提供 : 商工中金

中小企業の、いまを支える。先をえがく。vol.1 サンワ通商×商工中金

地域企業の
金融正常化・
成長戦略を
サポート

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「中小企業による中小企業のための金融機関」の商工中金は地域金融機関と協力して地域経済に欠かせない企業の再成長に注力する。事業性評価や全国に張り巡らされたネットワークを生かしたビジネスマッチングなど、資金面にとどまらない総合支援が強みだ。商工中金の取り組みを紹介するシリーズ。今回は物流倉庫業のサンワ通商(茨城県常総市)の金融取引正常化と新倉庫建設のサポートを取り上げる。

CHAPTER 1

事業継続の危機に

リーマン危機で取引縮小
業績悪化で私的再建手続き

首都圏中央連絡自動車道(圏央道)坂東インターチェンジから車で15分のところにある茨城県常総市古間木地区。食品工場などが立ち並ぶエリアの一角にサンワ通商本社がある。住宅資材の物流倉庫業に特化し、常総市を中心に7つの倉庫を持つ。本社がある古間木倉庫には大型トラックがひっきりなしに出入りし、フォークリフトで資材を運ぶ社員の姿が見られる。同社は現在、吾妻紀彦前社長(現会長)の息子である和治氏が社長を務める。

住宅資材の倉庫業は広大なスペースと輸入材を扱う熟練した人材が必要なため、参入障壁が高い分野だ。同社は資材の物流・保管にとどまらず在庫管理や包装、加工も請け負うなど受託先のメーカー・商社の多様なニーズに対応。荷主と入出荷情報をリアルタイムで共有するきめ細かな物流管理体制が大手流通業者から高く評価されている。

サンワ通商 取締役会長 吾妻紀彦氏 写真
サンワ通商
取締役会長
吾妻 紀彦

1984年の創業以降、食品や日用品の輸送・保管なども幅広く手掛け、ピーク時は20カ所以上の倉庫を保有していた。だが、あるとき危機が訪れる。2007年の主要顧客の破綻とその翌年のリーマン・ショックだ。取引先の縮小で取り扱い量が激減した。

さらに11年の東日本大震災が追い打ちをかけた。倉庫が被害を受け、1億円近い損失が出た。業績が悪化し、事業存続が危ぶまれた同社。当時社長の紀彦氏が選んだのは私的再建手続きによる企業再生だった。

サンワ通商 代表取締役社長 吾妻和治氏 写真
サンワ通商
代表取締役社長
吾妻 和治
商工組合中央金庫 東京支店 営業第三部 営業第一課 調査役 川染佑介氏 写真
商工組合中央金庫
東京支店 営業第三部 営業第一課
調査役
川染 佑介

新会社設立で再出発
倉庫建設、金融取引が壁

私的再建手続きとは民事再生や会社更生といった法的再建手続きを経ずに債権者との話し合いの上で事業再生を図る手法だ。非公開で経営再建への手続きが迅速に進められるメリットがある一方、すべての債務が整理しきれない課題もある。

同社は新会社を設立して再スタートを切り、経営改善に注力。金融機関の債権を引き継いだサービサー(債権回収会社)などに返済を続けた結果、20年時点でサンワ通商の債務は3分の1ほどまで減少した。

取り扱い量も増加するなど事業も軌道に乗り始めていたところメインで使用していた倉庫の借地期限切れが迫り、物件を返還することとなった。移転ができなければ事業継続に支障をきたすという事情により、同社は新倉庫の建設を決めた。

ここで新たな壁にぶつかった。私的再建手続きを経て債務が残っている企業は金融機関から融資を受けにくいといった金融慣行の存在だ。

新倉庫建設費用の資金調達のため、金融取引正常化などの難題をどうすれば解決できるのか――。思い悩んだ紀彦氏は日ごろから相談していたコンサルタントを介して商工中金に話を持ち込んだ。

住宅資材の物流倉庫 写真
住宅資材の物流倉庫
主要取り扱い品の木材を中心に毎日、搬入・搬出される。
イメージ
CHAPTER 2

新倉庫建設へ融資実行

迅速対応、各所と交渉
努力実り融資一本化

紀彦氏と面談した商工中金東京支店の川染佑介氏は「これまでのサンワ通商様の経緯を勘案すると難易度が高い案件だと感じた」と振り返る。しかし同社は地域経済に不可欠な存在で、事業を継続できなければ取引先の経営にも影響が及ぶ。

「地域の中小企業の発展が我々の使命」(川染氏)。金融慣行にとらわれず、金融正常化とBX(事業の再構築)に向け伴走支援を決めた商工中金の動きは早かった。川染氏はファイナンス本部と連携し、サンワ通商の財務状況を把握。現地訪問や主要取引先へのヒアリングを通じた綿密な事業性評価を行い、同社と経営課題を共有した。

同時に紀彦氏とともにサービサーなど各所を回り、弁護士を交えながら商工中金に債務を一本化できるよう粘り強く交渉を続けた。

紀彦氏の努力と商工中金本支店一体のサポートが奏功し、関係者らから同意を取り付けた。商工中金が残債を整理・返済、融資を一本化することで金融取引正常化への道筋が開けた。それに併せ、物流の多様化に対応した新倉庫の建設資金を融資し、サンワ通商の成長戦略の実現が一歩近づいた。

今後商工中金は地域金融機関と協調融資を実施することで、サンワ通商の新たな挑戦のサポート体制を構築する予定だ。現社長の和治氏は「川染さんには『感謝』のひと言しかない」と話す。

住宅資材の物流倉庫 写真
新倉庫完成予想図
敷地面積8000坪もの広大な土地に建ち、物流の多様化に対応。
チャート図

世代交代、次の一手
事業拡大へ設備増強

会長の紀彦氏が「経営者としてやり残した最後の仕事」と位置付ける新倉庫建設。敷地面積8000坪もの広大な建設予定地は本社から車で5分ほどのところにあり、来年6月の完成に向け建設が着々と進む。「ようやく再スタートの土台ができた」。紀彦氏は胸をなでおろす。

現在、同社のかじ取りを担う和治氏はさらなる成長戦略を描く。「大手ホームセンター向け物流拠点の整備や人材育成など経営資源を磨き上げ、一層の業務拡大を目指す。そのためには商工中金をはじめ、他の地域金融機関と今後も強固な信頼関係を築いていきたい」と力を込める。

日本企業の99.7%を占める中小企業は日本経済にとって不可欠な存在だ。商工中金は地域経済や地域の中核産業の再興を実現する「本業支援一体型金融フロンティア事業」である「商工中金イネーブラー事業」により、取引先である中小企業の夢を実現する伴走者として金融面でサポートを続ける。

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成長戦略サポート篇(4分04秒)