NIKKEI 100年の資産形成

マーケットのプロが語る 2021夏 コロナ禍の株式市場と今後の見通し

相場の変動に翻弄され、投資信託などをすぐに売却しては、投資の成果を得ることは難しい。変動に一喜一憂せず、長期の資産形成を続けるためにも、これからの指針となる考えを持つことが大切だ。そこで、2021年から現在にかけての株式市場の動きを簡単に振り返ってもらうとともに、今後の見通しを投資のプロに聞いた。

JPモルガン・アセット・マネジメント

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業種・銘柄間で成長に差
アクティブ型に追い風

株式運用本部 株式運用部 アジア株式運用担当 ポートフォリオ・マネジャー
深水 悟朗

 ワクチンの普及に伴い、今後、アジアは本来の成長軌道に戻るだろう。これまでの成長業種である「デジタル化」「インターネット」「ヘルスケア」に加え、個人消費や設備投資関連といった景気敏感業種の収益も大幅に改善するとみる。足元の需要の急回復と、2020年に停止状態に陥った一部産業の供給不足による需給ギャップは、経済の正常化に伴い徐々に解消するだろう。

 今後は業種・銘柄間の格差が鮮明になっていくとの予想から、アクティブ型にとっては追い風とみている。JPMアジア株・アクティブ・オープンでは、アジア株式運用で約50年の実績を有する運用チームが、成長性に加え、企業の「質」に着目した厳選投資を行う。早い段階からESG評価を運用プロセスに組み入れ、質の高い成長銘柄の発掘を目指す体制も確立してきた。アジア企業は、企業統治や会計制度などが先進国とは異なるからこそ、先進国株式とは異なるアプローチが重要だ。輸出主導型の経済から、イノベーションを用いた新しい産業が生まれる高付加価値経済へと移行するアジア。この大きな変化の勝ち組となる銘柄に先回りしてアプローチし、アジア各国に分散投資を行うことで、長期の資産形成に向く運用を目指す。

野村アセットマネジメント

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株式市場はコロナ収束後を
見据えて上昇

シニアインベストメントオフィサー
中山 貴裕

 もともと貴重な成長分野だったIT関連の企業が、今回のコロナ禍で大きな追い風を受け、さらなる成長を見せた。またマイナスの影響があった製造や旅行、航空業界もワクチン接種が進むにつれ、経済の正常化に近づくという期待のもと、株価は上昇傾向を維持している。給付金などの支給で消費も進む中、一般消費財サービスがけん引し、米国市場全体の業績も好調だ。

 しかしコロナ感染拡大の不安は、まだまだ完全には払拭できない。ただコロナ禍で大きく落ち込んだバリュー銘柄も現在は回復。これまで株式市場をけん引してきたIT系のグロース銘柄から主役が入れ替わる形で、相場の上昇を支えている。株式市場はあくまでもコロナが収束した後の世界を見据え、動いている。

 日本は生産性の向上を目指す一方、人口が減っていくという大きなトレンドは避けられない。そこで、海外の成長企業の勢いを資産に取り込むという発想も大切だ。投資信託などを通じて有望な海外企業へ投資を行うことで、その成長の恩恵を享受できる。今回受賞した「野村未来トレンド発見ファンド(愛称:先見の明)」でも、1つのテーマに絞るのではなく複数の旬なテーマを組み合わせることで、リスクを分散しながら世界の成長企業に投資を行っている。

三井住友トラスト・アセットマネジメント

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安定した配当収入で
投資魅力増すJ-REIT

アクティブ運用部リート運用ユニット リートチーム長
石田 真澄

 コロナ禍初期に、大きく価格が変動したJ-REIT。投資口価格の急落に反して、賃貸用不動産で構成されるJ-REITの売り上げはほぼ家賃であるため収益の低下は限定的にとどまった。家賃は不動産賃貸借契約に基づいており、その収益はホテルなどを除きおおむね安定している。2021年度に入ると、業績面に対する懸念がさらに後退し、東証REIT指数も回復傾向を強めている。

 コロナ禍前と比較すると、2つの要因で、日本の不動産を含めJ-REITに対する投資妙味は高まっているとみる。一つは、コロナ禍による国内のテナントへのダメージは海外との比較で、相対的に軽微であったこと。もう一つは海外とは異なり、強力な金融緩和のもと金利が低位で推移し続けると期待されることだ。結果として、利回りで見た相対的な割安感が増している。

 21年度のJ-REIT市場の配当水準は前年並みを予想。増資による物件取得や物件売却益の計上により分配金の上積みが図られる可能性が高いことも、国内外の投資家にとって魅力的に映るだろう。今後も、不動産価格の上昇や投資の魅力の高さから引き続き資金の流入が見込まれ、東証REIT指数はさらなる上値を追う可能性を秘めている。

さわかみ投信

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「株価」でなく
「本来の価値」を見て投資を

取締役最高投資責任者(CIO)
草刈 貴弘

 「さわかみファンド」は、本業で社会課題を解決する企業や地域社会に貢献する企業に投資を行っている。なぜなら、社会課題=ニーズ・地域社会に貢献=ストーリーと捉え、株価でなく本来の価値に投資することで市場に惑わされず安心して長期投資できるためだ。こうした企業は長期志向の経営で、業績・株価・雇用者数で他を上回る。

 ただ資産運用の必要性を感じなければ、今は無理してやるときではない。先日、広告を通じて「もう成績は出さない」と宣言したのは、市場だけを見ていると人生を見失ってしまうからだ。金融市場は実体経済から大きく逸脱しており、大きな変動が起こりうる。投資信託を選ぶうえで成績は重要だが、それはあくまで過去のもの。将来は誰にも分からないので、成績ではなく、ファンドそのものを信頼できるかどうかが大事だ。

 庶民の資産運用は、少額をコツコツ20年、30年と続けることで成功する。であるからこそ、それだけの実績、経験が問われる。その点、私たちは1本のファンドで20年を超す運用実績がある。私も自社ファンドをコツコツ積み立てており、ファンド仲間と共に歩んでいる。そんな仲間と共に歩んでいくためにも「今だけ、金だけ、自分だけ」の人はお断りしている。

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント

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成長企業のけん引で
日本株市場の上昇続く

株式運用部長 日本株式ポートフォリオ・マネジャー
小菅 一郎

 緊急事態宣言が繰り返される日本に対し、ワクチン接種の進んだ欧米や感染抑制が維持された中国の景況感改善から、コモディティー関連を中心に物色が集中した。年明け最初の四半期決算では、自動車など景気敏感株でも業績の急回復が見られる。また米国長期金利の上昇から、金融などバリュー株の復活が見られる局面もあった。

 海外企業との競争激化、貿易摩擦に代表される地政学リスク、コスト上昇などが想定される現在。成長を継続できる企業とそうでない企業との格差は拡大していくだろう。そして、前者がけん引役となり、国内株式市場は上昇基調が続くだろう。今後成長が見込まれるテーマや業界はコロナ禍前から大きく変わらず、「自動車電装化」「省人化投資」「ヘルスケア関連」「半導体関連」「ITサービス」などが有望だ。

 「GS日本フォーカス・グロース 毎月決算コース」も、今後5〜10年間に年率10%程度の持続的な利益成長が期待できる企業に、選別投資している。思えば足元は30年来の高値といわれる日本株市場ではあるが、この期間、実際に株価上昇を果たしている企業はその20%程度しかない。こうした成長企業への選別投資を行うことで、投資家の皆様が長期で安心して保有できる運用を続けていく。

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テクノロジーは持続的な
成長に向かう転換点

ファンダメンタル株式運用グループ
共同リード・ポートフォリオ・マネジャー
サン・チョ氏(写真:右)
ブルック・デイン氏(写真:左)

 2021年前半はインフレと金利上昇懸念により、S&P500がナスダックを上回るリターンを見せる局面もあった。株式市場ではサプライチェーンの混乱や原材料高、雇用市場のタイト化により企業業績への影響も懸念されている。ただワクチン接種が進展するにつれ、経済活動の回復が見られるだろう。特にテクノロジー企業は依然として成長を続け、魅力的な株価水準にある銘柄も多く「クラウド」「デジタル広告」「フィンテック」「SaaS」「半導体」などは成長が見込まれる分野。またストリーミングやゲームなどのオンラインエンターテインメントも注目だ。

 「netWIN GSテクノロジー株式ファンドBコース」も、割安な水準にあるテクノロジー企業へ投資するが、テクノロジー企業は製品が差別化されており、原材料費が抑えられる傾向にあり、他業界と比較しても利益率は高くなりやすく、成長のための資金も確保しやすい。

 過去数十年間、業界を分析してきたが、今こそテクノロジーはさらなる持続的な成長に向かう転換点にあり、テクノロジー株への投資は引き続き期待が持てる。今後も銘柄の本来の価値を精査しながら、投資家の皆様に支援し続けられる運用を目指していく。

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R&I ファンド大賞2021とは

 上記で紹介している運用会社5社(JPモルガン・アセット・マネジメント、野村アセットマネジメント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、さわかみ投信、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント)は「R&I ファンド大賞2021」を受賞している。これは格付投資情報センター(R&I)によって、純粋な運用実績による定量評価のみで、投資信託、iDeCo・DC、NISAの各分野で優れたパフォーマンスを示したファンドを表彰するものだ。恣意性を排除し第三者の立場から選定、多くの資産運用関係者などに広く認知されている。

詳しくはR&I公式ホームページへ