コモディティー投資の魅力

[第2章]商品取引の種類と世界の商品先物取引

目次

  1. [1]商品取引の種類
    1. 金の現物取引
    2. 金の投資商品
    3. 金の先物取引
  2. [2]世界の商品先物取引
    1. 世界の商品取引所
    2. 中国の商品市場
    3. 日本の商品先物取引

商品取引の種類

商品取引には大きく分けて三つの種類がある。

  • 現物取引
  • ETFやCFD、鉱山株投資信託、純金積立などの投資商品
  • 商品先物取引

具体的に金の取引について見ていこう。

金の現物取引

例えば金の現物取引については、貴金属地金商と呼ばれる田中貴金属や徳力本店、石福金属、三菱マテリアル、住友金属鉱山などで純金の延べ棒(地金)を購入することができる。筆者が香港に駐在していたとき、しばしば中国からニッケル地金や錫(すず)の地金のオファ―を受けたことがある。中国の富裕層は、安いと思ったときにそうした現物を購入し、高くなったら現物を売却するという投資を行っていた。しかし、現物には盗難や紛失のリスクがある。保管料や金利コストも発生し、金でも延べ棒を保有していると保管に気を遣う。

金の投資商品

証券会社では、金の上場投資信託(ETF)を購入することができる。他にも鉱山株を購入したり、鉱山株を集約した投資信託を購入したりする方法もある。また金の場合は純金積立という積立型投資方法もある。ETFや純金積立は、小さな資金から投資を始めることができるものだ。純金積立については、筆者は大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー大学院大学での講義で取り上げたことがある。2019年9月までに30歳から、40歳から、50歳から、60歳から貯蓄をして65歳で2000万円をためることをテーマとし、35年前から月額2万円純金積立をしていれば65歳時点で2177万円になるというシミュレーション結果が得られた。

金の先物取引

三つの取引種類の中でも、流動性が高いと思われるのが先物取引である。同時に理解をしておくべきことは、商品先物取引がハイリスク・ハイリターンな取引であることだ。証拠金取引であり、レバレッジ効果を利かせられる資金効率が高い取引である。世界のファンドマネジャーの大半は現物投資ではなく、集めた資金にレバレッジをかけてリスクマネジメントをしっかり構築しつつ、先物取引やオプション、スワップなど金融工学を駆使している。

世界の商品先物取引

商品価格は各国にとって非常に重要であり、政治と結びつく例も少なくなかった。米国は農産物輸出が主たる外貨獲得源であるため農業保護を優先したこともあった。かつて、ジョージ・W・ブッシュ米国大統領は、米国中西部の票田を獲得するため、エタノールをガソリンに混入させることを許可する政策をつくり、トウモロコシ農家を支援した。

中国が米中貿易摩擦で、真っ先にターゲットとした商品は大豆であった。中国は世界の6割の大豆を消費し、大豆油(サラダオイルやマヨネーズ、インクなどの原料)を大量に生産している。米国産大豆の最大の輸入国でもあったが、トランプ大統領の中国製品に対する輸入関税引き上げに最初に対抗措置として課税したのは、米国産大豆の輸入関税であった。そのため、ブラジルとアルゼンチンの大豆生産量が急拡大した。

原油については、ロシアとサウジアラビアの減産協定が決裂し、増産を決めたため原油価格が急落したことは既に書いた。

世界の商品取引所

近年、世界の主要な商品先物市場では、商品先物取引の取引高が急速に膨張している。

現在世界の商品取引所の上位10取引所は、1~3位を中国が占め、4位はロシア、5位に米国ニューヨーク商品取引所が入る。6位が英国のロンドン、7位は米国のシカゴ、8位はインドだ(インドは12位にも入っている)。日本は16位である。また大連商品取引所では鉄鉱石や合成樹脂原料が上場されている。

インドネシア、タイ、マレーシアの天然ゴム3大生産国は、東京や上海で天然ゴム価格が下落しているため、自国で商品取引所を設立しようとしている。

図

中国の商品市場

商品先物取引が盛んな中国市場の動向を簡単にお伝えする。中国の大連商品取引所は、戦前に三井物産が満州からの農産物を輸入するため、その価格を決定するために設立した取引所であるが、現在では上海に次いで大きな取引所となっている。中国には一時17カ所の商品取引所が乱立していたが、現在では上海、大連、鄭州の3カ所にまとめられている。この三つの市場の出来高は、昨年世界トップ3を占めている。

中国は1983年に金と銀をコントロールする規則を中国国務院で可決し、金市場の実質的支配に向かって最初のステップを踏み出した。日本は、金をモノと認識し、経済産業省の管轄下になっているが、海外では、金は通貨と同様に中央銀行が管轄している。中国では中国人民銀行が金を管理し、ここ数年ロシアと共に外貨準備の一部を米国債から金にシフトしつつある。2013年には金の現物取引を行う上海黄金交易所を設立し、金の現物価格を形成している。

日本の商品先物取引

日本では、エネルギー(原油、石油製品、電力)、貴金属(金、銀、白金など)、天然ゴム、農産物を対象とする商品先物が行われている。

そのうち、原油はアジア向けの中東産原油を取引し、実質的なベンチマークとなっている。金や白金もアジアを代表するマーケットであり、原油とともに海外からのプレーヤーも多く参加している。金はこれまで東京商品取引所で最も活発に取引されていた商品である。原油は現金決済型取引なので、受渡は無いが、金は先物取引所で現物を購入するという使い方もある。また証拠金が10分の1の金ミニ取引や、限月の定めがないゴールドスポット取引もある。余り取引高ができていないがオプションも本当は、リスクマネジメントの観点からもっと活用されてしかるべき取引である。

東京商品取引所の出来高は2003年の8725万枚をピークに、2019年は2003年の約22%となっている。

東京商品取引所年間出来高合計

図

東京商品取引所のHPのデータから株式会社コモディティー インテリジェンス作成

2019年の東京商品取引所の商品別出来高(合計:1,902万枚)

図

商品取引入門 記事一覧

本日の市況データ北浜投資塾東京商品取引所
PAGE
TOP

商品投資の魅力

スペシャルインタビュー

商品投資コラム

商品取引入門

  • 北浜投資塾
  • 東京商品取引所

講師紹介

写真

近藤 雅世

コモディティー インテリジェンス 代表取締役

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。