提供 : 商工中金

中小企業の、いまを支える。先をえがく。vol.2 WOTA×商工中金

社会を変える
スタートアップ
金融面で
バックアップ

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独自技術を駆使して社会問題に果敢に立ち向かうスタートアップの存在感が高まっている。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット化)を活用して小規模分散型の水の循環システムを手がけるWOTA(ウォータ、東京・中央)もその一つだ。中小企業専門の金融機関である商工中金はWOTAの将来性・事業性を評価し、同社の事業拡大に向け金融面でバックアップする。

CHAPTER 1

水処理を自律制御

「水問題を解決」の思い、形に

2014年創業のスタートアップ、WOTAが開発した自律分散型水循環システムは活性炭とRO(逆浸透)膜のフィルターを使って水をろ過するもので、排水の98%以上の再利用が可能だ。システム内部に独自の水処理センサーを設置し、AIを活用することで水処理の自律制御を実現した。

同社が提供するポータブル水再生プラント「WOTA BOX」は、被災地や水道インフラが未整備の場所でも電源があれば水が使える。シャワーや手洗い、洗濯機に利用でき、公衆衛生上の問題解決に貢献する。また、20年にリリースした水循環型手洗いスタンド「WOSH」は水道の配管を気にすることなく設置可能。感染症対策として手洗いニーズが高い商業施設や飲食店、医療・福祉施設などから引き合いが相次ぐ。

WOTA 代表取締役 前田瑶介氏 写真
WOTA 代表取締役
前田 瑶介

同社が水循環利用システムの開発に至った背景に、日本が置かれた水インフラ問題がある。現在の水処理は現場の熟練した技術者が長年の経験を基に大規模施設の運転・制御をしているが、人手不足によりこうした技術者の持つノウハウの継承が難しくなっていくことが懸念される。また人口減少が続く日本ではとりわけ地方の上下水道インフラの維持・更新が大きな社会問題になっており、今後はさらなるコストアップも予想される。

WOTA BOXは水質をセンサーで検知してAIで制御するため、常駐の技術者は不要だ。さらには持ち運びできるサイズで、水にアクセスできない地域でも小規模分散型の水インフラを構築できる。同社代表取締役の前田瑶介氏は「我々の世代で水インフラ問題を解決しなければいけない」と強調する。

商工組合中央金庫 池袋支店 営業第2課 課長 福島和寛氏 写真
商工組合中央金庫 池袋支店 営業第2課 課長
福島 和寛
商工組合中央金庫 ソリューション事業部 調査役 澤村浩之氏 写真
商工組合中央金庫 ソリューション事業部 調査役
澤村 浩之

事業拡大でファイナンスが壁に

WOTAのような新技術は限りある地球資源を有効活用する〝切り札〟として社会的課題の解決に不可欠だ。だが技術が先進的であるがゆえに事業展開する上で金融サポートが追い付かないケースが多い。

事業拡大を見据えてファイナンス面で課題を感じていた前田氏は、中小企業への手厚いサポートで知られる商工中金の池袋支店に足を運び、相談を持ち掛けた。

対応した同支店の福島和寛課長は「前田代表との出会いは衝撃的だった」と振り返る。「水インフラ問題を解決したいという前田代表の思いと、それを可能にする技術。まさに可能性あふれる企業だ」

水の再利用というサステナブル(持続可能)と、災害時に威力を発揮するレジリエンス(強靭)を両立するWOTAの製品だが、普及の鍵を握るのは量産化による製造コスト低減だ。「とりわけWOSHのリリース以降は販路と製造拠点の2つの拡大が大きな経営課題の一つだった」(前田氏)。

福島氏はWOTAのWOSHリリースの動きにすぐさま反応。スタートアップ企業を専門にサポートする本部ソリューション事業部ソリューションクリエイターの澤村浩之氏に協力を求めた。

ポータブル水再生プラント「WOTA BOX」 オプションユニットと接続しシャワーや手洗い、洗濯機の水として使える。 ポータブル水再生プラント「WOTA BOX」 オプションユニットと接続しシャワーや手洗い、洗濯機の水として使える。
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CHAPTER 2

持続可能な社会へ 事業をサポート

顧客に寄り添いスキーム構築

福島氏から連絡を受けた澤村氏は「それまではWOTA様の技術力に社会が追い付いていない印象だったが、様々な業種への導入が期待できるWOSHの登場でフェーズ(局面)が変わった」という。澤村氏は福島氏とWOTAを何度も訪問しながら事業性評価を実施。同時に同社の強みや財務上の課題を共有できるツールの活用により、商工中金とWOTAが同じ目標に向かって話し合える環境を整備した。

商工中金はWOTAのサポートのため2本立てのスキームを構築した。

1つ目は「商流」に合わせた仕入れ資金枠の設定。コロナ禍の現在、公衆衛生意識の高まりからWOSHの引き合いが加速度的に増えており、スムーズに製品を世の中に送り出せるよう資金枠を設定した。

そして2つ目は研究開発深化のための融資だ。研究開発には資金が必要だが、創業間もないスタートアップは製品販売による収益化には一定の時間がかかる。新株発行や転換社債といったエクイティ(株主資本)での資金調達も考えられたが、株式の希薄化によって経営の意思決定スピードが落ちる懸念もあった。そこで澤村氏らが提案したのが期限一括償還型の資本性劣後ローンだ。

同ローンの最大の特徴は「資本性」とある通り、バランスシート上は資本とみなされる点にある。財務基盤強化に適しており、信用力を補完する効果が期待できる。今回の融資について前田氏は「WOTAが普遍的な価値を持つ企業だということを認めていただいた結果と捉えている」と話す。

チャート図

金融機関のネットワークに期待

英国王立財団とウィリアム王子が創設し、革新的な環境問題の解決法を提案する個人や団体に贈る「アースショット賞」で、日本で唯一最終選考まで残ったWOTA。国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議(COP26)の開催に合わせて英国に招待された前田氏は「海外の参加者から日本のものづくり企業の環境関連技術への期待を感じた」という。

今後の展開を問われると「商工中金が持つ全国の中小企業のネットワークをうまく活用させてもらいながら、ビジネスパートナーを増やしていきたい」と商工中金の強みに期待する。対する福島氏は「世の中にイノベーション(技術革新)をもたらす企業を金融面でバックアップしたいと思い、銀行員を志した。今後も持続可能社会へ向けたWOTA様の事業サポートを続けていきたい」と意気込む。

より良い社会の実現のため、企業の長期的な金融ニーズに応える商工中金のミッションはこれからも変わらない。

水循環型手洗いスタンド「WOSH」 使用した水の98%以上をその場で循環するため水道管がなくても設置可能。 水循環型手洗いスタンド「WOSH」 使用した水の98%以上をその場で循環するため水道管がなくても設置可能。

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スタートアップサポート篇(4分45秒)