主催:日本経済新聞社/後援:金融庁

お金っておもしろい! 日経 お金の教室

マネーのまなび 夏の金融経済教育セミナーリポート

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4月から高等学校などではじまった金融経済教育との向き合い方を考えるセミナーが8月7日、渋谷のスクランブルホールで開催された。会場聴講とオンライン配信のハイブリッド形式で行われ学生や教員を含む、700人超が参加。社会のあり方が変わっていくなか、学生と大人が同じ目線に立って学ぶことの大切さなどが語られた。

スタートトークセッション今を取り巻く金融経済教育同じ目線で興味、能力を引き出す

登壇中の篠田先生の写真

東京都立西高等学校 教諭篠田 健一郎先生

篠田 中学・高等学校での金融経済教育について、まず誤解しないでほしいのは投資家の育成ではないということです。お金を通じて世の中を捉えることで、どのような生き方やあり方がふさわしいかを考え、生きていくために必要となる基礎的な知識を身につけることに意義があります。

伊沢 例えばクレジットカードの使い方も金融経済教育の一つですよね。実は、僕も学生時代にクレジットカードの使いすぎで痛い目に遭っていて。失敗から得る学びも大切ですが、その失敗が取り返しがつかなくなる可能性も少なくありません。生活に密着したお金の知識を安全に、早くから学べるという点でも金融経済教育は大切だと思います。

篠田 お金の動きは情報やモノ、サービス、人の動きとも結びついています。その動きを追っていくと、日本や世界を知ることにもつながるはずです。生徒や教員にとっては新しい発見や気づきがあります。知る喜びは学びの広がりには欠かせません。

伊沢 僕たちが大切にしているコンセプトは「楽しいから始まる学び」です。学習はやはり興味を持つ、やってみるという一歩目のハードルがどうしても高いです。しかし、踏み出せないままだと学びの楽しさにも気づけない。その億劫な一歩目にクイズやエンタメを使って楽しく伴走することで、興味を喚起するのが僕たちの仕事です。

篠田 昔と比べると、学校教育に協力してくれる人は非常に増えました。周囲の環境をどう活用していくかが、これからは教育のポイントになっていくでしょう。そのなかでプロである私たち教員の使命は、教育の本義が人格形成にあることを忘れず、生徒の実態や学校の置かれた状況などに応じていかに魅力ある授業をつくっていくかであると思います。

登壇中の伊沢氏の写真

QuizKnock伊沢 拓司

伊沢 では、ご家庭での教育についてはどうお考えですか。

篠田 投資経験がない自分がどうやって子どもに金融経済を教えればいいのか、不安を覚える親御さんも多いですが、焦る必要はないと思います。教育と名前がついたから戸惑ってしまうだけで、これまでも貯金や保険など、お金について色々考えてきた経験があると思います。まずは子どもと目線を合わせて一緒に考えます。そのうえで、学校ではなかなか教えることのできない経験に基づいたアドバイスをしてあげれば、学校とご家庭で上手に連携していけるはずです。

伊沢 必ずしも何かを教える立場である必要はなく、子どもから教わってもいいわけですね。親子が一緒に学んでいくことが、今後必要になってきます。全てを教え込むティーチャーというよりも、モデレーターやナビゲーターとして一緒に歩んでいく形も増えていくのでしょう。

篠田 教育は英語で「education」ですが、「educate」には引き出すという意味もあるといいます。教え込むのではなく、一緒に子どもの興味や能力を引き出していくことが大切なのではないでしょうか。

伊沢 学びは自分の人生を広げることにもなりますよね。例えば、起業の仕方を知らない人は、将来を考えたときに起業自体が思い浮かばないかもしれません。それまで自分のなかに存在しなかった選択肢が増えるのも教育の素晴らしいところだと思います。

(モデレーターは日本経済新聞社マネー・エディターの山本由里が務めた)

企業出張授業PROMISE 金融経済教育セミナー18歳からの契約リスクに備える

登壇中の陸井氏の写真

SMBC
コンシューマーファイナンス
新宿お客様サービスプラザ
陸井 菜津子

契約は双方の合意のうえで成立し、権利と義務が生じる法的な約束です。複雑な手続きを伴うイメージを持つかもしれませんが、実は日常生活の何気ない場面でも、契約はごく当たり前に行われています。代金を支払ってモノやサービスを利用したり、働いて賃金を受け取ったりすることもその一つです。例えば売買契約では、買い手には商品を受け取る権利と代金を支払う義務が、売り手にはお金をもらう権利と商品を渡す義務があります。

民法では、未成年者が親の同意を得ずに結んだ契約は原則として取り消し可能とされています。これは社会経験が乏しく、契約内容について適切な判断ができない未成年を悪徳商法や詐欺から保護するための措置です。しかし、2022年4月からの成年年齢引き下げにより18、19歳は保護の対象外となります。若年層の被害の拡大が懸念されているなか、政府も消費者教育の充実や相談窓口の拡充で注意喚起を進めていますが、一番大切なのは自分から知識を身につけようとする姿勢です。

SMBCコンシューマーファイナンスでも、契約を含めた金融教育の学びの場を積極的に提供しています。教育現場ではどう教えればいいかわからないという声もあり、そうした現場の課題を解決していくことが、持続可能な社会の実現にもつながると考えています。

成年年齢引き下げによるトラブルを知る

  1. 契約は、双方の合意で成立します。
  2. 契約が成立すると、契約内容について権利と義務が生じます。
  3. 一方的な理由で契約を解除することはできません。
契約への認識が甘いとトラブルになりかねない
  • 契約内容を果たせないと、「信用」を失う
  • 契約内容についてよく理解することが重要

企業出張授業野村グループ 金融経済教育の取り組み今こそ、生きた教材で学ぶ好機

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野村ホールディングス
ファイナンシャル・
ウェルビーイング室
柏崎 洋平

成年年齢の引き下げや、高校家庭科授業にて具体的金融商品を学ぶことになり、これまで以上に金融経済教育への関心が高まっています。自立して生活していくには、資産形成やライフプランの知識が必要なことはもちろん、人生100年時代、自身の稼ぎだけではなく「お金に働いてもらうこと」も検討していかなければなりません。変化の大きい時代、どの世代においても金融リテラシーの向上が期待されています。

足元では数十年ぶりとなる円安、そして貿易赤字も膨らみ、消費者物価指数は30年ぶりの上昇幅です。日本経済では過去にない異例の事態が頻発しています。身の回りで起きていることは、ニュースにもなりますので、みなさんの耳にも入りやすく、興味・関心をもつきっかけになるでしょう。この数十年ぶりの出来事は生きた教材として、今こそ学ぶ好機といえます。

Webサイト「man@bow(まなぼう)」のスクリーンショット
野村ホールディングスと日本経済新聞社が運営する金融経済について楽しく学ぶためのサイト「man@bow(まなぼう)」
Webサイトはこちら

野村グループでは、教育の格差解消を目指し、無償での出張授業や教材提供を通じた現場のサポートを20年以上行ってきました。例えば「man@bow(まなぼう)」や「日経STOCKリーグ」への取り組みもその一つ。とくに学生たちが主体的に企業調査に取り組む日経STOCKリーグは、金融経済の知識だけでなく、自ら課題を見つける力や協調性など、社会で必要な能力の育成にも貢献しています。

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