SPIRE

エルメスのビューティが奏でる3つの章

2021.10.29

エルメスのビューティ・ラインから、ネイルカラーが誕生した。リップスティック、チークカラーに続く、第3章とも言える「レ・マン・エルメス」。その魅力を、エルメスのビューティの全貌とともにお伝えしよう。

この10月にデビューした「レ・マン・エルメス」のネイルカラーより。同社のエナメル職人のパレットから紡ぎ出された、歴史とエスプリを秘めたカラー・バリエーションだ。左上から、レ マン エルメス ヴェルニ エマイユ 65 ヴェール・エジプシャン、79 ジョーヌ・アンペリアル、85 ルージュH、06 ローズ・バルティック、33 オランジュ・ポワット、64 ルージュ・カザック、80 グリ・エトゥーブ 各15ml ¥5,500/すべてエルメスジャポン

第3章の始まり

そのオレンジ色のボックスを開けるとき、誰しもときめきと喜びを覚えるはずだ。エルメス──1837年の創業以来、200年近くもの歴史を誇る老舗にしてかけがえのないメゾンだ。馬具づくりからスタートし、傑出したクラフトマンシップ(職人の技巧)と高品質なものづくりの理念を掲げ、生活に根ざした美を形にするアルチザン(職人的芸術家)でもある。そのエルメスの16番目のメチエ(製品カテゴリー)として、2020年にデビューしたのが「ルージュ・エルメス」だ。エルメスがいよいよビューティのジャンルに、と大きな話題を呼んだこのリップスティックこそが、ビューティにおける第1章だった。テーマは、その人の本質そのものを引き立てること。第2章としてチークカラーの「ローズ・エルメス」。そして第3章として登場したのが「レ・マン・エルメス」。コレクションの主役であるネイルカラーは全24色。エルメスの製品に欠かせないエナメルの色とニュアンスを源とする色展開で、ちなみに24色というのは、1880年からアトリエと店舗を構えるフォーブルサントノレ24番地にちなむ数字。また33番はオレンジのボックスの色、85番は黒や茶色以外で初めてレザーにつけた色というエピソードも楽しい。顔と同様に、気持ちを表すパーツである手。そんな手元に美をもたらすコレクションだ。

「ルージュ・エルメス」からはシーズンごとの限定色も登場。この秋冬シーズンには夜の帷(とばり)を思わせるビロードのようになめらかで濃密なカラーを展開。パッケージは深い黒やグレーと鮮やかなトーンの組み合わせ。左から、ルージュ・エルメス 2021 秋冬リミテッド・エディション ルージュ エルメス ルージュ ア レーヴル マット 49 ローズ・タミゼ、71 オランジュ・ブリュレ、74 ローズ・マゼンタ 各¥8,800(限定発売中)/すべてエルメスジャポン

美のオブジェ

パッケージ・デザインも、エルメスのビューティ・ラインの大きな魅力だ。「ルージュ・エルメス」、「ローズ・エルメス」、そして「レ・マン・エルメス」の容器にも、エルメスらしい意匠とこだわりが貫かれている。器としての機能性をパーフェクトに満たした上で、うっとり見とれてしまうようなたたずまいの美しさ。リップスティックは白、黒、ゴールド色のメタルを組み合わせたデザイン。口紅の先端も、サテン仕上げタイプは唇全体を塗るのに適した丸みを帯びた形状、マットタイプは正確なラインを描いたり、輪郭を際立たせられるよう先の尖ったスティック状に。またチークカラーは、リップスティック容器の円柱のオブジェをパレットへと変容させ、ゴールドのアクセントを。そしてネイルは、ガラスのボトルから透ける色と質感を伝えるながら、遊びのあるプロポーションに。パッケージを閉める際の音さえ計算され尽くし、実用性とファンタジーを融合させたそれらのデザインこそ、用の美と呼ぶべきだろう。クラフトマンシップとしてのエルメスの矜持(きょうじ)はここにも生かされている。

エルメスのビューティ第2章として発売されたチーク・カラー、「ローズ・エルメス」は8色の展開。血色が表すオーラの色=ローズ系のカラー表面には、エルメスのシルクツイルの織り目が施されている。職人の手作業で作り上げられた上質なブラシとともに使いたい。左上から、ローズ エルメス ファー ア ジュ プードル ソワイユーズ 28 ¥9,020、ローズ エルメス パンソー ファー ア ジュ ¥11,110 バーム状テクスチャーのハンドクリーム、爪に潤いを与えて外部刺激から保護するケアオイルも「レ・マン・エルメス」の注目アイテム。レ マン エルメス ネイルファイル 12枚 ¥4,290、レ マン エルメス ユイル ドゥ ソワン 15ml ¥5,940、レ マン エルメス クレーム レ マン 100ml ¥13,200/すべてエルメスジャポン(☎03-3569-3300)

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美しさ、それは仕草

「レ・マン・エルメス」にはネイルカラーのほか、ベースコート、トップコート、ハンドクリーム、ネイルファイル、ネイルケアオイルもそろっている。植物成分配合で溶け込むようになじみ、ベタつきも残らないハンドクリーム、100%天然由来成分のケアオイルが潤いを与えて爪を保護するネイルオイルなど、これもまた名品ぞろいだ。また、「ルージュ・エルメス」と「ローズ・エルメス」には、同社のさまざまなフレグランスを手がける香水クリエーション・ディレクター、クリスティーヌ・ナジェルによるアロマティック効果のある香りも施されている。それはまさしくメイクする喜びとともに自分を磨き上げ、五感とともに使い手である私たちを満足させるコレクションだということ。その人本来の美しさを引き出し、見て、触れて、肌にのせてと、五感で私たちを満たして、メイクする仕草さえ美しく仕立て上げる。エルメスのビューティは、そんな美学を秘めたコレクションなのだ。

Photos: Toshimasa Ohara(aosora) Editor: Midori Kurihara