提供:NIKKEI Realestate Summit 2023特集

都市の未来を展望する大型サミット NIKKEI Real Estate Summit 2023

不動産の力で、
社会課題を超えていく

日本経済を再び上昇基調に乗せるために不動産が果たす役割とは。生活者の価値観やライフスタイルがますます多様化し、また様々な社会課題が顕在化する中で、日本の不動産業界はどのように対応していくのか。

#05 その他講演(木材利用) 脱炭素時代における木材利用促進の重要性

基調講演進めよう!ウッド・チェンジ~都市(まち)の⽊造化に向けて~

林野庁 林政部 木材利用課 建築物木材利用促進官五味 亮

森林資源の循環加速 「使う」強化で

二酸化炭素(CO2)削減や若い森林の造成には「伐採する」「使う」「植える」の循環維持が重要だ。とくに、サイクルのエンジンである「使う」ことの強化が「カーボンニュートラル」の実現につながる。

森林資源の循環利用のサイクル
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木造・木質化のメリットは環境面だけではない。例えばビジネス面では、利用者の増加や建築コスト削減、工期短縮が期待できる。また、ストレス軽減や睡眠の質向上への効果を示すデータもある。

林野庁では、新たな森林・林業基本計画の一つとして「都市等における『第2の森林』づくり」を挙げ、都市の中高層建築物や非住宅分野の木造・木質化を推進している。様々な場面に木を取り入れる「ウッド・チェンジ」普及に向け、優れた木材の技術開発や普及、先端デジタル技術の導入等に官民一体で取り組む所存だ。

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NIKKEI CHANNEL木材利用 基調講演
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企業講演木材利用促進と森林の循環利用に向けた取り組み

ナイス 上席執行役員
資材事業本部 副本部長髙木 靖

ナイス 執行役員
資材事業本部 木造建設事業部長遠藤 雅宏

木材の循環型サプライチェーン構築へ

髙木 世界的な環境意識の高まりや、2021年のウッドショックによる輸入材不足を経た現状は、国産材の利用促進に好機といえる。

同年の建築用材などの自給率は48.0パーセントと増加傾向にあるものの、輸入への依存度が高い。外的要因の影響を抑えるため、国産材にシフトする企業も増え始めた。また、日本は森林面積が国土の6割以上を占める世界有数の「森林大国」だが、実際の利用量は半分程度しかなく、森林の高齢化や荒廃が課題となっている。ナイスでは流通体制の整備だけでなく、伐採適齢期を過ぎた大径木の有効活用や森林施業チームの立ち上げで、森林再生にも取り組んでいる。相場に左右されない供給網の確立と、付加価値の高い国産材の販売、そして山林への利益還元が、木材の循環型サプライチェーン構築を支えるだろう。

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遠藤 国産材利用促進のカギとなるのは非住宅建築物の木造・木質化だ。国内低層住宅の木造化率は8割以上と高水準な一方、非住宅分野では1割以下に留まり、需要拡大の余地がある。

非住宅の木造・木質化は「情報」「構造設計」「木材調達」「生産加工」「施工」の5工程に分けられる。顧客ごとに最適化された事業提案を行うには、蓄積されたノウハウと企業ネットワークを生かした総合的なサポートが欠かせない。ナイスではこれらを「ウッドビルディング ネットワーク」と定義し、流通網を生かしたスムーズな木材調達や加工・施工における同業連携、適材適所の工法提案などで、個々のニーズに合わせた木造・木質化を実現している。

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NIKKEI CHANNEL木材利用 企業講演
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#05 その他講演(企業講演) 企業の代表による登壇の様子

企業講演タカラレーベン不動産投資法人の取組みについて

タカラレーベン不動産投資法人 執行役員宰田 哲男

地域ナンバーワン物件を取得

国内の不動産投資信託(J-REIT)は2000年の制度開始以来、01年の米同時多発テロや07年のリーマン・ショックによる一時的な下落も乗り越え、順調に市場を拡大してきた。足元では、オフィスの需給バランスが崩れる「2023年問題」によるテナント不足や賃料下落が懸念されているものの、長期的には堅調な伸びが続くと見られる。

とはいえ、短期的な動向へのアクションも疎かにはできない。コロナ禍ではREIT全体の価格が下落傾向にあった。タカラレーベン不動産投資法人ではリスクが顕在化した案件の売却を図りながら、積極的な投資を進めて資産規模の拡大を目指した。また、東名阪、福岡の4大経済圏での運用はもちろん、松山や盛岡、尾道への分散投資も行う。各地域のナンバーワンホテル・商業施設の取得も行うことで、時勢に飲み込まれない着実な成長が望めるのだ。

J-REIT時価総額・上場銘柄数の推移
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NIKKEI CHANNEL企業講演 タカラレーベン不動産投資法人
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企業講演インフレ環境下だからこそ、確信度の高い不動産投資を

ブラックストーン・グループ・ジャパン
代表取締役 不動産部門代表橘田 大輔

成長を見込むセクターとテーマの見極め

40年ぶりに訪れたインフレ環境。不動産投資は、適切なセクターやテーマに投資すれば、環境変化が激しい時代にも優れた投資先となり得る。特にキャッシュフローが大きく伸びるセクターに注目し、物流や賃貸住宅など、賃貸期間が短く、需給のファンダメンタルズの強固さと、インフレ率を上回る安定したキャッシュフロー成長が見込めるセクターがそれにあたる。また、国内外の観光客の増加に支えられているホテルやデータセンターなどの分野にも注目したい。日本は比較的低金利であり、魅力的な不動産投資の機会を多く創出していると考える。

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NIKKEI CHANNEL企業講演 ブラックストーン・グループ・ジャパン
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企業講演これからのオフィス戦略~多様な働き方とセンターオフィス~

三菱地所 フレキシブル・ワークスペース事業部 ユニットリーダー
日本リージャスホールディングス 代表取締役 副社長 CFO
テレキューブサービス 取締役玉木 慶介

共創で四方良しのビジネスを

世界的なインフレや価値観の多様化。激動の不動産市場を、企業はどう乗り越えるのか。日本経済新聞社は2023年2月17日、都市の未来を展望する「リアルエステートサミット」を都内会場とオンラインのハイブリッド形式で開催。同業他社や異業種との共創による、「四方良し」の価値創造の重要性が説かれた。

様々な企業が新型コロナウイルス下での新しい働き方を模索してきたが、その答えの一つとして、出社や在宅勤務などを組み合わせる「ハイブリッドワーク」が定着しつつある。今後はより高い付加価値の創出を目指し、働く場の選択と集中を進めるフェーズとなるだろう。

センターオフィスには組織のコアとして、働く場所や人同士をつなぐ「ハブ拠点」の役割がこれまで以上に求められる。リモートワークの遠心力は会社への帰属意識を薄れさせた。働きやすさを損なわず、求心力も高めるには「立地(交通網)」や「ソフト(他企業)」を集積した、出社したくなる本社オフィスづくりが重要となる。

働く場の多様化はビジネスチャンスでもある。いかに付加価値の高い場所を提供するか。多様化が進むニーズに応えるには、従来の単純な資本集約型事業モデルから進化しなくてはならない。具体的には、自社の強みを改めて認識、活用することに加え、企業の集積やIT(情報技術)、知財など、従来の不動産ビジネスにはなかった観点を自社の強みに変える必要がある。そして、これを実現するためには同業他社や異業種と新たな価値を共創する関係を構築することが肝要である。サービスの買い手企業と売り手企業、社会、そして実際に施設を利用する企業従業員のいずれも損失を被らない「四方良し」のビジネスが、真の付加価値創造につながると考える。

働き方の多様化を契機に、
有機的な人とのつながりを
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組織のコア「センターオフィス」は、企業のリソースを集めるための
ハブ拠点としての役割をさらに強化する必要がある
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NIKKEI CHANNEL企業講演 三菱地所
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