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いま改めて問う、組織変革の方法

DX時代に一歩先行く
業務改革手法とは

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提供:ServiceNow Japan合同会社

いまや世界共通語の1つとして知られる「カイゼン」。業務やプロセスを見直す言葉として世界中で認められた概念が、企業活動にとっては裏目に出ることがあると言われたら信じられるだろうか。もちろん、カイゼンの有効性はいまだに健在だが、デジタルトランスフォーメーション(DX)が叫ばれる今日、カイゼンの概念そのものも時代に合わせてアップデートしていかなければならない。ServiceNowが探求する本企画で、デジタル時代だからこそ求められるこれからのアプローチについて紹介する。

かつての輝きを失った日本企業のカイゼンの力

 これまで日本企業が世界に冠たるプレゼンスを発揮してきた原動力となっていたのが、“カイゼン”の力である。現場レベルで日々創意工夫を繰り返しながら作業の無駄を省く取り組みを指し、より良いものを追求する継続的なカイゼンは、戦後「安かろう、悪かろう」と酷評されてきた日本製品のブランド力を一気に向上させた。1960年代から70年代の製造業の変革のみならず、日本の高度成長をも支えてきた経営哲学である。

 カイゼンの理念は、80年代から90年代にかけて経営管理手法の“お手本”として世界に広がり、さらなる進化を遂げる。これまでボトムアップ型の暗黙知に基づいて行われていた日本のカイゼンをトップダウン型に改編していき、欧米でもメジャーな品質・生産性向上の手法として普及。多くの製造企業に採用されるに至った。このように日本の製造業を発祥とするカイゼンは、世界中の企業の経営に絶大な影響を及ぼしてきたのは間違いない。

 ところが現代ではどうだろうか。残念ながら日本の製造業は、欧米の先進諸国はもとより中国や韓国、台湾などアジアの製造業からも激しい追い上げを受け、一部のハイテク製品はすでに後塵を拝しており、かつての輝きを失いつつあるのが現実だ。

 どうしてこのような状況となってしまったのか。その要因を一言で言い表すのは困難である。だが要因の1つとして、日本企業がひたすら追求して過度に依存してきたこのカイゼンに、意外な“落とし穴”が存在することに注意しなければならない。

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抜本的な改革が求められる環境の変化

 従来のように「良い製品を作れば売れる」時代が続いていたならば、日本企業のカイゼンは大きなアドバンテージであり続けただろう。

 しかしこの10年で、日本も含めて世界のビジネス環境は激変した。米国や中国を筆頭とするITプラットフォーマーはディスラプター(創造的破壊者)と呼ばれ、デジタル技術を活用することで新しい商品やサービスを猛烈なスピードで展開するようになった。

 企業はデジタルを活用したビジネスプロセスを刷新することで飛躍的な業務効率化を図り、イノベーションを加速するための新しいサービスの開発に注力していく必要がある。いわゆるDXを実現できなければ、競争力を失って収益が激減し、倒産や同業他社による買収を余儀なくされてしまうなど、深刻な事態を招きかねない状況となっているのだ。

 ところが多くの日本企業は、いまだにこうした世界の潮流への対応が遅れている。もちろんDXの導入をまったく無視しているわけではなく、例えば帳票の電子化といった各種取り組みはある程度進んでいる。ただし、それらの大半は単にアナログで行ってきた個々のプロセスをデジタル化して効率化するだけの「デジタイゼーション」にとどまっている。抜本的な変革に向けた投資から目を背け、既存の業務プロセスや生産プロセスに対して従来のカイゼンの手法を適用しているにすぎないというケースが散見されている。

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旧来型カイゼンから変革が生まれない理由

 従来通りカイゼンだけを続けることが自社の改革につながると信じるビジネスリーダーも多いかもしれない。確かにその取り組みは、チームや部門の生産性・効率性向上を着実に進める有効な手段として一定の成果を上げてきた。ところが逆説的なことに、これはカイゼンのデメリットにもなり得るのである。

 例えば、カイゼン活動と情報システムやデジタル技術の関連性に目を向けてみよう。情報システム部門がカイゼン活動の一環としてチームやユニットレベルでの業務改善を支える仕組みを検討した結果、各チームが持つ固有のプロセスに最適化されたシステムやインフラが構築されてしまうという問題が見られる。そこではいくつかの弊害が生じる。

 1つに、業務改善活動がチームやユニットレベルで行われるようになると、企業全体を俯瞰(ふかん)した業務最適化の議論がなされにくくなることだ。カイゼンでは、既存の業務内容や業務プロセスを「いかに早く、いかに効率的に処理できるか」を追求し、漸進な進化が可能になる。しかしカイゼンの中で、「この業務プロセスはそもそも本当に必要なのか」「このプロセスは他のプロセスとどのように連携しているのか」といった議論がなされることはあまりない。

 さらに、カイゼン活動の評価は、事業部と組織全体の関係性からではなく、あくまで部門や個人レベルの視点でなされることが一般的だ。つまりカイゼンを進める部門は、組織という大局的な視点から自身の業務を見直したり、前提を覆したりすることはないのである。

 つまりカイゼンの取り組みでは「この業務プロセスの結果、自社が利益を得ることができるのか」が問われることは少ない。しかし、ディスラプターとの競争を勝ち抜くには、先述したように全社的なビジネスプロセスを含む抜本的な刷新を行い、ゲームチェンジャーとなるような新サービスを市場に展開する必要がある。いくら個々のチームが高い業務効率を実現したとしても、組織の全体最適としてITシステム、チーム、プロセスがつながっていない限り、製品の迅速な市場投入や顧客対応を含むさまざまな局面で業務の高度化は困難だと言えるだろう。

直線的なカイゼンからの脱却を図る
「ハイパーオートメーション」へ

 このように、これまでのカイゼンは過去の経験を積み上げた延長線で行われているため、前述したようなディスラプターによって市場そのもののゲームチェンジが行われてしまうと、変化に対応するのは困難となる。

 もっとも、誤解ないように補足すると、DX時代にカイゼンが完全に不要になるということではない。抜本的な変革に向けた取り組みを本格化するときに、これまで自社が行ってきたカイゼンを新しい形へさらにアップデートする必要があるということだ。言い換えれば、組織の中でカイゼンの議論がなされるとき、それが何を意味しているのか、何を目的としているのか、どうすればこれまでのカイゼンが進化につながるのかを、再考すべき時がきている。

 従来型のカイゼンだけに取り組むことが組織全体の変革やDXにつながりにくいのであれば、「どのようなアプローチで業務の進化を図っていけばよいのか」と疑問に思う方もいるだろう。この疑問に対する解の1つの提案として言及したいのが、米国の調査会社、ガートナーが2019年に提唱した「ハイパーオートメーション」のコンセプトである。

 ガートナーによると、ハイパーオートメーションとは単なる特定の業務の自動化ではなく、多様な技術要素を組み合わせることで、可能な限り多くのビジネスプロセスやITプロセスを検証し、自動化しようとするというものだ。

 具体的には、例えば人工知能(AI)・機械学習やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、ビジネスプロセス管理、意思決定支援システムといった最新テクノロジーを用いて、組織を横断する複雑な業務にもインテリジェンスと自動化を拡張する。つまり、個別最適の業務改善ではなく、組織における全体最適の視点から業務を変革するポテンシャルを秘めているとも言えるだろう。

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ハイパーオートメーションは経営層意思決定にも影響

 カイゼンの弊害として、組織や業務プロセスの部分最適について先に触れたが、これはいわゆるサイロ化の課題とも言い換えられる。組織が成長する中で、局所的な最適化や特定機能が必要となるケースがある。しかし、本当に効率的に業務を遂行したいのであれば、まず情報・データの共有を組織横断型で行えるようにするために複数の部門がそれぞれ独自に抱えるテクノロジースタックを統合するプラットフォームを確立する必要がある。

 このプラットフォームを活用して、「Future of Work(未来の働き方)」あるいは「Enterprise of Future(未来の企業のあり方)」へと導くのがハイパーオートメーションだ。先に述べたような最新テクノロジーをこのプラットフォームに実装することで、業務プロセスの連動性の向上やリアルタイムでの保有データや情報のアップデートを社内にもたらし、繰り返し手作業でやるような業務やプロセスをすべて自動化できるようになる。生産性を究極に高め、プロセスに対する可視性が向上し、人為的ミスの減少などによってリスクを軽減できるようになり、その結果として市場の変化へ俊敏に対応できるようになる。さらには、経営層は最新データや情報をもとにビジネス現状やリスクを把握した上で経営判断を行い、業務変革に取り組むことができる。

 業務変革を推進する中で、多くの場合、「プロセスが何であるか」を理解することから始まる。冒頭で現代におけるカイゼンの課題を指摘したが、プロセスの定義は一般的にカイゼンの取り組みによってなされている。その意味で、カイゼンも21世紀のDXに寄与している。

高度な技術がもたらす、かつてない業務自動化の例

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 AIや、プロセスオートメーション、機械学習など先ほど触れたような最新テクノロジーは、実際にハイパーオートメーションの中でどのように機能するのか、一例を挙げてみたい。例えば取引拡大を期待している顧客の与信審査の過程で、AI、仮想エージェント技術を適用して、AIがより適切なチェック項目を策定し、評価することで、顧客情報を正確かつ効率的に確認した上で審査を進めることが可能になる。

 そして、そのデータをもとに、AI、プロセスオートメーション、機械学習がその顧客にどのようなサービス(取引内容や規模など)を提供すべきかデータドリブンな分析によってプロポーザルを作り上げることが可能となる。

 また、自動化された標準オーケストレーションを活用して、審査作業を行うリソースの適切な割り当てや、情報を処理するすべてのシステムやデータベースとの統合による円滑な情報の収集、承認プロセスを実行することになる。

 最後に、すべての業務処理をトラッキングし、報告することで終了するのではなく、プロセスオートメーションで市場トレンドを理解して予測し、従来のやり方を向上させるために何をする必要があるかといった提案が機械学習によって行われる。これらすべてが整ったら、そのプロセス全体をマイニングし、対象プロセスを特定し、自動化することになる。

 これが、ハイパーオートメーションをフル活用して実現する流れの一例である。

経営層はAIへの「適切な問いかけ」必要になる

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 現実には、世界はかつてないほど複雑になっており、組織は非常にダイナミックな環境でこれまで以上のスピードで順応していく必要がある。言い換えれば、企業がかつてないほどのリスクを抱える世界に直面する中、ディスラプターなどあらゆる外的競合要因よりいかに先手を打ち出せるかが重要である。デジタル化の進化形とも言えるハイパーオートメーションこそがそれに対するソリューションを提供し、組織が生き抜くために必要な俊敏性を可能にする。

 適切な情報を、適切な人に、適切なタイミングで、そしてリスクの可能性も加味しながら経営判断を行う。これらのリスク情報に基づいた意思決定は、この不確実な環境をナビゲートし、ビジネスチャンスが訪れたときにそれを確実につかみ、企業のポジショニングを確立する。不確実性に機敏に対応するのに役立つフィードバックループを作成し、デジタル化すればするほど、点と点をつなぎ、機会になり得る不確実性を見つける能力が向上する。

 デジタルテクノロジーを駆使して業務に新たな価値を加えるデジタライゼーションを推進することで競争を勝ち抜く企業を作り上げ、21世紀のビジネスを主導し、進化させ、加速することが経営層の役割だ。

 経営層が最新のテクノロジーに支えられた最新データや情報にアクセスし、目標をAI対応マシンにフィードするだけで、その目標を達成するために必要なアプローチ手段やプロセスが提示される。もちろん、正しい情報をフィードしなければ必要な情報を得ることはできない。

 例えば経営層向けダッシュボードのNLU(自然言語理解)対応の仮想エージェントに、「生産量を5%増やすにはどうすればいいですか?」と入力すると「従業員をこれまでより5%多くの時間働かせましょう」といった非現実的な回答が返る可能性があるということだ。いかにテクノロジーが洗練されていても、ビジネスリーダーは要求のパラメーターを理解する必要がある。

 この例におけるCEOの適切な問い掛けは、「現在の従業員満足度スコアを維持しながら、生産量を5%増やすにはどうすれば良いですか?」となる。そうするとCEOに対して、例えば、「予算を大幅に増やすことなく、従業員の満足度を維持するには、3%の生産性向上が限界となり、自動化を加速させることで5%も不可能ではなく……」と言った回答になると考えられる。

 その計画の実現可能性を検討する上で、予測インテリジェンスと高度な計算モデルを使用してシナリオと仮説を作り上げ、最終的に、マシンが架空のモデルを実行し、可能な結果を示し、さらにはプロセスを提案することまでも、今のテクノロジーを持ってすれば可能である。しかし、決定しなければならないのは依然として人間である私たちだ。

 すでに、テクノロジーが変化を生み出し、それらのテクノロジーを実装できる場所にたどり着いている。しかし、これらのテクノロジーを最大限に有効活用するためには、これまで以上に創造的に考え、マシンが提供する知識(情報)をベースに、企業での運営方法へ大きな影響を与える意思決定を行う必要がある。

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