提供:ServiceNow Japan合同会社

コミュニケーションと意思決定を統合する全社最適システム

メルカリが考える急成長の原動力は
最高の従業員体験

株式会社メルカリ
コーポレート システム
エンジニアリング
清川 哲也 氏
株式会社メルカリ
コーポレート システム
エンジニアリング
小松 武弘 氏

国内最大級のフリマアプリとして、今や圧倒的な知名度と絶大な支持を得ている「メルカリ」。2013年のサービス開始以来、一貫して成長を続けるメルカリは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションのもと、テクノロジーの力によって世界中の個人と個人をつなぐ社会を築いていこうとしている。同社はなぜ良いサービスを生み出せるのか。その原動力の1つが、「最高の従業員体験」を提供するために構築された全社最適のデジタルワークフローである。

わずか10年圧倒的な事業成長

 個人同士が簡単にモノを売り買いできる国内最大級のフリマアプリとして、今やすっかり人々の生活に定着した「メルカリ」。同マーケットプレイスの企画・開発・運営を行っている株式会社メルカリは、現在では金融事業(キャッシュレス決済)のメルペイ、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行っているメルコイン、インターネットサービスのソウゾウ、物流サービスのメルロジといったグループ会社を設立して事業の多角化を進めるほか、フリマアプリ事業を米国にも展開するなどグローバル化を進めている。

 これらの事業の連結決算(22年6月期)における売上高は1470億円に達しており、創業からのわずか10年足らずで急成長を遂げてきた。

 そんなメルカリの成長の背景にあるのが、「D&I」(ダイバーシティー&インクルージョン:多様性と受容)を理念とする人材戦略だ。

 メルカリ システムエンジニアリングの清川哲也氏は、「日本でも今、日本のフリマアプリ事業に携わるエンジニアの約半数が外国籍の人材で、国籍やジェンダーを問わずに活躍できる場を増やしています。多様な意見やアイデアが出ることで、多様なお客様に受け入れていただけるプロダクトやサービスを具現化していくことができます」と語る。

 また同社のコーポレートシステムエンジニアリングの小松武弘氏も、「実際にトップダウンの指示によって何かの物事が決まることは全くありません。全員の合意を形成していく民主的なプロセスや、コミュニケーションをとても重視しているのがメルカリという会社です」と語る。

写真:清川 氏

株式会社メルカリ
コーポレート システム エンジニアリング
清川 哲也 氏

最高の従業員体験こそが最高のプロダクトを実現する

 多様性と柔軟性、民主性を大事とするメルカリの企業カルチャーは非常に魅力的だが、その働き方はどうだろうか。

 この企業カルチャーを働き方に反映するためにメルカリが追求しているのが、「最高のプロダクトエクスペリエンス実現のために、最高のエンプロイーエクスペリエンス(従業員体験)を実現する」というコーポレートエンジニアリングのビジョンだ。

 ここでいう最高の従業員体験とは、従業員が日常的に接する社内のシステム環境に焦点を当てたもので、メルカリでは「ストレスなく必要な情報にアクセスできる」「システム、データがなめらかにつながり、必要な社員/組織が必要なデータに規律をもってなめらかにアクセスができる」「なめらかなデータをもとにした各種計画や振り返りの仕組みを柔軟かつ大胆に設計できる」といった条件を示している。

 もっとも、そうした従業員体験を一朝一夕に実現できたわけではない。

 「これまで各種申請・承認・問い合わせはシステム統合されておらず、業務ごとに個別最適化していました。そのため、複数の部門にまたがり多段階の承認を伴う申請や問い合わせを行う場合、プロセスが分断され非効率だったのです。さらに、その一連のワークフローによって行われた意思決定は、別のツール上で行っている日常のコミュニケーションとも分断していることが課題でした」と清川氏は振り返る。

写真:小松 氏

株式会社メルカリ
コーポレート システム エンジニアリング
小松 武弘 氏

ServiceNowをプラットフォームとして
コミュニケーションと意思決定を統合

 こうした課題を解決すべくメルカリが導入したのがServiceNowである。これは社内に存在するサイロ化された申請・承認のプロセスを全体最適化するデジタルワークフローを実現するためのソリューションだ。既存で使っている複数のシステムをServiceNow上で統合することで、部門を横断する申請・承認プロセスでも高度な自動化が可能になる。

 メルカリの社内では日常的なコミュニケーションツールとして、ビジネスチャットをフル活用している。これをServiceNowと密に連携することで、従業員が煩わしさを感じる温床となっていた申請・承認のプロセス、さらにはその前段階で行われる問い合わせや上長との相談といったものも、すべてこのビジネスチャットツール上で完結させ、スムーズに業務を遂行する環境を構築したいと考えたのだ。

 「とにかく従業員のストレスを減らしたかったのです。やりたいことがあるのに申請の手続きが煩わしく、次のステップに進めない。あるいは、申請したのにいつまで待っても承認されないといった障壁をなくしたいと考えました。上長にとっても部下からビジネスチャット上で相談を受けたり、提案を受けたりした後、それを承認して先に進めたいとなった場合、別のシステムに切り替えることなくそのままチャット上で部下から申請を受け取ることができれば、思考を中断することなくその場で承認ボタンを押すだけで前へ進めることができます。コミュニケーションと意思決定の場を統合することを大きく目標として掲げました」(清川氏)

 こうしてメルカリは、特に利用頻度の高い問い合わせや申請・承認プロセスを、ServiceNowを活用した新たなシステムで刷新していった。その一例として取引先申請・発注・検収・請求から支払いまで、契約に関わる一連のフローをプロセスから見直しを図った。

 しかもこうした各種申請・承認はビジネスチャットと連携することで同ツール上から行うことができ、部門横断の一貫したデジタルワークフローとして処理される。

 また、同社ではServiceNowによって、社内の各種手続きに関する手順や規約、ナレッジをまとめた社内ポータルサイト「merportal」(メルポータル)を再構築。もちろんここからでも必要な申請・承認を行うことができるようになっている。

画面:merportal

総務・経理・人事など、業務全般に関する手続き・申請から各種社内規約などをナレッジサイトとして統合した「merportal」。これもServiceNowで構築している

申請から承認までに要する時間を
2日からわずか4分に短縮

 アプリの開発を主導してきた小松氏はこう語る。

 「絶対に避けたかったのは、アプリをリリースしたあとからユーザーの不満が次々に噴出し、誰にも使われなくなってしまうことです。その意味でも大きな鍵を握っているのがアプリの見た目のイメージや使い勝手など、いわゆるUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の部分です。できるだけ早いうちにユーザーの多様な要望を洗い出すべく、開発の初期段階から業務側の担当者を巻き込んでプロトタイプづくりを繰り返し、意見のすり合わせを行ってきました」

 これが奏功して、従業員が積極的に使いたいと思うアプリができ上がった。もちろん今後も新たに寄せられた要望やアイデアを取り入れながら、アプリの機能やUI/UXのさらなるブラッシュアップを図っていく考えだ。

 そしてこのアプリによって実現されたデジタルワークフローにより、「申請から承認までに要する時間はこれまで2日ほどかかっていたものが4分程度にまで短縮されています」と小松氏は指摘する。ちなみにこの4分間とは、直近に行われた3000申請における所要時間の平均値である。

 さらに申請書を入力する際に、繰り返し入力するような基本情報は関連するさまざまな業務システムなどから最新データが自動入力される。こうした優れたUXを備えたシステムを活用することで、従業員は煩雑な作業から解放され、本来注力すべき業務に専念できるというわけだ。

図:ServiceNowの導入効果図:ServiceNowの導入効果

ServiceNowの導入効果。申請・承認の高速化、ナレッジの提供、UX向上などで従業員体験を強化

より最適化された業務プロセスを目指す

 もっともやるべきことはまだ数多く残っている。確かにシンプルで使いやすいUI/UXを実現し、今後もさらなる改善が進んでいく一方で、求められるのは業務プロセスそのものの洗練化である。

 「既存の業務プロセスにおいて意思決定を阻害するボトルネックとなっているのはどこなのか、そもそもその業務プロセスは必要なのかといったところまで踏み込むプロセスマイニングを通じて、より根本的な問題を解決していく必要があります。その上で全社のあらゆるデータとプロセスをServiceNowに集約し、“なめらかな業務”を実現したいと考えています」と清川氏は今後を見据える。

 優れたプロダクトは優れた人材やチームから生まれる。煩わしい業務を一掃し、価値を生み出すことにフォーカスするために「最高の従業員体験」を提供する、メルカリの絶え間ないチャレンジは今後も続いていく。

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