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[スペシャルインタビュー]金高騰、誰が買っているのか 豊島&アソシエイツ代表 豊島逸夫氏

2020年、コロナ禍をきっかけに金市場の裾野が広がっています。特に若い世代の参入が顕著です。「老後までの30年間、何が起こるか分からないが、資産価値を維持できる商品は何か」という視点で考え、「金」という希少資産に注目しているのです。

「氷河期世代」ゆえ、「金投資で一獲千金」の甘い夢など初手から持っていません。「攻めの投資」より「守りの投資」として金を位置付けています。セミナーで出る質問も「どこまで上がるか」ではなく「下がるとすれば、どこまで下がるか」です。基本的な発想がリスク分散なのですね。

一方、「パパ・ママ投資家」と呼ばれる一般個人も、これまでの資産運用を支えてきた「安全資産神話」が崩壊して、金にも目を向けるようになりました。

これまでは、預金や国債で持てば「安心」とされてきましたが、預金はゼロ金利。さらに、取扱手数料を徴収する事例も増えてきました。国債に至っては、プロの世界ではマイナス金利が常態化しています。いずれ「個人も国債を購入すると、保有者が金利を払わねばならないのか」との不安が語られるでしょう。

金は金利・配当金を生まないことが大きな欠点とされてきましたが、今や、金はゼロ金利だが、マイナス金利よりも「相対的に高い」との評価に変わってきたのです。筆者は金の世界に40年以上いますが、まさか金がハイイールド呼ばわりされる日が来ようとは思いもしませんでした。

そして、なんといっても、金価格が20年、国内外で史上最高値更新という事実が、「なぜなのか」という素朴な興味を生んでいるのです。

「有事の金」と言われますが、コロナ危機という有事に対応するため、主要国は前代未聞の規模で超金融緩和政策により、紙幣を市中にばらまいています。この劇薬の副作用を懸念する人たちが金を買い上げていると言っても過言ではありません。世界経済は縮小均衡に向かっているのに、カネの量だけは激増しつつあります。これでは一万円札の価値も目減りしてしまうでしょう。そこで、人間が勝手に刷ることがない「金」という無国籍通貨が浮上したのです。

国別公的金保有量 トップ10
(単位:トン)

    金の保有量
(金準備)
外貨準備に占める
金の割合
米国 8,133.5 79.9%
ドイツ 3,362.4 77.1%
IMF(国際通貨基金) 2,814.0 -
イタリア 2,451.8 72.9%
フランス 2,436.1 67.8%
ロシア 2,299.4 24.5%
中国 1,948.3 3.7%
スイス 1,040.0 6.8%
日本 765.2 3.5%
10 インド 664.2 7.8%

出典:IMF、WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)、2020年9月時点のデータをもとに筆者作成

歴史的に見てドルの誕生は1785年。対して世界最古の金貨は紀元前6-7世紀と言われることからドルは200年、金は2000年と言われます。通貨の世界では「ドル、ユーロ、円」などは新参者です。特にトランプ大統領が君臨する米国が発行する通貨=ドルへの信認が低下して、主要国は外貨準備としての金保有を増やしています。パパ・ママ投資家から、機関投資家、ヘッジファンド、年金基金、そして中央銀行と金の買い手は明確に拡大しています。

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豊島 逸夫

豊島&アソシエイツ代表

スイス銀行チューリッヒ・ニューヨークにて外国為替貴金属部トレーダーとなる。日本人として後にも先にもただ一人、ニューヨークとシカゴの商品先物取引所のフロア・トレーダーを経験。ワールド・ゴールド・カウンシルを経て、現在は豊島&アソシエイツ代表として自由な立場から本音でマーケットを説く。日経電子版マーケット面に「豊島逸夫の金のつぶやき」、日経マネーに「豊島逸夫の世界経済深層真理」連載中。

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