提供:NIPPON EXPRESSホールディングス

VOL.3 真のグローバル企業へ

グローバルで
サプライチェーン守る
マーケットインの発想で
ソリューション提供

グローバルでサプライチェーン守るマーケットインの発想でソリューション提供

 NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)は、創立100周年の2037年までに海外売上高比率50%という目標を掲げている。その実現に向け7月、NXグループ全体のグローバル機能を集約する組織改正を行った。事業展開の加速を担う新組織グローバル事業本部(Global Business Headquarters=GBHQ)を率いる内田敏朗専務執行役員に、グローバル化の現状と今後の戦略などを聞いた。

海外売上高6,861億円
中間目標大きく上回る

――2019年度から「NXグループ経営計画2023」を遂行中です。グローバル市場での成長の進捗状況を教えてください。

 グローバル市場での成長は経営計画の最重要課題として取り組んでおり、この3年間で着実に成果が表れています。2021年度の海外売上高は6,861億円と、当初の中間目標5,200億円を大きく上回りました。成長要因は、計画策定時から、日本の物流市場の成長率が中長期的に海外より減速することを前提に活動してきたこと。顧客(産業)軸・事業軸・エリア軸という3つの軸で取り組んできたこと。加えてM&A(合併・買収)の効果も出始めています。

 もちろん、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が解除され物流量が大幅に増加したこと、運賃の高騰といった業界共通の要因はありますが、総合物流企業として顧客のサプライチェーンを徹底的に守り抜くという使命を粛々と果たしてきたからこその成果だと思っています。

NXHD 内田敏朗 専務執行役員

NXHD 内田敏朗 専務執行役員

物流混乱は、チャーター機、
新ルートでサポート

――コロナ禍やウクライナ情勢には、どのように対応していますか。

 コロナ禍で航空機の輸送スペースや海上コンテナが不足するなど物流が混乱する中、私たちはお客さまのサプライチェーンを守ることを第一義に、全力で取り組んでいます。例えば上海港や浦東空港の混乱の際には、近郊の港や空港を提案して活用。航空輸送では杭州、厦門、広州空港発のチャーター便を飛ばしてスペースを押さえる。関連各所と交渉して中欧鉄道のルートを確保し海運スペースの不足を救済するなど、輸送の遅延を最小限に抑えるべく、さまざまな対策を模索、提案しています。中国国内輸送についても、バージ*や内航船を活用したBCP(事業継続計画)ソリューションの提供を開始しました。

*バージ:貨物を積載した艀(はしけ)にプッシャーボートを連結して運航する内航輸送システム

 ウクライナ情勢への対応としては、中国から欧州への新ルートとしてカスピ海を経由する複合輸送サービスを始めました。ロシアを経由しないので、欧州向けBCP用の輸送ルートとして活用いただけるでしょう。社会や国際情勢の変化に対し、物流のプロとしてお客さまをサポートするソリューションの提案を日々考え行動するよう努めています。

中国発欧州向け。カスピ海を経由する複合輸送サービス

中国発欧州向け。カスピ海を経由する複合輸送サービス

医薬品プラットフォームを
海外に横展開

――経営戦略の3つの軸のうち、産業軸の状況をお聞かせください。

 産業軸では、電機・電子、自動車、アパレル、医薬品、半導体関連を重点5産業と定めており、21年度の売上高は対前年比38%の増収になりました。なかでも、ここ数年にわたり注力してきた成果が特に表れているのは医薬品です。医薬品の適正流通基準「GDP(Good Distribution Practice)」に準拠する施設や拠点を世界各地に増やしたことで、国際間フォワーディングのネットワークが概ね整いました。次のステップは、日本では既に稼働している医薬品プラットフォームを海外にも横展開していくことです。その皮切りが医薬品3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)米MDロジスティクスの買収。医薬関連3PLは欧州を中心に、M&Aなどを通じもっと強化していく計画です。

 自動車産業はEV(電気自動車)シフトとともにサプライチェーンが変化しており、中東欧、モロッコなどの拠点を拡充しています。半導体産業についても地産地消が進んでいます。対応策として、米アリゾナなどに拠点を新設、台湾で営業を強化するなどしているところです。アパレルは、ファストファッションとハイファッションの両輪で強化。特にハイファッションはアフターコロナの需要が増大しており、イタリア2社のM&Aのシナジーが貢献しています。

グローバルネットワーク拠点

グローバルネットワーク拠点

海運フォワーディング拠点をシンガポールに移管

海運フォワーディング拠点を
シンガポールに移管

――事業軸、エリア軸の状況はいかがですか。

 事業軸では、ボリュームとして伸びしろの大きい海運フォワーディングに注力しています。その強化を担っているのが、20年に設立した「グローバルNVOCC*センター(GNC)」です。今年に入り法人を設立し、船会社やアジア・パシフィックの本社機能が集中するシンガポールに移管しました。集中購買と業務のデジタル化によりコンテナ不足にも柔軟に対応、競争力のある運賃を提示することで、事業の拡大を図っています。エリア軸では、ASEAN(東南アジア諸国連合)はまだまだ強化する余地がありますし、コロナ禍で取り組みが遅れたインドとアフリカをはじめとするエリアの拡大は必要だと考えています。

*NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier=非船舶運航業者):船舶を持たず、不特定荷主の貨物を海上輸送する事業者

ベネチアで、
水素エンジンボートを使った
配送サービス

――脱炭素への取り組みについて教えてください。

 脱炭素への取り組みとしては、自社の温暖化ガス排出量を示すスコープ1、2では、環境配慮型の車両の導入やエコドライブ、施設の照明のLED化推進などを進めています。直近のユニークな取り組みとしては、地球温暖化による海面上昇の影響を受けているイタリアのベネチアで、水素エンジンを搭載したボートによるラストマイルの配送サービスを開始したところです。グローバル事業で大きな課題になるのが、間接排出量を示すスコープ3。実践的な取り組みの一つとして、全日本空輸のSAF(Sustainable Aviation Fuel=持続可能な航空燃料)を利用するプロジェクトに参画しました。SAFへの取り組みを主軸と捉え、他の航空会社とも協議を進めています。

温暖化の影響で水没の危機にあると言われるベネチアでは、水害対策も進む

温暖化の影響で水没の危機にあると言われるベネチアでは、水害対策も進む

非日系顧客の開拓は、
多国籍の発想で展開

――「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」を目指す上で、NXグループの強み、課題はどこにあると考えますか。

 国際物流の主戦場であるアジア地域でのインフラ、人財、購買力が圧倒的な強みであることは間違いありません。ただしそれ以上に、プロダクトアウトではなくマーケットインの発想で、より最適なビジネスソリューションを提供することがNXグループの一番の強みだと思っています。徹底的にお客さまをサポートするには、取り扱う顧客の商品特性を熟知することが大事。その上で、高い品質の輸送サービスを提供しながら関係性を深めていく。こうした、いい意味での日本企業としてのカルチャーは、メガフォワーダーと呼ばれる競合他社との差別化にもつながると思います。

 一方で現在、海外売上高比率30%程度という点は課題ですが、逆にいうと海外での伸びしろが大きいということ。そこでグローバル事業の開拓を強化する新組織グローバル事業本部「GBHQ」を立ち上げました。NXグループ全体のグローバルでの購買・商品開発機能を集約し、営業面では徹底的なアカウントセールスを行います。本部は今のところ日本に置いていますが、シンガポールと欧米にも拠点を設置。人財も、マネジメントクラスをはじめとして、医薬や半導体など業界の専門人財の多国籍化も進めています。要は、日本人の発想ではなく、多国籍の発想で展開していくということです。この本部は、次のステップでは日本を離れ海外に置くことも想定しています。

非日系顧客の開拓は、多国籍の発想で展開

互いの文化を尊重し、
「ラウンドテーブル」定着させる

――今年1月、ホールディングス体制への移行とともに、「日本通運グループ」から「NXグループ」に名称変更しました。その思いをお聞かせください。

 日本通運という名称は非常に歴史あるブランドで、特に日本国内で認知度も高く、お客さまにも広く浸透しています。しかし、これまでの漢字を使った「マルツウ(丸通)」のロゴは、欧米の人の感覚にはなじみにくいものでした。大きくグローバルに舵を切っていくにはあえて日本企業であることを強調する必要はない。ニュートラルなイメージを打ち出したい。こうした意志の表れとして、退路を断つ思いでイメージの刷新を図りました。実際、M&Aも人財の多国籍化も、「日本の企業」というより、もっとグローバルなイメージを持ってもらった方が進めやすいと考えています。

 ホールディングス化は、日本通運もNX欧州等の各地域統括会社も並列になることで、日本を軸とした経営から真の意味でのグローバル経営にシフトするという意志の表れです。日本企業は得てして日本の文化や考え方、習慣を正しいものとする先入観がありますが、これからはそれぞれのカルチャーを尊重する姿勢が欠かせません。私自身、シンガポール、ドイツ、米国での赴任経験から、多様な人たちが一つのテーブルを囲み議論する「ラウンドテーブル」で物事を決めていくスタイルが大事だと思っています。マインドセットを図りながら定着させていきたいですね。こうした取り組みの実践が、NXグループで働く多様な人たちの幸せにつながり、結果としてグローバルでの成長サイクルを生み出していくのだと考えています。

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