SPIRE

N°5の顔を務めたアイコンたち

シャネル N°5、100年の伝説 vol.5 最終回

2021.11.12

誕生から100年を迎えたシャネル N°5。香りにまつわる数々のエピソードをひもといてきた連載もいよいよ最終章。今回はN°5のイメージ・キャラクターに注目、その魅惑的な表情や女性像、N°5 に寄り添い、さらに輝かせてきた美のアイコンたちをフィーチャーする。

歴代のN°5のアイコンと広告画像。写真上段左より、元祖スーパーモデル、スージー・パーカー(1957年)。撮影/リチャード・アベドン 『ある愛の歌』で知られる名優、アリ・マッグロー(66年)。70代になっても現役、モデル&俳優のローレン・ハットン(68年)。撮影/リチャード・アベドン 米国人スーパーモデル、シェリル・ティーグス。60年代を代表する英国人スーパーモデル、ジーン・シュリンプトン。撮影/ヘルムート・ニュートン フランスが産んだ名優、カトリーヌ・ドヌーヴもN°5の顔を務めた(72年)。撮影/リチャード・アベドン 映画『007 ユア・アイズ・オンリー』にボンドガールとしても出演したフランス人俳優キャロル・ブケー(97年)。

N°5と、先進の広告戦略と

時代のアイコンは、人々の視線を釘付けにする。それはいつの世も変わらない事実だ。憧れの俳優、時代のファッション・リーダーであるモデル、シンガーやアーティスト。才能あふれ、輝く人々は間違いなく魅力的な存在だ。だからこそコマーシャルには多くのタレントたちが起用されるのだから。

それまでの香水の既成概念を吹き飛ばし、誰にもまねできない女性のためのフレグランスとして誕生したN°5。香水の広告戦略においても、先駆的なアプローチを行なったパイオニアであった。1937年『ハーパース バザー』誌に、ガブリエル・シャネル自身がN°5のイメージ・キャラクターとして登場。マリリン・モンローは寝る時にまとうものを「シャネルN°5を数滴」だけと答え、その認知度を世界的に広めた。そして53年、N°5のコマーシャル・フィルムが世界で初めてテレビ放映される。クチュリエが手がけた香水の広告戦略として、これは非常に大胆なアプローチだった。以後、N°5のイメージ・キャラクターは時代ごとに姿を変え、その世界観をアピールしてきたのだ。

ニコール・キッドマン(2006年)撮影/パトリック・デマルシェリエ

オドレイ・トトゥ(2009年)撮影/パトリック・デマルシェリエ

2020年からイメージ・キャラクターを務めるマリオン・コティヤール

永遠に輝くN°5のアイコンたち

米国人俳優のキャンディス・バーゲンに、元祖スーパーモデルのスージー・パーカー。アリ・マッグロー、ローレン・ハットン、カトリーヌ・ドヌーヴ……と、N°5の歴代イメージ・キャラクターを務めた人物名を記すだけで、その華やかさに圧倒される。1986年からはフランス人俳優、キャロル・ブケーが務め、リドリー・スコット監督によるコマーシャル・フィルムではスポーツカーで荒野をひた走る映像で注目を集めたものだ。残念ながらほとんどの読者の記憶にはないだろうが、こんなにも多彩で著名な女性たちがイメージ・キャラクターを務めてきたのかと、改めて感動するほどだ。2004年には、アカデミー主演女優賞にノミネートされた俳優のニコール・キッドマンがN°5のアイコンに就任。バズ・ラーマン監督によるコマーシャル・フィルムでは、世界的なスターがその名声に疲れて逃避行、束の間の恋をするが、最後には自分がいるべき場所へ戻るという、ロマンティックで切ないストーリーに涙した方もいるのではないだろうか。2009年には、映画『アメリ』に主演、後に『ココ・アヴァン・シャネル』でガブリエル・シャネルを演じたオドレイ・トトゥが登場。オリエンタル急行を舞台にミステリアスで官能的な出会いと恋の行く末を描いた。そして斬新なキャスティングに驚きつつも、なるほどとも思わせられたのが俳優ブラッド・ピットの起用(2012年)。これは男性の目線からN°5をまとう女性の魅力をモノローグ風にピットが語りかけるものだった。きら星のような歴代キャラクターにはそれぞれ異なる魅力がある。が、共通して言えるのは凛(りん)とした存在感とN°5の魅力と一体になりながら、その力を増幅させて、時代ごとに新しいステージへと昇華させる役割を担ってきたということだ。

マリオン・コティヤールが演じるN°5のストーリー。N°5の香りの力がもたらす魔法のようにハッピーな夢の世界をぜひ映像で。

マリオンが魅するN°5の魔法と新たな希望をエールに

2020年からN°5の新たなアンバサダーとなったのは、オスカー俳優マリオン・コティヤールだ。知的で聡明(そうめい)、凛(りん)としたアティチュードとエレガントな女性らしさで人気を集める存在だ。彼女が登場するコマーシャル映像は、夢と映像が溶け合うストーリー。パリの橋の上、月を見つめながらひとりたたずむ女性。すると、夢の力で彼女は月の上に。待ち受けていたひとりの男性と瞬時に恋に落ちた彼女は、月の上でダンスを繰り広げる……という展開だ。ヨハン・レンク監督によるロマンティックでハッピーなストーリーに、私たちの気分まで明るく火がともされたようになる。ちなみにマリオンの相手役を務めるのはエトワールのダンサー、ジェレミー・べランガール。マリオンは「この楽しいラブストーリーが好きでした。ふたりの登場人物が踊り始めると、ふたりの力がひとつになるのです。すごく恋しているときに感じる、すてきなイメージです」と語る。そしてさらに「N°5は女性の本質についての概念を含んだ香りだと言えるでしょう。そして誰よりも、自分自身を楽しませたいという大きな挑戦を含んだ香りだと言えるでしょう」とも。

今年もホリデーシーズンが巡ってくる。さまざまな思いを抱えて過ごした一年だったが、明日こそ、新しい年こそもっと明るく、もっと輝きたいという希望を胸に過ごしたい。N°5の香りに包まれ、その香りを楽しみながら、ともに歩むことで。

問い合わせ先/シャネル(シャネル カスタマーセンター)


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写真 ©CHANEL Editor: Midori Kurihara