2022.03.11
世界9ヵ国で展開、日本でも13店舗を有する美容専門店オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー。ユニークで伝統を重んじた香りやスキンケア、ボディケアなどの製品で知られるビュリーの創設者であり、美容専門家であるヴィクトワール・ドゥ・タイヤックにオンライン・インタビュー。ビュリーのリブランディングの理由やエピソード、彼女自身の美容観などを直撃。
SPIREの読者なら、きっと「ビュリー」をご存じだろう。正式にはオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー。2014年にフランスで立ち上げられ、日本にも2017年、代官山に1号店をオープン。今ではフランス、英国、アメリカなど世界9ヵ国で24店舗を展開、日本国内には13店舗を有する化粧品ブランドであり、美容専門店だ。
ビュリーを立ち上げたのは、美容研究家のヴィクトワール・ドゥ・タイヤックと、彼女の夫であり、アート・ディレクターのラムダン・トゥアミだが、実はビュリーはもともと、1803年に調香師であるジャン=ヴァンサン・ビュリーによって作られた美容専門店。ヴァンサンは当時、香水と香り酢の魔術師として、名を馳せていた人物。香りのほかにもスキンケアなど数々の製品を発表しては人気を博し、1823年、1827年、1849年に行われた世界万博でも大きな評判をとった。残念ながらその後閉店となるが、そのビュリーを再び目覚めさせたのがヴィクトワールとラムダンだったのだ。
「夫のラムダンと美容ブランドを立ち上げようと計画する以前、私たちが心底からいいと思うブランドは存在していませんでした。正統派で、フランスの美容の歴史をそのまま踏襲するようなブランドがね。一方で、フランス、イコール香水と言われるほど、素晴らしい香水ブランドはたくさんありますが、でもフランスを象徴し、私たちに夢を見させてくれるような店舗はなかった。そこからアイデアが浮かんだのです。私が個人的に世界中の美容習慣やリチュアルを収集して、研究するのが好きだったこともあるでしょう。ラムダンは革新的デザインをはじめ、いろいろなことにチャレンジしたいタイプ。そこで二人でビュリーというブランドを再び立ち上げようと計画が固まったのです」
とはいえ準備にはさぞかし、時間がかかったのだろうと思いきや、すぐに空き店舗も見つかり、店舗のデザインも順調に進み、なんと1年半でパリ・ボナパルト店の開店にこぎつけた。
「でもオープン当初はスタッフも少なく、私たち含めてたった4人。だから私自身も店舗に立って接客していました(笑)」
アルコールやエタノールを使わない水性香水から、自然素材をふんだんに用いたスキンケア、ボディケア、ソープやオーラルケア、櫛(くし)やフェイス&ボディブラシなどのアクセサリーまでさまざまなプロダクツが揃うビュリー。ほかではなかなか見かけないユニークなラインアップと製品作りもビュリーの魅力。
「化粧品は製法においても当然、時代による変化があるので、それに沿う形で作っていますが、できるだけ19世紀のジャン=ヴァンサン・ビュリーのレシピにインスピレーションを得て、リスペクトしながら製品づくりを行なっています」
数あるビュリーの製品の中で、ヴィクトワール自身のお気に入りは?
「どれも思い入れがあるので選ぶのは難しいですが、しいて挙げるとすれば、ポマード・ヴィルジナル(フェイスクリーム)とユイル・アンティーク(ボディオイル)かしら。このフェイスクリームはたいへんナチュラルな素材からできていて、朝晩使用すると肌がすごく潤って、しかも軽い使用感。ボディオイルはよい香りを残しながら、肌をソフトに仕上げてくれますよ」
お買い物をすると、カリグラフィーのサービスを受けられるのもビュリーならではの特典。
「もともとは来店してくださったお客さまにゆっくり昔風のサービスを行いたいというところから発想したのです。購入されたものはまったく同じ箱に入れるので、それをパーソナライズするためにカリグラフィーを施す。昔、仕立てた洋服などを包装する際に、その人のお名前を記したと思うのですが、そんなアイデアを活かしたいなと。そこでパリでカリグラフィーを教えている方を見つけ、その方からスタッフたちが教育を受けて。たいへん時間がかかりましたが、2014年からこのサービスを始めました。製品のよさだけでなく、店舗の中でのこうしたサービスも、ビュリーにとっての大切な世界観なんです」
化粧品の世界でもSDGsは当然の課題。多くのブランドがサステナビリティや環境への配慮を実際に行なっているが、ビュリーではどのように取り組んでいるのか。
「2014年にビュリーを立ち上げる時から、SDGsの考えはありました。具体的な取り組みとしては、まずパッケージをできるだけシンプルにして同じものを使い、プラスチックの使用を避けて、リサイクルしやすいビンやアルミ素材を使うこと。原料の供給先も同じ考えを共有できる会社を選んで、化粧品の素材も有機栽培の植物由来の原料を可能な限り使用する。コスモス認証も少しずつ取得していて、将来的には全製品にオーガニック認証のラベルを獲得したいと考えています」
そんなヴィクトワールから見た日本女性と美容の関わりは?
「化粧品への関心の抱き方、ケアの方法についてすごくこだわりを持っているように思います。たくさんのアイテムを使い、肌質にこだわるのもヨーロッパの女性とは違う点。新しいものに対する好奇心も旺盛で、学んでいこうというアティテュードを感じますね」
インタビューの最後にヴィクトワール自身の美容観を聞いてみた。
「化粧品において使うことで効果が得られること、それは重要です。だから自分の肌の声に耳を傾けることを学ぶべきです。その製品を使用することで肌の状態を向上させよう、使うことでよい状態に保とうというのは、第一に求められることだと思います。自分の肌に合っていないものを使っている人も少なくはないと思うので、それを知ることも大事。もう一つ、私が考える大切なポイント。それは、ウェルビーイングと自分を大切にすることです。毎日使用することで心地よく過ごせることです。中でも香りは大切。普段はそれほど意識していなくても、使うことで気分がよくなる、それを重要視しているのです」
問い合わせ先/ビュリージャパン(0120-09-1803)
Editor: Midori Kurihara