提供:いーふらん

いーふらん鹿村大志社長が見据える 「おたからや」のグローバル展開 いーふらん鹿村大志社長が見据える 「おたからや」のグローバル展開

買取専門店「おたからや」を全国に1100店舗展開するいーふらんは買い取りビジネスの海外展開を図る。2024年春にはシンガポールに海外1号店を開き、順次他エリアにも出店を広げる予定だ。同社の鹿村大志社長は「買い取り業という日本独自のビジネスモデルを世界に広げ、お客様の利益最大化を追求していきたい」と抱負を語る。

シンガポールに海外1号店

シンガポールの目抜き通りのオーチャード通り沿いに、おたからや海外1号店となるシンガポール店が24年5月にオープンする。いーふらんはシンガポールを足掛かりに香港、台湾、タイ、インドネシアへとおたからやの出店を広げる予定だ。

おたからやはシンガポールから東南アジアに出店網を広げる予定だ(店舗外観はイメージ)

おたからやはシンガポールから東南アジアに出店網を広げる予定だ(店舗外観はイメージ)

おたからやが海外展開を加速する理由が2つある。1つは潜在市場の大きさだ。

買い取り店は今や日本国内では一般的だが、「海外では中古販売店が売り主の代理で売る委託販売が主流で、買い取り業は日本以外であまり見かけない」(鹿村氏)という。海外で買い取った商品を世界で流通させることで中古品の供給量が増え、貴重な商品を販売できる機会が増える。おたからやは既に海外44カ国・地域で取引実績があり、その流通ルートを活用できる。「海外には買い取りビジネスを広げる余地が大いにある」と鹿村氏は断言する。

海外進出の2つ目の理由は、社員に活躍の場を広げるためだ。24年度の新卒社員は250人弱。「若くてもやる気のある社員にはどんどんチャンスを与えたいが、国内だけだとそのステージが足りない」。社員研修を通じて高いスキルとモチベーションを持った社員に責任あるポストで働いてもらうことで人材の好循環を狙う。実際、シンガポール現地法人の代表は29歳だ。

自社運営のオークションが強み

数ある買い取り専門店の中でもおたからやは自社運営の市場「おたからやオークション」を抱えている点が特徴だ。同オークションに出品することで確実に売り切ることができ、在庫を抱えるリスクを抑えられる。

中古品の販売はオークションに参加している世界各国の中古販売業者に任せ、おたからやは買い取り業に注力。店舗内に販売スペースを設置したり販売員をそろえたりする必要がないため狭いテナントにも出店でき、スタッフは来店客の対応に専念できる。

店舗には査定に精通した査定士が多数在籍しており、出張買い取りにも対応。最新の相場を買い取り価格に反映することで顧客満足度の高い買い取りを実現している。また社内の資格制度や定期的なアフター研修制度を通じて、スタッフの知識のブラッシュアップと業務のスキルアップも図る。

いーふらん会社概要

本社所在地 神奈川県横浜市西区みなとみらい2丁目3-3
クイーンズタワーB15階
設立 2000年3月
資本金 4億8000万円
代表取締役社長 鹿村大志
従業員数 845人(2023年4月時点)
事業内容 買い取り業(神奈川県公安委員会 
許可 第451380001308号)

いーふらんはおたからやを国内1100店舗展開している

スタッフからたたき上げ社長に

前社長で現会長の渡辺喜久男氏は2000年にいーふらん創業と同時に、おたからや1号店を横浜市内に開業した。その後は着実に店舗網を広げ、21年には1000店を突破。鹿村氏は同年に渡辺氏からバトンを引き継ぐ形で社長に就任した。

鹿村氏は文字通りたたき上げの社長だ。幼いころに両親と離別し、親戚に育てられたが大学を中退。その後、勤めていた熱帯魚屋を辞めて途方に暮れていたある日、おたからやの「日給1万円」の求人広告に目が留まり、23歳の時におたからやのスタッフとして入社した。

すぐに買い取りビジネスの面白さに目覚めた鹿村氏。「もともと勉強好きだった」こともあり渡辺氏から教えを受け、FCの立ち上げや買い取り品の真贋(しんがん)を判断する部署の設置、直営店の営業指導などで次々と力を発揮した。こうした働きぶりと実績が評価され、ついにトップに上り詰めた。

直営店の指導をしていた頃に忘れられない出来事がある。ある日、ダイヤモンドを持ち込んだ来店客に対応したスタッフが、買い取り価格の相談のため本部へ問い合わせに来た時だ。当時、買い取り価格を決める社内のホットラインスタッフはダイヤモンドに関する情報に疎く、世界の相場に精通していなかった。たまたま居合わせた鹿村氏が本部スタッフに「買えそうですか」と尋ねたところ「お客様の希望価格が買い取り価格を上回るので無理です」。そう答えた。

鹿村氏は即座に本部スタッフに、世界中のダイヤモンドのバイヤーに片っ端から連絡を取って取引価格を上げさせるよう指示。同時に店舗スタッフには来店客に対して相場価格などを丁寧に説明するなど粘り強く交渉をさせた結果、買い取りにこぎつけた。「お客様の要望にできる限り応えられるよう力を尽くすのが我々の仕事。それを怠ったらおたからやの存在意義はない」。社長になった今も顧客に寄り添う重要性を社員に説き続ける。

そんな鹿村氏の座右の銘は、浄土真宗を開いた親鸞が9歳で得度した時に詠んだとされる「明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」。命を桜の花に例え、先送りにすることを戒める歌だ。鹿村氏は貧しい生活を経験したこともあり、「あしたやればいいといいかげんな気持ちでいると、絶好の機会を逃してしまう」と常に全力投球を自身に課す。

「接客レベルの高さが当社の強み」と鹿村氏

OTAKARAYAを世界に

海外展開を進めるおたからや。目指すは「OTAKARAYAを世界に」だ。まずは日本と地理的に近い東南アジアで出店数を増やし、将来は欧米への進出も視野に入れる。そのための布石を着々と打っている。1つはDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。

これまで人間の目や知識に頼ってきた不正品の判断や買値付けをAI(人工知能)に代行させるものだ。店舗で買い取り品をカメラ撮影してシステムに送信することで真贋(しんがん)の判断や買値を瞬時に判断できるため、海外店舗は日本の本部との時差を気にすることなくいつでも買い取り業務ができる。おたからや独自のシステムとして開発し、24年3月にベータ版としてリリース予定だ。

古物台帳の自動作成システムも開発中だ。中古品の取引時には古物台帳の作成・管理が必須だが、記載が煩雑でこれまでは人が記入していた。この作業を自動化することで社員は人間にしかできない業務に集中でき、生産性向上に寄与する。

いーふらんでは若手社員が多く活躍している

いーふらんでは若手社員が多く活躍している

陣容拡大に向けたスタッフの採用にも力を入れる。「当社は接客業が中心なので女性にももっと来てほしい」と鹿村氏。産休・育休から復帰した社員も活躍しており、営業成績上位者には女性が多いという。

社員の育成はおたからやの強みだ。定期的な研修やロールプレーイングで社員の接客対応のスキルを向上させるため、接客の向き・不向きは関係ないという。

おたからやからOTAKARAYAへ――。日本独自の「おもてなし」を武器に、いーふらんのこれからのグローバル展開に注目だ。

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