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[スペシャルインタビュー]米国大統領選で動く世界の商品市況 一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、シティグループ証券顧問 藤田勉氏

商品市況を見る上で、国際情勢は重要だが、とりわけ、米国の政治の影響は大きい。11月3日に実施された米国の大統領選挙は、ドナルド・トランプ大統領(共和党)とジョー・バイデン候補(民主党)の大接戦となり、バイデン氏が当選確実となった。しかしいまだトランプ大統領は敗北宣言をせず、完全決着まで時間がかかるかもしれない。以下、バイデン氏が次期大統領となり、上院は共和党、下院は民主党が過半数を得たと仮定して、米国の政治が商品市況にどのような影響を与えるかを分析する。

米国では、法案や予算案の提出はすべて議会の権限である。言い換えると、大統領には増税や財政支出を拡大する権限は全くない。今回の議会選挙では、下院では、民主党が多数を維持しているが、上院では、予想を覆して、共和党が過半数を維持する見通しである。

新型コロナウイルス感染症は勢いを増しており、米国経済は今後も厳しい状況が続くであろう。バイデン氏は、景気対策として、大型増税とそれを上回る財政支出を公約している。ところが、上院は共和党が多数であるだけに、これらは実現しない可能性が高い。

よって、景気刺激策は必然的に金融政策に依存せざるを得ない。言い換えると、現在の歴史的な金融緩和とゼロ金利政策が持続する可能性が高い。

これは、金価格に大いにプラスである。金は、配当も利息もない。よって、ゼロ金利であれば、債券を持っているのも、金を持っているのも、インカムゲインは同じくゼロである。

しかし、金利が上昇すれば、利息を得る目的で、金を売って債券を買う人が増えることがある。よって、他の条件を一定とすると、金利上昇は金価格にマイナス、逆に金利低下はプラスになることが多い。選挙後、こうした政治状況を受けて、米国の長期金利は低下し、そして、金価格は上昇した。

金先物価格(NY期近※)の推移

グラフ

出所:Astra Manager
※先物・オプションで取引できる限月のうち、最も近い限月のこと。

バイデン氏は、温暖化効果ガス削減を目指すパリ協定復帰を公約している。世界最大のエネルギー消費国である米国が温暖化効果ガスを大きく削減した場合、原油や石炭の需要が大きく減る可能性がある。このため、バイデン勝利は、原油などエネルギー価格に対してネガティブとなると考えられる。そして、エネルギー価格下落はインフレ率低下を通じて、長期金利を低下させる。これは、金価格上昇要因ともなる。

原油先物価格とCRB指数※の推移

グラフ

出所:Astra Manager
※米国の商品先物取引所などで売買されている商品価格から算出される国際商品先物指数

こうして、米国の選挙が、金や原油などの商品価格に大きな影響を与えることがある。それ以外にも、中東や中国などの政治状況も商品価格に対する影響が大きいので、併せてチェックしておきたい。

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藤田 勉

一橋大学大学院経営管理研究科特任教授、シティグループ証券顧問

一橋大学大学院修了、博士(経営法)。シティグループ証券取締役副会長、経済産業省企業価値研究会委員、内閣官房経済部市場動向研究会委員、北京大学日本研究センター特約研究員、慶應義塾大学講師などを歴任。2006~2010年日経アナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。著書:『三角合併とTOBのすべて』(金融財政事情研究会、2007年)、『上場会社法制の国際比較』(中央経済社、2010年)、『バーゼルIIIは日本の金融機関をどう変えるか―グローバル金融制度改革の本質』(日本経済新聞出版社、2011年)、『コーポレートガバナンス時代のROE戦略』(中央経済社、2016年)他多数。

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