一人ひとり多様な人生設計ができる現代において、かなえたい夢やライフプランの実現のために、将来を見据えた資産形成への取り組みは重要だ。昨年11月に資産所得倍増プランが打ち出されるなど、資産形成への挑戦を後押しする政策が推し進められている今、わたしたちが活用できる制度の要点をおさえて資産形成への初めの一歩を踏み出したい。
確定拠出年金アナリスト大江加代氏
オフィス・リベルタス代表取締役。資産所得倍増分科会(内閣官房)構成員。大手証券会社に22年間勤務後、講演や執筆などを通じて社会人の資産形成をサポートする活動をしている。
国の後押し 加速へ――NISA制度拡充でより活用しやすく
岸田政権下では、昨年秋、「貯蓄から投資へ」の流れをさらに加速させ、投資による資産形成を促すため「資産所得倍増プラン」が掲げられた。なかでも少額投資非課税制度(NISA)は、これから投資を始める人にとってメリットが大きくなった制度拡充が2024年1月から予定されている。
貯蓄から資産形成へ
日本では、家計の資産のうち半分以上が預貯金であり、米国や英国と比べても株式や投資信託、債券の保有率が低いといわれている。預貯金の利回りを上回るリターンを得て個人の金融資産を増やしていくためにも、また、投資を通じた資金流入を増やして企業活動を活性化させ、経済成長を推進するためにも、個人の投資の割合を高めていくことは重要だ。そこで、「貯蓄から投資へ」の流れを実現すべく岸田政権下で掲げられたのが「資産所得倍増プラン」である。
目指すのは、NISAの口座数と買付額の「倍増」だ。NISAとは投資で得た利益が非課税になる制度で、これまで投資になじみがなかった層にも普及し始めている。利用者数は年々増加傾向にあるが、5年後までに現在約1700万のNISA口座数を3400万口座へ、買付額は約28兆円から56兆円へと倍増を実現するため、制度拡充が図られた。ほかにも、投資人口を増やすために、金融経済教育の充実や企業における資産形成の支援といった7つの柱が立てられている。
より長期の運用可能に
24年から予定されているNISAの拡充では、これまで以上に個人の資産形成を大きく後押しすることになりそうだ。現行制度では、一定の要件を満たす投資信託への積立投資を行う「つみたてNISA」と個別株投資ができる「一般NISA」の併用はできないが、改正に伴い併用が可能になる予定であり、より使いやすい制度になると期待できる。制度の恒久化、ならびに非課税保有期間も無期限になるため、より長期的な運用ができる点も見逃せない。
また、年間の投資上限額は最大360万円と、現行のつみたてNISAの年間投資上限枠40万円より大幅に増額。そのうち個別株投資ができるのは240万円までだが、それでも現行の一般NISAの120万円より多い。なお、新たに設けられる「生涯投資枠」は投資元本の上限を指すため運用益は含まれず、売却した分の枠は復活する。売却のハードルも下がったことで、ますます一人ひとりのライフイベントに合わせた資産形成に活用できるだろう。
投資のハードルが下がったNISA制度拡充
「令和5年度税制改正の大綱等」において、
以下のとおり24年以降のNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示された。
つみたて投資枠併用可 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有期間※1 | 無期限化 | 無期限化 |
非課税保有限度額(総枠)※2 | 1800万円 ※薄価残高方式で管理(枠の再利用が可能) |
1800万円 ※薄価残高方式で管理(枠の再利用が可能) |
1200万円(内数) | ||
口座開設期間 | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 積立・分散投資に 適した一定の投資信託 現行のつみたてNISA 対象商品と同様 |
上場株式・投資信託等※3 ①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、高レバレッジ型および毎月分配型の投資信託等を除外 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
現行制度との関係 | 2023年末までに現行の一般NISAおよびつみたてNISA制度において投資した商品は、新しい制度の外枠で、現行制度における非課税措置を適用。 *現行制度から新しい制度へのロールオーバーは不可。 |