人生設計、点より線で
マイホームの購入や子育て、セカンドライフなど、多様な選択肢が存在するライフイベントにはお金がかかるもの。だからこそ、人生を俯瞰(ふかん)し、各イベントを点ではなく長期的につながっている線として捉え、あらかじめ必要な資金を考えておくことが重要だ。今年をどんな1年にしたいか考える際、ぜひ今後のライフプランについても考え、豊かな人生を送りたい。
「住宅資金」「教育資金」「老後資金」が人生の3大資金といわれるように、多額のお金が必要な場面がある。計画的な資産形成を考える際は、ライフイベントを点ではなく線で捉えたい。いつ、どんな支出が発生すると考えられ、どのような準備が必要なのか。長期的に考えると、活用できる選択肢や今からやるべきことも見えてくる。
例えば、住宅を購入したいと考えるのであれば、住宅ローン減税や補助金制度などの活用が検討できる。それらの制度からの還付金などは、少額投資非課税制度(NISA、つみたてNISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)といった税制優遇制度を利用して、教育資金や老後資金に備える。
制度同士を掛け合わせて考えれば、人生の選択肢も広がるはずだ。まずは制度やライフイベント、お金の流れに関する知識を身に付けていきたい。
働く世代の
お金の疑問に答える!
ライフプランニングといっても、起こるライフイベントは一人ひとり異なる。考えておきたい資金や学ぶべきことも変わってくるだろう。そこで、20〜60代の働く世代それぞれが持つライフプランとお金の疑問について、ファイナンシャルプランナーの岩永慶子氏と一緒に豊かさを学ぶ場をつくる。
20〜40代の疑問
どうやって家計管理すればいい?
資産形成はいつから始めればいいの?
──20代女性
まず収支把握を
家計管理は自分の収入と支出を把握することから始まります。「収支がグラフでわかる」といった目で見てわかりやすい機能があるスマホアプリの家計簿を使ったり、ノートに手書きでまとめたり、自分がストレスなく続けられる方法で毎月の収支を記録してみましょう。収支が明確になると家計を見える化できます。
また、給与明細は必ず確認する習慣をつけましょう。支給総額だけでなく、社会保険料や税金などを差し引いた手取り金額をベースに計画を立てることが重要です。
家計を見える化できたら、資産形成も検討してみましょう。つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇制度を活用し、まずは毎月少額でいいので積み立て投資を始めてみるといいですね。例えば、毎月5000円を35年間、平均利回り3%の投資信託で積み立てた場合、元本の210万円は370万円近くまで成長してくれます(※7)。
もし働けなくなったらどうしよう?
子どもにかかわるお金 制度はどう変わった?
──40代男性
「備え」考えて
病気やケガで働けない場合、会社員や公務員が加入する健康保険や共済組合には「傷病手当金」という制度があります。支給額は休業前12カ月の平均月収の3分の2、期間は休業4日目から通算1年6カ月です。
また、出産時について、現行制度では1児につき42万円の手当金が給付されますが、今年は「大幅に増額」されることが経済政策に盛り込まれています。両親ともに取得できる育児休業は、子どもが原則1歳になるまで取得できます。育児休業給付金は休業開始から180日間は特に手厚く、育休取得前の平均賃金の67%が給付されます。また、社会保険料も免除されるなど、休業に伴うさまざまな公的保障があります。2022年10月からは、男性が子の出生後8週間以内に4週間まで休業を取得できる「出生時育児休業(産後パパ育休)」も導入されました。
子どもが生まれると教育費も気になるでしょう。子どものやりたいことをサポートするためにも、教育費は早くから準備しておきたいですね。
50〜60代の疑問
50代、これからの働き方は?
独立時に考えるべきお金の問題は?
──50代男性
キャリア自立 支援多く
50代から転職や独立といった選択をし、働き続ける人も増えてきています。長く働き続けるために、積極的な資格取得や学び直しの機運も高まっています。
雇用保険に加入している場合は、指定の教育訓練にかかる費用が一部支給される「教育訓練給付制度」の活用も検討できるでしょう。給付額は受講する講座によって異なり、例えば、中小企業診断士は受講費用の20%(上限年間10万円)、キャリアコンサルタントは最大70%(最大224万円)が給付されます。
なお、独立して個人事業主になる場合、厚生年金保険の資格を喪失して国民年金の第1号被保険者になります。定年まで会社員だった場合と比べると老齢厚生年金部分が少なくなりますので、国民年金基金やiDeCoなどの制度をうまく活用しましょう。妻が扶養家族だった場合、独立後は妻も国民年金の第1号被保険者となるため、国民年金保険料の支払いが別途発生する点にも留意しましょう。
公的年金の受給額を増やす方法はある?
気になる終の棲家 選択肢は?
──60代女性
老後の選択拡大
公的年金は繰り下げた期間によって年金額が増額され、繰り下げた月数×0.7%が増額率となります。75歳まで繰り下げ可能で、最大増額率は84%です。繰り下げは老齢基礎年金、老齢厚生年金でそれぞれ選択することができます。繰り下げによって年金受給額を高い水準で保てれば、セカンドライフ後半の安心感が増すでしょう。
今後は、終(つい)の棲家(すみか)においても選択肢が増えるでしょう。例えば、老人ホームには特別養護老人ホーム(特養)などの公的施設と、介護付き有料老人ホームなどの民間施設があります。民間施設は要介護状態になくても入居できる施設があるなど条件が幅広く、共用施設も充実している傾向です。納得できる施設選びのためにも、思いたった時にいくつかの施設を見学し、必要額の目安を把握しておくといいかもしれません。