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特集:2022年下期の消費トレンド予測

消費の原動力は「コト」から「意味」へ

2022/09/17

2022年上半期はこれまでの巣ごもり消費から一転し、外食やレジャー、旅行など活動的な消費が活発化した。最高益を更新する大手小売りが相次ぐなか下半期のトレンド傾向にも注目が集まる。世代・トレンド評論家の牛窪恵氏に上半期消費の振り返りと、これからブレイクが期待される消費傾向について話を聞いた。

 上半期のキーワードは「健康」と「ハレの日」 

2022年上半期の消費トレンドで私が注目しているのは「健康ルーティン」と「ハレの日消費」です。

出社の回数が戻ってきたことで、朝と夜の健康を意識したルーティン消費が増えています。朝のケアとしてオートミールやサプリメントなどが人気を博し、夜のケアでヒットしているのが睡眠関連商品です。外出頻度が高まる新たな生活スタイルを健康的に過ごそうとする傾向が見えてきます。コロナ禍で社会全体の健康志向が高まったことで、多彩な用途に向けたサプリメントや健康食品が市場に揃い、スポーツジムなどもカリキュラムやメニュー、時間帯が細分化しました。自分に合った健康ルーティンをオンラインでも手に入れられる環境が整っています。

そして、3月21日にまん延防止等重点措置が解除されると会食や旅行の消費が一気に伸び、それに伴い口紅や帽子、カバン、時計などの売れ行きが増えました。注目すべきは高額商品やこだわりグッズなどが好調なこと。我慢を強いられてきたことへの反動もありますが、在宅ワーク中に自分磨きに目覚めた人が増えたことが消費意欲の大きな原動力になっていると思います。オンライン会議などで自分の顔をじっくり見る機会が増え、家族と家で過ごす時間が長くなれば、子どもたちがファッションや髪型などに意見を言うこともあるはずです。特にコロナ禍にネットショッピングを覚えたシニア男性の美意識はますます高まっていくと思います。

 SDGs関連商品が新たな消費をリード 

私は、活動的になった今の消費トレンドが、下半期に向けてメリハリのあるものに変化していくと予測しています。エネルギー危機や値上げといった不安要素が日ごろの節約志向を促す一方、旅行に出掛けられるチャンスには着飾って楽しみ、省工ネ家電やスマート家電、リフォームなど家の快適さにもしっかりお金を使うといった消費スタイルが主流になると見ています。

また、これからの消費をリードするのは環境やエシカルに配慮したSDGs関連の商品やサービスです。そうした教育を受けて育った若い世代だけでなく、コロナ禍で中高年層のSDGs志向も強くなってきました。これは「モノ消費」や「コト消費」から「意味消費」への進化だと思います。すなわち、商品やサービスの購入前から「意味」を考え、リサイクルが前提なら資源の無駄を滅らせる、フェアトレードの商品なら産地の人々への応援につながる、地産地消なら配送時のCO2を削減できる、などと考える。こうした「消費の意味」を追求する意識は確実に高まっています。

 アップデートと共創で進化する商品・サービス 

スマホやアプリを使いこなす若者たちが消費に期待していることは「アップデート」と「共創」です。

人気のスマート家電などもSNS(交流サイト)でつぶやいた意見がソフトに反映されて進化(アップデート)します。コロナ禍で伸長したクラウドファンディングでは多くの若者たちが地元やふるさとの飲食店にアイデアや意見を出しながら支援(共創)していました。

食品メーカーや流通も意味消費をリードしています。ホームページやSNSで、新たなメニュー提案やユーザーによるユニークな調味料の使い方などを発信する。すると、企業は自社商品の使用回数を増やせますし、消費者も前日の残りものを有効活用できて、節約や食品ロスの削減につながります。これら一連の流れに多彩な「意味」を感じてもらうことで、企業は結果的に商品の購買頻度を上げられるのです。

世代・トレンド評論家、マーケティングライター
牛窪恵さん

1968年東京生まれ。91年日本大学芸術学部・映画学科(脚本)卒。大手出版社に勤務したのち、2001年にマーケティングを中心に行うインフィニティ(東京・豊島)を設立、同代表取締役。19年立教大学大学院で経営管理学修士号(MBA)取得。世代・トレンド評論家のほか、マーケティングライター、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科客員教授などマルチな肩書を持ち、官公庁の審議会などの委員も多数務める。著書やテレビ出演を通じ、「おひとりさま」「草食系(男子)」などの言葉を世に広めた。

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