コモディティー投資の魅力

[スペシャルインタビュー]総合取引所として日本のデリバティブ市場を底上げ 金融とコモディティーをワンストップで取引可能に 大阪取引所 代表取締役社長 山道裕己氏

日経225先物などを上場している大阪取引所に、20年、東京商品取引所(TOCOM)から金などのコモディティーデリバティブ※が移管される。これによって日本にも、一つの取引所において取引できる商品の幅が広がり、また市場の流動性向上が期待される総合取引所が誕生する。日本におけるデリバティブ市場の振興や総合取引所としての戦略などについて、大阪取引所社長の山道裕己氏に聞いた。

※金や白金などの貴金属、とうもろこしなどの農産物、石油や電力などのエネルギーといった実際のモノ(コモディティー)を対象とする先物取引、オプション取引などのこと。

狙いは投資家の利便性と
デリバティブ市場の流動性向上

話をする山道氏の写真

今、世界中で先物やオプションなどのデリバティブ(派生商品)の取引が行われています。海外では、株式などの金融商品から金などのコモディティーまでの幅広い商品を一つの取引所でワンストップで取引できる総合取引所が主流になっています。そうした流れの中で、今回、大阪取引所に東京商品取引所(TOCOM)からコモディティーデリバティブが移管され、金融デリバティブからコモディティーデリバティブまでを取り扱う総合取引所が誕生します。

わが国で総合取引所が提唱されたのは2007年7月。以来、制度整備や法改正に向けた取り組みが進められ、日本取引所グループ(JPX)も研究や東京商品取引所(TOCOM)との協議を続けてきました。その道のりは決して平坦なものではありませんでしたが、2019年3月に両社が基本合意し、ようやく総合取引所が生まれることになったのです。

総合取引所の誕生によって、二つの効果が期待できます。一つは投資家の皆様の利便性向上です。今まで金融分野とコモディティー分野でデリバティブを取引するためには、別々の口座を開設しなければなりませんでした。それが一つの口座でワンストップでの取引が可能になることで、投資家がポートフォリオを多様化することが容易になります。

もう一つはわが国のデリバティブ市場の流動性向上です。一元化された規制・インフラの下で投資できる商品の数が広がることで、大阪取引所の金融デリバティブ市場で取引している投資家がコモディティー市場にも参入します。これによって、流動性の改善が期待できますし、資本市場の機能強化、ひいては日本経済の発展にも寄与することとなるでしょう。また時期を同じくしてコモディティーデリバティブの清算機関の日本証券クリアリング機構への統合が予定されており、信用力の一層の強化にもつながります。

投資家や証券会社と連携、
ワンストップ取引で市場発展を目指す

コモディティー市場には、個人投資家だけでなく、実需に伴う取引を行う企業(当業者)、ファンドや銀行などの金融系の投資家などさまざまなプレイヤーが参入しています。世界のデリバティブ市場を見ると、取引高は拡大しており、さまざまな投資家のニーズを吸収して成長しています。一方、日本のコモディティーデリバティブ市場は縮小傾向にあります。その中で、今回の総合取引所の誕生は市場を盛り上げていく起爆剤になる大きな可能性があります。そこでまず個人投資家の皆様にコモディティー投資の魅力を知っていただくことが重要だと考えています。コモディティーデリバティブは金融デリバティブの世界とは異なり、私たちの暮らしや社会を支えるエネルギーや、タイヤの原材料であるゴム、食糧や飼料になるとうもろこしなどの農産物が取引されています。人々の実生活とも深く関わりがある分野で、その値動きがさまざまな商品の値段に影響を与えることもあります。

また世界の多くのコモディティー市場では、金融系の機関投資家の取引が市場をけん引しています。これまで大阪取引所で取引する機関投資家は、コモディティーデリバティブについては別の市場で取引しなければなりませんでした。今回、その垣根が取り払われたことにより、機関投資家についても、大阪取引所で一元化された規制の下、ワンストップでの取引ができるようになりました。これからも大阪取引所は投資家の皆様や証券会社と広く連携しながら、市場の発展に取り組んでいきます。

移管対象商品

貴金属市場:金標準先物、金ミニ先物、金限日先物、金先物オプション、銀先物、白金標準先物、白金ミニ先物、白金限日先物、パラジウム先物 ゴム市場:ゴム(RSS3)先物、ゴム(TSR20)先物 農産物市場:一般大豆先物、小豆先物、とうもろこし先物

※商品の移管に伴い、東京商品取引所は、原油先物や電力先物等を扱うエネルギー・デリバティブ市場となる。

個人投資家向けにデリバティブ取引の
入門コンテンツを多数提供

話をする山道氏の写真

コモディティー市場を一層発展させるためには、商品先物などの取り扱い会社や当業者をはじめとする関連企業の皆様、従来の大阪取引所の取引参加者である証券会社と連携し、一体となって取り組みを進めていくことが大切だと考えています。そうした中、JPXはコモディティーデリバティブ市場に詳しい東京商品取引所(TOCOM)の役職員をグループに迎えました。JPXグループの力を結集して、デリバティブ市場を運営する中で蓄積してきた知見を共有するとともに、証券会社や商品先物業者の皆様からも話を伺いながら、市場のさらなる発展を目指していきます。その中で、大阪取引所は個人投資家や国内外の投資家および当業者の皆様から寄せられるニーズを真摯(し)に受け止め、さらに利便性の高い市場を目指していきます。

コモディティーという新たな投資の世界を知ることは、個人投資家の皆様にとっても、投資の選択肢を広げることにつながります。すでに株式などに投資されている投資家の皆様には、分散投資先の一つとしてコモディティー投資をぜひとも検討していただきたいと思います。大阪取引所には先物が上場しますが、東京証券取引所のコモディティーETF(上場投資信託)から始めるのも検討に値するでしょう。金などの身近なコモディティーをポートフォリオに組み込むことで、個人投資家の皆様の大切な資産の分散が可能になります。

大阪取引所ではデリバティブ取引について学ぶことができるウェブサイト「北浜投資塾」「北浜博士のデリバティブ教室」で、個人投資家向けのコンテンツを多数掲載しています。コモディティーをはじめ、デリバティブの世界に興味を持つきっかけになれば幸いです。

写真

山道 裕己

大阪取引所 代表取締役社長

京都大学法学部卒業、ペンシルバニア大学ウォートン校にてMBA取得。1977年、野村證券株式会社に入社。同社において、専務執行役インベストメント・バンキング部門兼企業金融本部担当を務めるなど、投資銀行部門を中心にキャリアを積む。また、ノムラ・ヨーロッパ・ホールディングスPLC(ロンドン)社長、ノムラ・ホールディング・アメリカInc.(ニューヨーク)会長など、海外での要職も歴任、約18年間と海外でのキャリアも長い。2013年に株式会社大阪取引所の代表取締役社長、株式会社日本取引所グループの取締役に、また19年には株式会社東京商品取引所の代表取締役会長兼取締役会議長にも就任。

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