「年齢、性別、国籍を問わず、誰もが“Will”を実現できる社会へ」

未来を創造する女性たち vol.2 小安美和さん

2021.07.30

これまで「女性×はたらく」をテーマに、幅広い活動に取り組んできた株式会社Will Lab(ウィルラボ)代表取締役の小安美和さん。行政、地方自治体、企業、NPO法人などとタッグを組み、女性の就労支援や雇用促進、リーダー育成に励んでいる。また、世界中の女性起業家やクリエイターが手がけた服や雑貨を扱うオンラインショップ「そらとひと」を運営。単にモノを売るだけでなく、ネットワークの提供やメンタリングのサポートを通して、彼女たちのビジネスを応援しているという。そんな小安さんが目指すゴールは、誰もが自分の“Will”、つまり“ありたい姿”を実現できる社会の醸成。現在の具体的なアプローチについて伺った。

小安美和さん

自分がこの先どうしたいのかを、言葉で語れるように

“Will”とはつまり、“ありたい姿”のこと。性別や年齢にかかわらず、自分がありたい姿で生きられる人を増やすのが、私の夢です。とりわけ「女性×はたらく」をテーマとしているのは、女性は男性と比べ、「Willを自分で選べない、または選べないと思っている」ことが多いから。その理由はまたあとでお話しするとして、私が女性の就労支援やリーダー育成プログラムなどを通して常に行っているのは、「一人ひとりが自分の本当のWillは何なのかを内側から引き出し、認識し、表現し、実現する」、そのサポートです。

例えば、弊社Will Lab(ウィルラボ)が開発したキャリア支援プログラム「Will Workshop」では、3カ月かけて、自分がこの先どうしたいのかを自分の言葉で発表できるようになるまでがゴール。6カ月コースではプラス3カ月を費やしてロジカルシンキングやファシリテーション力などを学び、自分のWillをさらにシャープにプレゼンできる技術を身につけます。

Willが明確になれば、Mustだって楽しくなる

最初にお話ししたように、女性は働くうえでのWillを自分で選べない、または、自分には実現できないと思い込んでいたり、躊躇して踏み出せずにいたりすることが多いと思います。なぜかというと、まず、自信がない。それから、妊娠、出産といったライフイベントのタイミングが読めない。さらに、家事や育児の負担が男性より大きく、仕事と家庭の両立が難しい。こういった理由が挙げられます。

さらに残念なのが、MustにばかりとらわれてWillに向き合えていないケース。「自分はこうでなくてはならない」というMustが多いと、人生は苦しくなります。でも、Willが明確になれば、MustはWillを目指すために必要なものだけに絞られる。すると、MustがあってこそWillが達成できると思えるようになるので、Mustも楽しくなるんです。

大切なのは、Willから逃げないこと。この機会にWillに向き合ってみたい方には、スケッチブックなどで「Willブック」を作ってみることをおすすめします。私も自分の一冊を作り、3カ月ごとにアップデートしています。これ、続けると、バイブルになりますよ。ときどき見返せばWillを忘れずに済むし、たとえ落ち込んでもすぐに立ち直れる。何があっても、そんなに大きくはブレなくなります。

リーダーになることは目的ではなく、あくまで手段

今、女性活躍推進の流れを受けて、企業の中で「そろそろ私も、リーダーにならなきゃいけないのかしら」と悩んでいる女性や、「リーダーにはなりたくない」と反発を感じている女性が増えているんです。弊社のキャリア支援プログラム「Will Workshop」は自治体や企業と連携して行うことが多いのですが、その内容は、参加者全員にリーダーになることを目指していただくものではありません。Willを実現するためのプロセスとして、リーダーになる必要があれば目指せばいいし、そうでない人は無理にリーダーになろうとしなくていい。リーダーになることは目的ではなく手段。何より大事なのは、Willを明確にすることです。

近年は、全国津々浦々からプログラム実施の依頼をいただいています。私は全国を行脚しながら、その地域ごとに何十人かの女性に魂を注入してまわっているような状態(笑)。プログラムを終えて職場に戻っていった彼女たちがWillを実現するまでには2年なり3年なりの月日がかかることもありますが、やがてロールモデルになれば、その下の世代にもいい波及効果が広がるはず。Willと向き合いながら成長していく女性がそんなふうにおのずと増えていくように、今はせっせと種まきをする日々です。

専業主婦だった母の一言が、人生を変えるきっかけに

実はコロナ禍が始まって以降、新たな取り組みをスタートしまして、今はそちらにかなりのリソースを割いています。そのひとつが、NPO法人キッズドアが主催する「わたしみらいプロジェクト」。コロナ禍で困窮する子育て家庭のお母さん向けの就労支援・ステップアップ支援プログラムで、弊社は「わたしみらい応援団」の団長として、プログラムの企画とファシリテーションを担当しています。

ロジックは先程お話ししたキャリア支援プログラムと同じ。ただ、彼女たちの場合、収入が減ったり職を失ったりして困っているにもかかわらず「人を頼っちゃいけない」と思っている人が多いんですね。そのため、相談相手や仲間などのネットワーク作りをサポートすることも肝心です。また、プログラムの最後にはポーラとの協働によるメイク講座を実施。プログラムを始めた頃はオンライン画面をオフにしていた女性たちが、ご自身がもともと持っているWillやスキルへの自信を少しずつ取り戻し、最後にはメイクで表情まで明るくなって巣立っていく姿を見るのは、とてもうれしいですね。もちろん、修了後には個別のキャリア面談や企業相談会の開催といったフォローアップも行います。

私自身は、小学6年生のときに父が交通事故に遭い、そのときの母の一言がものすごくショックだったんです。母は専業主婦だったので、「もしもお父さんに何かあったら、私はあなたたちを育てる自信がない」と。幸い、父は快復しましたが、私は将来、自分の力で働き続けようと強く決意しました。

ジェンダー平等って、性別によらず、その人が「自分のありたい姿で生きる」という自己決定権を持っているってことだと思うんです。その権利を行使するには、経済力は必要です。女性、男性にかかわらず、その人のありたい姿を軸に、機会が与えられるべきだとこれからも言い続けていきたいですし、そんな社会の実現に向けて、あらゆるアプローチをしていきたいと考えています。

小安美和さん

株式会社Will Lab 代表取締役
小安美和さん

1971年生まれ。東京外国語大学卒業後、1995年、日本経済新聞社入社。その後、シンガポールで通信社のニュースエディターなどを経験したのち、2005年にリクルート入社。13年、リクルートジョブズ執行役員経営統括室長兼経営企画部長に。16年に退社。17年、株式会社Will Labを設立。岩手県釜石市、兵庫県豊岡市などで女性の就労促進に関するアドバイザーを務めるほか、企業の女性リーダー育成に取り組む。19年8月より内閣府男女共同参画連携推進会議有識者議員、21年6月より株式会社インフォバーン社外取締役。

Photos: Yasuyuki Noji
Editor: Kaori Shimura

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