NIKKEI 100年の資産形成

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2021年資産形成の好手 今年の一手 2021年 資産形成の好手 最新トピックス

UPDATE:2021.01.01(Fri.)

 国民の安定的な資産形成に向け、金融機関は“顧客本位の業務運営”の実現に取り組んでいる。また、今回の新型コロナウイルス感染拡大が契機となり、デジタル化も着実に進んでいる。では個人投資家にはどのような影響があるのかをあらためて見ていきたい。

金融機関はもっと信頼できる側近に FD

顧客本位の促進に向けた新たな具体策も登場

第三者が金融機関を
評価する仕組みも

 NISAの登場やiDeCoの加入対象者拡大など個人の投資環境が整う中、金融庁が金融機関に対して「フィデューシャリー・デューティー(FD:顧客本位の業務運営)」を求めたことで、金融商品の販売側にも大きな変化があった。

フィデューシャリー・デューティー(FD)とは?

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 FDとは「金融機関が顧客に果たすべき責務」という意味。FDの実現のために顧客利益の追求や手数料の明確化など、金融機関が取るべき行動原則が示された。行動原則自体は強制力を持つわけではないが、実施しない場合はその理由や代替案を明確にすることが求められる。

 さらに金融庁は行動原則を各金融機関に定着させるため、他社との比較が可能な共通KPI(重要業績評価指標)の公表なども促した。例えば共通KPIの一つ「運用損益別顧客比率」は、顧客が保有する投資信託などの成績が、購入時からプラスとマイナスのどちらの比率が多いかを表現したもの。プラスの成績を獲得している比率が多いほど、その金融機関は顧客の利益を追求した商品を販売しているといえる。

 なお、格付投資情報センター(R&I)が実施する「顧客本位の投信販売会社評価(投信FD評価)」など、FDの観点から金融機関の取り組みを第三者が評価する仕組みも整ってきた。評価ランクは「SS」が最も高く、次に「S」「A」「B」「C」と続く。投信FD評価は各金融機関が公式ホームページや店頭窓口などで公表しており、FD実践度を確認する際に役立つだろう。

新たな案の提言で
商品が比較しやすくなる

 金融庁は20年に「顧客本位の業務運営の進展に向けて」という新たな報告書を公表した。その中で、顧客本位の業務運営を現場レベルで実践してもらうための具体案として「重要情報シート」などが提示された。重要情報シートは商品の特徴や手数料などを、投資信託や保険といった商品の枠を超えて比較しやすくするため、一定のフォーマットを定めて顧客に開示される書類。銀行や証券会社など、金融商品の販売会社などが作成することになる。

 金融庁の取り組みや第三者の評価、さらには重要情報シートの登場により、個人の投資環境はますます整備されていきそうだ。

ウィズコロナ時代 安心を支える DX

接触が制限される中 デジタル技術の導入も加速

非対面による
顧客サポート広がる

 コロナ禍で人同士の接触が制限される中、金融機関ではデジタル技術の導入例が続々と登場している。具体例をいくつかみていこう。

 まず、ビデオ会議システムなどを使い、資産運用のオンライン相談に取り組む動きが広がっている。金融機関にとっては対面による新型コロナウイルスの感染リスクに配慮しながら、これまでと同様に顧客との接点を持つ機会になっているようだ。商談ではモバイルアプリやパソコンを通じ、店舗の担当者と対話できる。特に相場の変動が激しかった昨年上半期は、顧客訪問の自粛が求められる一方、運用状況などを丁寧にフォローする必要性も高まった。対面のみならずオンライン上でも金融機関に相談できる仕組みは、相場下落時の売却を防ぎ、長期の資産形成をサポートしてくれそうだ。コロナ禍で人の移動が制限される中、非対面でも対面同様のサービスが求められる。

密にならない
空間づくり進む

 店舗内にビデオ会議システムを導入し、来店時も非対面で専門家と相談できる金融機関が増えている。窓口にタブレット端末などを設置し、書類の記入や印鑑を押す手間を省略化し、端末で各種申し込みが完結するシステム環境の整備も順次進められている。

 金融機関の窓口担当者も紙に記載された情報をシステムに打ち直す手間が軽減するため、手続きの効率化にもつながる。営業員にタブレット端末を配布し、出社せずとも基幹システムを扱う業務を実行できるといった事例もあり、「密」にならない空間づくりが進む。

 一方でネットバンキングを使用していない顧客に手数料を課す動きもある。紙の通帳ではなく、インターネットでの利用を促進する狙いがあるようだ。

 そのほかにもRPA(ロボットによる業務自動化)や、人工知能(AI)によるデータ分析を通じた商品の提案など、業務の効率化に取り組む金融機関も増えている。各金融機関はスマートフォン(スマホ)モバイルアプリの開発に注力。これまで金融機関の窓口で対応していた各種手続きをスマホで済ませられるなど、DXは着実に進展している。

金融機関におけるDX化の例

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

 高速インターネットやクラウドサービス、人工知能(AI)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活の質を高めていくこと。

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写真提供:日本将棋連盟

将棋コラム2
歴史と権威を
感じさせられるタイトル戦

 将棋界には現在8つのタイトル戦がある。トーナメント戦やリーグ戦で挑戦者を決め、タイトル保持者と番勝負を行う。勝者は次のタイトル保持者となり1年間在位し、「○○名人」「○○竜王」などとタイトル名で呼ばれる特別な存在となるのだ。序列も九段より上位となり、他棋戦の予選免除の優遇がある。タイトル戦は賞金も高額だ。

 最高峰の戦いである番勝負は注目が集まる。対局は歴史ある会場で行われ、大盤解説会などのイベントも開催される。対局中継も行われ、心待ちにしているファンも多い。

 勢いのある棋士がタイトル保持者となるのが常であるが、日本経済新聞社主催の王座戦では羽生善治九段が1992年から19連覇した。連覇数も、通算24期も同一タイトル戦の最多獲得である。20年は永瀬拓矢王座が初防衛を果たしている。(将Give 佐藤友康)