SPIRE

誕生から現在まで〜シャネル N°5のストーリー

シャネル N°5、100年の伝説 vol.1

2021.7.9

誰もがその名を知る世界一有名なフレグランス。古今東西のセレブリティたちが愛し、著名なアーティストがリスペクトし、オマージュを捧げたフレグランス──それがシャネル N°5だ。そのシャネルN°5が誕生して今年で100周年を迎えた。まさに香水界のブレイクスルーであり、今も愛され続ける永遠の香り。数々のエピソードをたどりながら、N°5を形づくる物語を、5回にわたってお届けしよう。

ガブリエル シャネル自身が登場した、シャネル N°5の最初の広告ビジュアル。

「女性そのものを感じさせる、女性のための香水を」

マリン・ルックにコスチューム・ジュエリー、リトル・ブラック・ドレス。今の私たちにはすでにおなじみのスタイルだが、これらを打ち出したのはシャネルの創始者であるガブリエル・シャネル。男性用の素材だったジャージーやツイードを女性のモードに取り入れ、自らショートヘアを実践するなど、世の既成概念や因習から女性を解放し、モードの世界に数々の革命をもたらした人物だ。帽子のデザイナーとしてそのキャリアをスタート。瞬く間にクチュリエとしての成功を収め、1920年にはパリ・カンボン通り31番地に店をオープン。そんな彼女が次に成し遂げたいと願っていたのが香水づくりだ。

フローラルな香調で、すぐに消える香りが当たり前だった当時のフレグランス。彼女が模索したのは、女性に寄り添い、オーラのように息づく肌そのもののような香りだ。「私は誰にもまねできない、他の何にも似ていない香りを創りたい。女性そのものを感じさせる、女性のための香りを」。そんな願いをかなえたのが、一人の天才的な調香師との出会いだった。

1921年に発売されたシャネル N°5のボトル。

南仏・グラースでの出会い

時代は1920年頃。ロシア革命の波を逃れ、パリへと亡命していた貴公子、ディミトリ大公とのロマンスの最中にあったガブリエル。その縁に導かれたものか、はたまた偶然か、彼女は化学者でもある調香師エルネスト・ボーと、1920年に南仏・グラースで出会う。傑出した調香師であった彼にガブリエルがリクエストしたのは、個性があって、ぜいたくで、どこにでもつけていける新しい時代のための香り。合成香料アルデヒドについて研究していたエルネスト・ボーは、グラース産のジャスミン、ローズ ドゥ メをはじめとする80種以上もの天然香料に、合成香料アルデヒドをふんだんに加えて調香。そうして完成した10種類の試作品の中から、ガブリエルが選び出したのが5番目のサンプル。それがシャネルN°5のネーミングの由来とも言われている。

(左)風刺画家セムが描いたN°5のイラストレーション。 (右)「ベッドではシャネルN°5を数滴」という言葉を残し、N°5の存在を世界に波及させたマリリン・モンロー。

N°5以前、N°5以後

1921年、シャネル N°5が売り出された。思わせぶりな甘ったるさや、やたらと文学的で情緒的なネーミングでもない。シンプルにしてミニマムなボトルもそれまでには存在しないものだったが、かつてない豊かなフローラルブーケのN°5はたちまちのうちに評判を博し、成功を収める。香水というものが一般化するのは第二次世界大戦後だったが、フランスのみでなく、米国でも名声は高まっていた。パリ解放に伴ってやってきた米兵たちは、N°5を買うためにカンボン通りに押しかけ、行列をなした。50年代にはハリウッドのアイコン、マリリン・モンローをして、ベッドで身につけるのは「シャネルのN°5を数滴」だけと言わしめた。またボトルデザインはニューヨーク近代美術館(MOMA)の恒久コレクションとして収蔵され、ポップ・アーティストの巨匠、アンディ・ウォーホルはN°5をモチーフにシルクスクリーン作品を生み出した。魅惑のシンボル、エレガンスの代名詞、香りの最高傑作として、N°5はこうして世界を席巻していった。

(左)シャネル N°5 ザ ボディ オイル 250ml ¥11,700 (右)シャネル N°5 ザ シャワー ジェル バケット 6ml×20個 ¥9,680

(左)シャネル N°5 ザ ボディ ローション チューブセット 20ml×5本 ¥7,920 (中央) シャネル N°5 オードゥ パルファム 100ml ¥20,350 (右)シャネル N°5 ロー ザ ミステリー ボックス 4アイテム ¥9,680(すべて限定店舗にて限定発売中。なくなり次第販売終了)/すべてシャネル(シャネル カスタマーケアセンター フリーダイヤル0120-525-519)

公式サイト

日常とラグジュアリーを問う、新たな伝説

香水のみならず、シャネルN°5はその後の歴史の中でオードゥ パルファム、オードゥ トワレット、オー プルミエールやN°5 ローなど、そのファミリーを広げ、多くのアイテムが登場している。詳しくは後の連載で紹介するが、常に革新的であり続けるこの香りが、100周年を迎えて私たちに新たに見せてくれるサプライズ。それが『ファクトリー 5 コレクシオン』である。それは身の回りの日用品をラグジュアリーなアイテムに変える斬新な試み。オイル缶に入ったボディ オイルや紅茶の保存缶に収められたバス タブレット、靴クリーム缶のようなデザインのサヴォンなど、ウイットに富んだ特別な限定アイテム17品(限定店舗にて限定発売中。なくなり次第販売終了)が発売されている。また、パーク ハイアット 京都を舞台とするポップアップ イベント『シャネル ファクトリー 5』(7月11日まで。事前予約制)も開催中。N°5のアイデンティティー・カラーである白・黒とポップカルチャーの色彩をミックスした空間で、シャネルN°5の特別な製造ラインをたどる体験型アトラクションだ。もちろんファクトリー 5コレクシオンの購入も可能。これぞ誕生以来100年の流れの中で、常に時代を物語りながら、新しさを紡ぎ続けてきたシャネルN°5の伝説の最新形なのだ。

『シャネル ファクトリー 5 コレクシオン』の販売店に関する情報はこちらより。

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シャネル N°5 ポップアップ イベント『シャネル ファクトリー 5』

7月11日(日)まで開催中。

詳しくはこちら

*数量限定のため、ポップアップイベントではほぼ全てのアイテムが完売。ご予約の上、ポップアップ会場にてシャネル ファクトリー 5 をご体験いただくことは可能です。

Editor: Midori Kurihara