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代表取締役 社長 兼 CEO 魚谷 雅彦氏

一刻も早く必要とする人に必要なものを

代表取締役 社長 兼 CEO 魚谷 雅彦氏
[指定医薬部外品]販売名:S手指消毒用エタノール液NA[指定医薬部外品]販売名:S手指消毒用エタノール液NA

2020年春、ウイルス拡大による未曽有の状況の中、消毒液の逼迫という事態が医療従事者を苦しめた。この危機に資生堂が立ち上がる。ただ指定医薬部外品である消毒液を一から開発する取り組みは同社にとっても未知の領域だ。しかし着手からわずか約3週間後、同社はオリジナルの消毒液の開発・生産に成功、医療機関への提供を開始した。さらに処方(配合する成分の組み合わせや分量、配合順序など)を一般に開示し、広く生産を呼び掛けた。8月からは一般販売も行っている。生産を決断した魚谷雅彦社長、指揮を執った直川紀夫常務、処方開発・生産を担当した長谷川修嗣工場長の3人に聞いた。

魚谷 雅彦氏
代表取締役 社長 兼 CEO
魚谷 雅彦

ウイルス拡大が社会を揺るがし始めてすぐ、医療従事者用のマスクや消毒液が不足しているという報道が流れました。社員の間からも資生堂で消毒液をつくってはという声が上がり始めた3月末ごろ、関係省庁から生産の打診を受けました。

当初私は、消毒液は化粧品の原材料でもあるアルコールからつくられるので、すぐに製品化できるのではと思っていました。しかし効果を出すには基準の濃度にまで高める必要があり、指定医薬部外品に該当します。当社には医薬部外品の消毒液の処方はなく、しかも通常薬事承認には最低半年程度の時間がかかるのです。一からの開発、しかも短期間での提供は思った以上の難関と感じましたが、GOサインを出しました。それは1872年の資生堂創業時からの精神に沿うものだと思ったからです。

幕末から明治にかけ、社会が混乱して疫病がはやり、多くの人々を苦しめていました。その時まだ一般的でなかった西洋の薬を扱う調剤薬局として歩み始めたのが資生堂です。社会が必要とすることを考え実行することは我々のDNAに刻み込まれています。

一刻も早く、必要としている人に消毒液をお届けしたい。また当時医療従事者の方々が手荒れに悩んでいるという情報も入っていましたので、それに対応することも我々の使命であると思いました。

消毒液の開発・生産を担ったのは2019年12月に稼働を始めたばかりの当社の那須工場です。

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行政側の申請・承認手続きも類を見ないスピードで対応いただき、製品開発に1~2年はかかるところを、わずか約3週間で資生堂オリジナルの消毒液をお届けすることができました。

医療従事者の方々をはじめとして多くのメッセージをいただき、大変励みになりました。また社員からも自社でこうした製品を即座に世に出せたことに対し、誇らしいという声が相次ぎました。本業を通じ社会に貢献できたことは、社員一人ひとりの大きな自信にもつながったのではないでしょうか。

「一人でも多くの人のもとへ」処方を開示「一人でも多くの人のもとへ」処方を開示

直川 紀夫氏
取締役常務
資生堂ジャパン代表取締役社長兼COO
直川 紀夫

私自身、医療従事者と話をする機会があり、その際に何度も消毒液を使っているとすごく手が荒れる、ということを伺っていました。ならばぜひ資生堂らしい製品を提供したいと思いました。消毒効果はもちろん、手肌にやさしい保湿成分を配合し、べたつかない。そんな消毒液を一刻も早く、できればゴールデンウイーク前に提供できないか。

那須工場が手を上げてくれたのですが、そもそも当社の誰も経験のない困難な取り組みです。ですが誰一人、無理ですとは言いませんでした。おそらくそう言いそうになる場面はあったと思うのですが、消毒液を待つ人々の顔を思い浮かべながら、やり遂げることができたのだと思います。

行政側ともほぼ毎日話し合いを持ちました。薬事申請は大きな難関でしたが、担当部署間で横の連携を取り、最短で申請し、承認を出していただきました。社内はもちろんのこと、一つの目標に向かい人々が一丸となる団結力を感じました。

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※撮影時のみマスクをはずしています。

多くの力が結集し当社ならではの消毒液ができました。今回、消毒液の処方は一般に開示しています。我々以外の事業者にもこの消毒液をつくっていただき、困っている方々に一人でも多く届けたいからです。

今回の体験は全社で共有できる一つの財産となったと感じています。ものづくりにおいてもお客様が求めていることや困っていることにいかに素早く対応するか、そうした気持ちをさらに持ち続けるようになったのではないかと思います。

タスクフォースで対応 地域への貢献も実感タスクフォースで対応 地域への貢献も実感

長谷川 修嗣氏
那須工場長
長谷川 修嗣

通常、新製品を開発するときはまず研究所で製品化を進めますが、この那須工場には一から製品を開発できる人材や設備がそろっていました。そこで指定医薬部外品の消毒液を開発したいと打診を受けた時も、二つ返事で受けることができました。

3日でオリジナルの処方をつくり上げることができましたが、難題は続きます。通常の生産ラインを止めずにどうしたら最短で消毒液用のラインがつくれるか。ラインの改造、適切な人員配置、申請書類の作成などに、タスクフォースを組んで当たりました。また、原材料やボトルの手配なども物資が逼迫している状況の中、取引先のご協力で最優先で都合していただけたことは本当にありがたいことでした。

通常の業務に加えての作業となったのですが、自分たちの技術や経験を活用して、世の中で求められているものをつくれる、困っている人を助けられると感じてモチベーションを高く保てました。手荒れに配慮した処方という資生堂らしさを製品に加えることもでき、プライドも実感できました。また、それぞれが自分にできることを考え行動してくれたことは、人間的な成長にもつながったと思います。

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※撮影時のみマスクをはずしています。

普段の業務で自分たちの仕事が社会に貢献しているという手ごたえを直接感じることは難しいのですが、今回は医療従事者の方々に加え、地元の学校の生徒さんたちからもたくさんの声をいただくことができ、地域にも貢献できたという実感を得ることができました。