必ず訪れるいつかのために 家族で会話したい相続編
資産状況は早めに把握
青木 相続時の手続きを簡略化してくれる資産承継ファンドの利用者も増えているそうですね。
大江 こちらもファンドラップの一種ですね。実際に利用するかどうかは別として、早いうちから自身の資産状況をしっかり把握し、その上で相続執行サービスの検討含めて家族で一度話し合った方がいいでしょう。
4.資産承継ファンドラップの特徴
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老後資金、相続資金など目的に合わせて
運用できる -
万が一に備えて、資金の受取人を
あらかじめ指定できる -
相続開始時の手続きをサポート
してもらえる
中山 妻とは、将来持ち家や土地をどうするかという話はするんですけど、子どもたちとはまだできてないですね。
上条 両親や祖父母と相続について話す機会ってなかなかないですよね。私の場合は祖母に介護が必要になり、自分でお金を出し入れするのが難しくなったので、それ以来私が祖母の通帳を管理するようになりました。介護をきっかけに相続や資産について考え始めたり、家族に管理を任せたりするケースは多いみたいです。
大江 親は自分の介護に関心がありますから、介護っていくらかかるか知っている?という話題から切り出すのもいいかもしれませんね。
中山 僕は15歳で上京して芸能界に入ったから、両親のことは兄に任せっきりだったんです。それで僕も相続の時は大変でした。今度は自分が子どもたちに残す側だから、今のうちにどうするか決めておかなきゃとは思っています。
青木 僕は父親が亡くなった時、口座や資産の情報が全く残されていなかったので相続関係でとても苦労したんです。その経験があったので、自分の資産状況はすべて1冊のノートにまとめていて、どこに何があるのかは一目で分かるようにしています。
中山 いいね、それ。分かりやすい形で残しておくと、きっと家族に感謝されるし、もめ事も起きないと思う。
上条 私も、お金がたくさんあるからもめているという家族を多く見てきました。
中山 そう考えると、残しすぎもよくないのかな。
青木 自分の子どもには争ってほしくないですもんね。
徹底したリスク回避が大切 投資のキホン編
長期積立分散、好機逃すな
上条 初心者が覚えておいた方がいいことってありますか。
大江 「長期」「積立」「分散」を意識することです。
青木 投資のキホンとも呼ばれていますね。
大江 経済は必ずしも右肩上がりに成長していくわけではないんです。今回のコロナ禍のように、一時暴落してもその後に急回復することもあります。
中山 日経平均株価が3万円台になるなんて、少し前は想像もできなかったですよね。
大江 急上昇がいつ訪れるかは誰にも分かりません。しかし、市場に長く居続ければそのチャンスを逃さないというのが長期投資の考えです。
中山 買った直後に景気が悪くなるかもしれないと思うと、決心がつかないんですよね。
青木 そういう方にこそ積立投資です。
大江 相場が下がっているときに購入を続けていると、だんだん平均購入価格も下がっていきますから、価格が戻ったときの利益が大きくなります。積立投資は下落相場でこそ効果的なんです。
5.長期投資の効果
S&P500・TOPIX過去30年推移

出所:Bloombergデータ等を基にSBIアセットマネジメントが作成。
データ期間(1989年9月〜2019年9月)、TOPIXとS&P500を1989年9月末時点を100として指数化。
相場は一時的に下落することはあるが、長期的には成長していく傾向にある。米国を代表する500の企業で構成された株価指数「S&P500」は過去30年間で約12倍、値動きは年率平均プラス9.3%で推移している。ただし、常に右肩上がりなのではなく、低迷した後に急上昇することも。市場に長くいることで高騰も暴落も経験する可能性はあるが、長期的にみると変動幅は平準化されるため、安定的な成長が期待できるというメリットがある。
6.積立投資の効果
毎月2万円ずつ買い、以下のような値動きをした場合

定額積立投資では平均購入単価を下げる効果が期待できる。価格変動のある金融商品を定額で購入し続けると、価格が低い時の購入量は多くなり、価格が高い時の購入量は少なくなる。高値で購入し安値で売ってしまうといった大きな損失を回避できるうえ、保有量が多くなれば値上がり時の利益も大きくなる。
上条 最後の分散ってなんですか?
大江 例えば、今後、どの国の株が上がるか下がるかは誰にも分かりませんから、世界中に投資先を分けた方がリスクを減らせるという考え方です。
中山 世界規模で見ればどこかの地域が下がっても、別の地域があがる可能性があるから大きく外れないということか。
上条 投資を始めると、社会情勢を見る目も養われそうですね。
7.分散投資の効果

保有している資産の性質や値動きが相似していると、それだけ運用結果は偏る。国内相場が下落しても米国市場の相場が上昇傾向にあれば資産の増減幅が縮小されるといったように、性質や値動きが異なる資産に分散して投資すると値動きのブレが抑制される。
「投資の格言」を実感
上条 青木さんはどういう投資をしているんですか。
青木 米国株を中心に投資しています。僕自身は日本で働いているので、自分のお金には米国で働いてもらうという考えなんです。これも一種の分散投資ですね。
大江 米国は有名企業が多いので、安定した成長が期待できるから初心者の投資先としても良いと思います。
中山 何年くらい投資しているの。
青木 10年近くしていますね。
上条 これまで失敗したこととかありますか。
青木 もちろんあります。投資には格言がいろいろあるのですが、それを守ることの大切さが実感できるんですよね。「頭と尻尾はくれてやれ」とか。
大江 「もうはまだなり、まだはもうなり」という格言もありますよね。
8.投資の格言
頭と尻尾はくれてやれ
最安値・最高値を事前に予測するのは不可能に近い。相場が転じたタイミングで動き出すほうがチャンスを逃さずにすむ。
もうはまだなり、まだはもうなり
上がると見込んだ相場が実はすでに天井に達していたケースは多い。「もう」いいだろう、「まだ」だろう、と思った時こそ注意が必要だ。
社会貢献を意識する 商品の選び方編
応援したい企業に投資
上条 これまで300人以上の方をみとる中で、お金の有無は幸福に関係ないなと考えるようになったんです。なので、お金を増やしたいという気持ちは強くなくて。私みたいな人って、どういうふうに投資先を選べばいいんですか。
大江 例えば、自分の気に入ったサービスを提供していたり、社会貢献していたりするような、応援したいと思う企業を選んでみては。社会をよくしようとする企業に資金が集まれば、社会全体もよくなっていくんです。
青木 まさにESG投資の考え方ですね。
大江 ただ、その企業が本当に成長できる力があるかも大切。そのためにはROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)を見ておくことも大切です。
9.ESG投資が企業を変える

ESGとは企業が長期的成長のために配慮すべき3つの観点のこと。持続可能な社会の実現に意識が高まるなか、機関投資家が環境や社会問題に取り組む企業を選んで投資する「ESG投資」に動き始めたことを受け、企業側も重視するようになった。
10.ROICの計算式

企業は金融機関や投資家から資金を調達し事業に投資する。ROIC(投下資本利益率)とは、投下した資本からどれだけの営業利益(本業で稼いだ収益)を生み出したかを示す指標だ。割合が高いほど効率的に利益をあげていると判断できる。
中山 僕の中で投資といえば自己投資でした。20歳の時、マネジャーの勧めで外車を買ったんです。
青木 いくらくらいですか。
中山 だいたい500万円。背伸びした買い物でしたが、その車が似合う人間になるというのが仕事へのモチベーションになったんです。稼いだら稼いだだけ使う。その経験が仕事につながり、倍以上になって返ってくると思っていました。振り返ると必死で駆け抜けてきた芸能生活でしたが、今はいつまで走り続けられるのか、それを考える時期になっている。60代に向けた新しい行動として、投資もいいかもしれません。
上条 投資は元気に働けなくなってもできる社会貢献ですよね。介護を受ける方の中には、企業を応援するために株を買ったり、若い方に資産運用を教えたりと、投資を通じて社会と関わりを持ち続けている方もいます。
人生の選択肢を増やす
青木 上条さんは今、複数のお仕事をしていますよね。
上条 介護福祉士やモデル、大学の教員、研究員としても働いています。仕事によって収入にバラつきがあるため複業しているのですが、どれも自分がやりたいことなんです。長く続けるために、投資も始めようかなと思いました。
大江 まさしく、最初に紹介したFIREの考え。FIREは早期リタイアではなく、投資によって経済的に自立し、人生の選択肢を増やすことが重要なんです。
11.シニア流お金の三分法

定年後の支出は大きく3つ。食費や光熱費といった「日常生活費」は原則、公的年金でまかなう。「趣味等の費用」は人によって水準が大きく異なるので、再雇用などの収入を充てたい。最後の「医療・介護費」はいつ必要になるか分からない不確定な支出。そのため、リタイアまでは投資などで堅実に資産を増やし、リタイア後は現金として手元に用意しておきたい。