和食は食材選びが肝心
豊かな山林を有し、四方を海に囲まれた日本は、水にもとても恵まれた国です。自然の恵みに支えられた和食は、食材を選べばシンプルな調理で十分おいしい料理が作れると私は考えています。
私は女性でも活躍ができることと、食を通じての健康に興味があったことから栄養士を目指していました。その後、さまざまなジャンルの料理を学んでいく中で、和食は「体に負担がかからずやさしい」と感じることが多かったため、和食をもっと深めたいと思い、料理人の道を選び、今に至ります。

和食は「手間がかかる」と聞きますが、良い食材であれば、塩を振って焼くだけで、十分おいしい料理になります。和食の9割は、食材選びで決まるといっても過言ではありません。
一見、難しそうに思える食材選びですが、これもシンプルで「今たくさん安く売っているものを選ぶ」と意識すればかなり楽になります。旬を迎えた食材はたくさん出回り、価格が安くなっている場合が多いからです。ただし「安い」といっても、鮮度には注意しましょう。新鮮な食材であれば最低限の下処理で済み、旨みも逃げず、素材から出るだしで豊かな味が楽しめます。一方、鮮度が落ちたものは、臭みや雑みを取るために手を加えなくてなりません。食材の良し悪しは調理の手間にも影響するのです。
魚であれば血合いが黒ずんでいるものや、身の色が黄みを帯びたものは避けましょう。「この魚が旬だったな」と買いに行っても、その年により多少、取れる時期が変動します。プロであるお店の人に、お勧めを聞いて食材を選ぶのが一番です。

旬を意識した食材選びを始めると、四季の移ろいにも目が向くようになります。加えて「例年よりこの食材は出荷ペースが早いな」とか「流通量が少ないせいか値段が上がっている」という実感から、地球規模の環境変動に気が付くこともあります。寒い冬には温かいものを、暑い夏には冷たいものを提供する和食は、日本の美しい四季や自然と共にあることを実感できる素晴らしい食文化です。