提供:NRW.Global Business Japan

日本のスタートアップを歓迎インパクト投資求めるNRW州

NRW.Global Business Japan / NRWジャパン 社長 ゲオルグ・ロエル氏

ドイツ西部、オランダやベルギーと接するノルトライン・ヴェストファーレン州(以下NRW州)は、ドイツ最大の経済州だ。大企業はもちろん、幅広い業種の中小企業約45万社が操業し、近年では州都デュッセルドルフをはじめ、NRW州をスタートアップの地に選ぶ起業家も多い。

NRW州マップ

NRW州の概要
(2022年データ、括弧内はドイツ全体に占める割合)

面積:34112km²(9.5%)
人口:1810万人(21.5%)
就労者数:960万人
GDP:7938億ユーロ(20.4%)
輸出:2018億ユーロ
輸入:2635億ユーロ
外国直接投資:1918億ユーロ(22.7%)

※20年末データ

NRW州には、関東地方(1都6県)よりやや広い面積に、1800万人強が居住する。州内には約650社の日本企業が進出し、州都デュッセルドルフを中心に8000人近い日本人が暮らす。州都のほかケルン、ドルトムント、エッセンといった大都市を多数抱えており、再統一前の西ドイツの首都ボンも州内の都市だ。欧州の国別GDP(国内総生産)ランキングでは、EU(欧州連合)経済をけん引するドイツが圧倒的トップだが、NRW州単独で比較してもオランダに次ぐ7位であり、ドイツの16連邦州の中でも郡を抜く。現在の産業構成は化学、ハイテク、サービス業が隆盛だが、極めて幅広い産業が集積している。特に水素、新素材、再生可能エネルギー、ロボティックス、人工知能(AI)、モビリティー、医療技術、バイオテクノロジー関連の産業が集中しており、スタートアップも関連産業が多い。NRW.Global Business GmbHはNRW州経済産業省傘下のNRW州貿易投資振興公社として、ドイツ企業の日本進出、日本企業のNRW州誘致という双方向の事業をサポートしており、日本からのスタートアップの進出を歓迎している。

欧州の中心に位置

フォト:州都デュッセルドルフ

州都デュッセルドルフ ©jotily

ヴュスト州首相訪日で関係強化

2023年6月4日から8日まで、ヘンドリック・ヴュストNRW州首相が訪日した。NRW州の大臣クラスの訪日は珍しくないが、州首相の訪日は16年ぶり。米国、中国、インドへの訪問より前に日本訪問を決断した意味は大きい。NRW.Global Businessの日本法人であるNRWジャパンのゲオルグ・ロエル社長は、「ヴュスト氏は21年に州首相に就任し、22年の州議会選挙で再選されたが、まだ40代で弁護士資格を持つ魅力的な人物だ。NRW州の連立政権を主導するキリスト教民主同盟(CDU)に所属し、ドイツ連邦政府の次期首相候補としても注目されている」と話す。

総勢50人ほどの代表団を率いて訪日したヴュスト氏は滞在中、林芳正前外相、西村康稔経産相と面談し、内堀雅雄福島県知事、小池百合子東京都知事、大村秀章愛知県知事、吉村洋文大阪府知事とも会談するハードスケジュールをこなした。日本の財界人や大学の教育関係者、教育現場の人たちとも会談。また、滞在中には日本貿易振興機構(JETRO)とNRW.Global Businessとの協力覚書(MoC)の更新にも立ち会った。MoCの再調印でこれまでの地域間経済交流に加え、イノベーション創出に向けた共創促進(グリーンテック、デジタルテック、メドテック)を図っていく。

2022年に締結されたCDUと同盟90/緑の党(略称:緑の党)とのNRW州政府連立協定の文書には、日本との関係強化が明文化されており、今回の訪日はその目的に沿ったものだ。「ドイツと日本は共通の世界認識と共通の価値観を持っている、とヴュスト首相は訪日中に何度も話していた」とロエル氏は教えてくれた。連立協定文書の3分の1は気候保護に言及しており、日本との未来志向の連携強化で、気候保護関連技術を含め、多様なイノベーションの芽を育てたいというヴュスト氏の強い意志が伝わってくる。

フォト:JETROとNRW.Global BusinessがMoCを再調印

JETROと
NRW.Global Businessが
MoCを再調印

©Land NRW / Marcel Kusch

スタートアップが新たな歴史つくる

NRW州と日本企業との結びつきには、60年以上の歴史がある。三菱商事がデュッセルドルフに進出したのは1955年で、東京銀行(現三菱UFJ銀行)の支店も58年にできた。機械の購入や輸出の拡大など、戦後の日本の復興にとってNRW州は重要なパートナーだった。60年代には日本の商工会議所や日本人学校もでき、進出日本企業にとってのインフラが整った。現在は650社ほどの日本企業が進出しているが、世界各国からは2万2000社ほどが進出している。

70近くある大学に加え、マックスプランク研究所やフランホーファーなどに代表される14の規模の大きな研究所があるのも、進出企業に取ってNRW州の魅力の一つになっている。最近ではイノベーション拠点を設ける日本企業が増えており、ダイキンがドルトムントに、富士フイルムがデュッセルドルフ近郊の町ラーティンゲンにオープン・イノベーション・ハブを設置している。日本からは既に20社ほどがこうした拠点を設けており、東芝もイノベーション拠点をこの9月にデュッセルドルフに設置した。

フォト:ゲオルグ・ロエル氏

イノベーションの芽をできるだけ多く育てたいNRW州の期待に応え、近年特に目を引くのがスタートアップの進出だ。振り返れば、2011年のサイバーダインの誘致は、NRW州へのスタートアップ誘致の先駆けだった。パートナーとなったドイツ最古の労災病院であるルール大学BGベルクマンスハイル大学病院とともに、同社の医療用装着型ロボットスーツは、13年にEU市場で医療機器のCEマークの取得に成功している。

その後も、日本からのスタートアップの進出が続いてきた。通信・産業用高効率半導体レーザーなどを開発するQDレーザーが、網膜に直接映像を投影する目の不自由な人用めがねを開発して進出。23年には東京都との中小企業の相互進出サポートの覚書が実を結び、風車のブレードのメンテナンスロボットなどを提供するLEBO ROBOTICSが進出したほか、ヘビ型ロボットで知られるHibotも拠点を設立した。また、量子計算と数理最適化手法を組み合わせたソリューションを提供するJijなどもNRW州への進出を検討中だ。いずれもNRW州内やドイツ全体の成熟市場はもちろん、欧州市場全体を視野に入れた進出だ。州の多様な助成プロジェクトの活用など、NRW.Global BusinessとNRW.Global Business Japanの手厚いサポートがこうした進出を後押ししている。また、NRW.Global Business は欧州でビジネスが鼓動する場所、という意味を込めたマーケティングキャンペーン「Europe’s Heartbeat」を展開しており、州産業の特長を積極的に紹介し、進出サポートに貢献している。

NRW州の企業誘致に対するスタンスは、この10数年余りで大きく変化してきた。最近では、イノベーションに関するKPI(重要業績評価指標)に基づき、新技術などNRW州の産業基盤にインパクトを与える、最先端の研究開発型企業を特に歓迎している。「もちろん、日本からの多様なスタートアップが拠点を設けることで、現地に進出している世界中のスタートアップ同士のコラボレーションが盛んになることも期待している。日本とNRW州との交流も、これからはスタートアップの人たちが新たな歴史をつくってくれると確信している」と、サイバーダインの山海嘉之CEOを筑波大学に訪ね、同氏のNRW州進出を決断させたこともあるロエル氏は力強く語ってくれた。

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