NIKKEI 100年の資産形成

いまこそ考えよう!自分の未来 資産形成物語「ウサギとカメ」

童話「ウサギとカメ」は足の早いウサギよりも、小さな前進を重ねたカメが勝利を収める。これは、資産形成の世界でも当てはまる。短期間で利益を得ようとするウサギと、長期でコツコツ資産形成に取り組むカメの行動例を対比しながら、自分の未来を見据えた資産形成スタイルを見ていこう。

ROUND1:非課税制度活用 「目先の出費優先でなかなかNISAにお金を回せない」VS「NISA用に毎月積立額を確保している」

NISAのメリット

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 NISAを始めたいと思いつつも、給与のほとんどが生活費に消える人もいるかもしれない。そこで検討したいのが、毎月の積立額を設定して「先取り投資」を行う方法だ。とくにつみたてNISAは、毎月の積立額を事前に設定しておけば、口座から自動で投資用のお金が引き落とされる仕組み。もう一つの一般NISAも、投資信託等の購入で同様の仕組みを利用できる。

 2つのNISAを改めて説明すると、投資して得られた利益にかかる約20%の税金が非課税となる制度だ。一般NISAの投資利用枠は年間120万円で、購入年から5年間は非課税で運用可能。つみたてNISAの上限は年間40万円だが、非課税期間が最長20年と長い。つみたてNISAは、金融庁の基準を満たした約190程度の商品から投資先を選べる。

 なお現行の一般NISAは2023年末に終了し、翌24年から新制度が開始される。新NISAでは非課税枠が2階建てに変更。原則、つみたてNISAと同じ商品が購入できる1階部分を利用しなければ、2階部分の投資ができない仕組みとなる。

「大丈夫? そんなにぜいたくして」「今が楽しければいいんだよ!」

ROUND2:長期vs短期 株式投資 「短期で利益を得るために株式投資を始める」VS「長期にわたって企業を応援する気持ちで株式投資を開始」

株式投資でお金が増える仕組み

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 株式投資と聞くと、値動きの変動を常に確認しながら、短期で売買を行うイメージもある。ただ、売買のタイミングを見極めるのは難しく、応援したいと思った企業の成長をじっくりと待つ姿勢が大切だ。

 そもそも株式投資は、会社の成長に必要な資金を投資家から募り、利益が出たらその一部を還元する仕組みで成り立つ。成長を応援したい企業に、長期で投資するのが、本来の目的なのだ。

 2022年には、株式市場の再編も行われる。既存4市場が廃止され、新たに「プライム」など3市場を開設。最上位市場にあたるプライムの上場基準を厳しくし、企業の質向上を促す。

 そのほか、株式市場のトレンドも押さえておきたい。例えば「脱炭素」。50年までに温暖化ガス排出量をゼロにする「2050年脱炭素宣言」を、政府が表明した。脱炭素社会の実現を後押しする企業に注目したい。また、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、環境問題や社会問題などに取り組む企業に投資を行う「ESG投資」も、今後の主流となりそうだ。

「企業を応援する気持ちが大事だよ!」「儲かりそうな銘柄を即買い!」

ROUND3:節税効果フル活用 「iDeCoはすぐに換金できないからと選択肢から外す」VS「iDeCoの仕組みを理解してから利用する」

iDeCoの仕組み

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 公的年金に上乗せして利用する私的年金の一つ「iDeCo」は、原則60歳までは引き出せない。ただ、すぐに引き出せないからと資産形成の選択肢から外すのはもったいない。なぜならiDeCoは、運用中にも節税効果を得られるためだ。iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象となり、その年の所得税や翌年度の住民税の負担が軽減される。ただ、職業や企業年金の有無など、加入者の立場に応じて年間の掛け金の上限が異なる。

 また、NISA同様、運用中の利益についても非課税。さらに60歳以降の受け取り時にも控除が適用されるなど、税制面のメリットが大きい。

 そんなiDeCoも2022年度から改正される予定だ。現行の制度は60歳未満が加入対象だが、22年5月からは65歳未満(国民年金の被保険者に限る)に拡大される(企業型確定拠出年金の加入可能年齢も65歳未満から70歳未満へ拡大)。さらに、22年4月から受け取り開始時期の上限年齢も75歳に拡大される(現行は60〜70歳)。

「大損してお金が〜!!」「周囲の意見も取り入れ堅実に投資して結果が出る!」

ROUND4:金融機関の賢い選び方 「第三者評価を確認せずに金融機関で投資信託を買う」VS「投信FD評価など第三者評価を確認してから金融機関に向かう」

フィデューシャリー・デューティー(FD)とは

企業だけが一方的に利益を追求するのではなく
顧客利益の追求も求められる。

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 金融庁が金融機関に「顧客本位の業務運営(FD:フィデューシャリー・デューティー)」を求めたことで、金融商品の販売をめぐる環境は一層整いつつある。とはいえ、商品の販売窓口となる金融機関を選ぶ目安も知っておきたい。

 その一つに、格付投資情報センターが実施する「顧客本位の投信販売会社評価(投信FD評価)」がある。これは、投資信託の販売姿勢を第三者が評価する仕組み。評価ランクは「SS」が最も高く、「S」「A」「B」「C」と続く。投信FD評価は公式ホームページや店頭窓口などで公表している。また、わかりやすい情報提供を行う金融機関が取得する「UCDA認証」の有無も、選ぶ際の参考となりそうだ。

 2022年度からは、高校の新学習指導要領に「資産形成」も組み込まれる。学校でも、投資について学ぶことになるのだ。また、現在はネット上で視聴できる金融・経済情報系の動画コンテンツなども増えている。金融リテラシー向上に向け、こうしたコンテンツも積極的に活用したい。

「資産のゆとりでライフスタイルも充実!」
「あの時からお金をためておけばよかった…」