティーなサスペンションは入っていないのに(※2)、足回りがしっかりしていて、ガタガタせずに快適性が高いです。
 400Rはアクセルを踏み込んだ時のトルク感が大きい。ということは、エンジン回転数を一定に保ちやすく、スピードコントロールが楽なんです。

 コーナリング性能に関しては、HYBRIDも安定していましたが、400Rのほうが少しレベルが高い。クルマは振り子の運動なので、加速する時には振り子が後ろに行く。その時の前後の振り幅が重い物は大きいけれど、軽ければ小さい。2台を比較すると、大幅に負けるほどではないですが、HYBRIDは車重が重い分、ワンテンポ反応が緩やかです。「あー、ここで行くとちょっと重たいな」というのがあって、少し減速せざるを得ない時もありました。

 400Rで僕がブレーキを操作して真っすぐコーナーに入っていこうとした時に、僕のイメージより1本左に寄ったんです。よりアンダーステア方向(安定化方向)というか、姿勢を正そうとするコントロール。でも安全につながるものだから、それで正しいんですよ。もし制御がない状況だったら、ホイールスピンやオーバーステア(ステアリングの切りすぎ)の時はもっとリアが出るとかあってもおかしくないんですけど、それが今回一切なかった。それはやはり、うまくコントロールされているからです。この非常に高いレベルの電子制御は、高いスピード域で走らなくても、安定性やトルクのパワー感を十分に感じながら、安全に快適に、そして同乗している人も安心して乗ることができるもので、実はオーバースペックなものではなくて、街中でもこのスペックを十分楽しめると、僕は思います。

※2 HYBRIDグレード:ダブルピストンショックアブソーバー搭載。400R:インテリジェントダイナミックサスペンション搭載。

常識を疑い、限界を超え続ける
それが僕の挑戦の流儀

 僕はクルマの楽しさや面白さを知っています。クルマがあることで、人は自由に、快適に移動ができるようになりました。一方で、クルマによって悲しい思いや苦しい思いをする方々もいます。
 8年前にF1を離れて帰国してからは、一旦、医療福祉事業に活動の軸を全て移し、モータースポーツはほとんどしない時期が3年ほどありました。その間に、交通事故の多さ、運転免許返納後の交通弱者、介護事業所での送迎ドライバーの高齢化や人材不足など、交通安全や移動に関わる課題が数多く見えてきたのです。

 僕自身の基礎を築いてくれたモータースポーツは自動車技術の革新を進め、クルマ社会をけん引していく存在です。そこで得た経験は、様々な課題解決に役立つのではないか。電気自動車や自動運転など、クルマの未来につながる新たな技術についてもさらに学びたい。そうしたおもいが募る中、電気自動車の世界最高峰レースであるフォーミュラEのロンドン大会参戦をきっかけに、レース復帰。医療福祉とモータースポーツを活動の両軸にすることで、僕にしかできないことに挑戦していこうと決意しました。今よりもっと楽しく、もっと安全に、自動車の利便性を享受し続けられる社会を作っていきたい。自分自身に限界はつくらない。それが僕の原動力となっています。

 僕がモータースポーツで培ってきたのは、「現状は限界なのか? その限界を乗り越えることはできないのか?」ということを考え続けることです。モータースポーツというのは一瞬のミスも許されない世界です。そのためにいろいろなリスクヘッジをしなければならないのですが、新しいことを生み出していくことはすごく大切ですし、自分自身への挑戦を常に続けることが、ドライバーとして技術者として求められる能力です。これはどのような分野でも同様に求められる能力であり、医療福祉の分野においてもです。そして「目的と手段をはき違えない」「気づいたことをそのままにしない」「常に常識を疑う」ということも同様に大切にしていることです。

新しい技術に対して
後ろ向きになる必要は一つもない

 レースにおける、日々の改善や進歩はとてつもなく早いものがあります。例えば、パドルシフトは元々F1から生まれたものですが、それまではマニュアルトランスミッションで、ドライバーがクラッチを切ってギアチェンジをしていました。例えば、昔のモナコGPのアイルトン・セナのオンボード映像を見ると、常にギアを変えているので、ずーっと片手運転。モナコは路面形状が複雑なので、クルマは暴れる。その難コースを、片手でステアリングを抑えながら、片手でギアを変え続ける彼のドライビングは、今見ても迫力がある素晴らしい走りです。

 しかし、パドルシフトが登場したことで、ドライバビリティーは格段に上がりました。ステアリングから手を離す必要がなく、ドライバーの思うままにギアを変えながら、より安定したブレーキングやコーナリングができる。そうすればラップタイムはおのずと上がっていくので、セナほどの才能はないドライバーでもはるかに速く走ることができる。両手でステアリングを持っていた方が安全性も高い。これがクルマの進化なんです。最先端技術が日進月歩で、競争の中でどんどん進んでいくことこそが、モータースポーツの最も大きな価値。この競争があるからこそ、様々な運転デバイスによる、安全性や快適性の享受につながっているのは間違いのないことです。

 レーシングカーはある程度リスクを取りますが、市販車はリスクがあってはいけない。リスクを乗り越えて、数多くの失敗を蓄積して完成されたのが市販車です。クルマというのは昨日今日の進歩によってここに至っているのではなくて、100年くらい前に誕生してから、レースも含めて多くの人々が命を懸け、時には事故も経験しながら進化してきました。その中で、どうやったら安全に、そして私たちの生活をより豊かに幸せにできるのか、という積み重ねが「今日」だと、僕は思っています。新しい未来を作っていくためには、技術によって社会を変えていくことが求められています。新しい技術に対して後ろ向きになる必要は一つもないんです。

F1チャンピオンの技術を搭載!?
自動運転にも夢が広がる

 僕はレーシングドライバーですが、自動運転には大賛成。それは例えば、F1のワールドチャンピオンクラスの技術を搭載した自動運転車ができれば、交通事故は激減すると思うからです。状況判断、反射神経、予測能力含めて、一般ドライバーよりもはるかに高い技術で自動運転を制御できたら、安心で安全で速い。

 年間20億円を払ってF1ドライバーを運転手として雇える人はまずいないけれど、手の届く価格でその技術が買えるならいいですよね。今日はプロドライバー並みの走りで限界までプッシュしてほしいとか、別の日はエコに徹したドライビングがいいとか。そうした可能性のある技術を肯定しない理由はどこにもありません。ドライバーの好みやシーンに合わせた運転スタイルが選べる、そんな自動運転になったらいいなとも思っています。

※記事は2021年1月15日のものです。
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山本左近氏

プロフィル山本左近氏(やまもと・さこん)

1982年愛知県生まれ。6歳で初観戦したF1日本GPに魅せられ、F1ドライバーを志す。2005年日本GPにてジョーダンのテストドライバー。06年鈴木亜久里氏率いるスーパーアグリF1チームでデビュー、佐藤琢磨選手と共に参戦し日本のF1人気を支えた。07年スパイカーF1所属。以降ルノー、ヒスパニア、マルシア・ヴァージン等の各F1チームでレース/リザーブドライバーとして活躍。15年フォーミュラE参戦。以降レース活動のほか、「SUPER GT+」(テレビ東京系)で解説者としても活躍。

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