マドモアゼル・ユリアが出会う、日本伝統の技 vol.2

2022.02.18

DJ、着物スタイリストとして活躍し、日本の伝統文化好きとしても知られるマドモアゼル・ユリアさんがさまざまな工房を訪ね、匠の技に触れる新連載。第2回は、東京・荒川の「雲錦堂 深津扇子店」に訪問。皇室御用達職人だった先代から技を受け継ぎ、江戸扇子を作り続ける5代目の深津佳子さんにお話を伺いました。

YULIA’S NOTE

扇子は日本では昔からさまざまな場面で、さまざまな使い方をされてきました。
 暑いときに扇いで涼むための道具としてはもちろんですが、例えば、冠婚葬祭やお茶のときに持つ扇子は、主に挨拶の際に使用されます。相手と自分の間に境(結界)を作り、自身は一段へりくだる。相手を敬う気持ちを伝える儀礼的なものであり、祝いごとの場で黒留袖の帯に挿す「末広」は、決して開いて扇いだりしないのです。
 また、舞台小道具としても活躍。能や踊りでは笛や弓、刀、盃などになぞらえ、落語の世界では箸やキセルなども扇ひとつで表現します。
 深津扇子店で多く手がけている扇子は、そのような祝儀扇や茶扇子、仕舞扇はもちろんですが、なんといっても目を引くのは、「江戸扇子」と呼ばれる“江戸好み”な「持ち扇」です。
 扇全体に華やかに絵を描き込むというよりは、あえて空間を残して絵を描き、空想できる余白を残すデザインや、柄のものでも「江戸小紋」や幾何学的な「毘沙門格子」など、「粋」を感じるデザインの扇子です。
 京扇子をはじめとする多くの扇子はさまざまな職人さんの分業によって製作されますが、江戸扇子は竹骨や紙以外の作業工程をひとりの職人さんで行うことがほとんどだそうです。
 私も今までいくつか誂えで扇子を作ったことがあるのですが、竹骨の種類や色もあれこれ選べますし、閉じたときに上から見える「天」の色を変えたり、裏面に名入れをしてもらったり、オリジナルの図柄を持ち込んで描いてもらったこともあります。皆さんも機会があれば、世界に一つしかない自分だけの扇子を職人さんにぜひオーダーしてみてください。

左から、マドモアゼル・ユリアさん、深津佳子さん。

雲錦堂 深津扇子店
深津佳子さん

江戸後期に創業し、150年以上の歴史を数える「雲錦堂 深津扇子店」の5代目。29歳のとき、皇室御用達の扇子を手がけていた父・深津鉱三さんに師事。分業制が一般的な京扇子と違い、30以上もの扇子作りの工程を深津さん自ら担って完成する扇子は、歴代の歌舞伎役者にも愛され続けている。「伝統を守りながらもモダンな色合いを取り入れるなど、今の時代にもふさわしいデザインを心がけています。ラグジュアリーなファッションブランドのコレクションからヒントを得ることもありますね」と深津さん。荒川区指定無形文化財保持者。

マドモアゼル・ユリアさん

DJ、着物スタイリスト。10代からDJ兼シンガーとして活動を始め、現在は着物のスタイリング、モデル、コラム執筆、BSテレビ東京「ファッション通信」のアンバサダー、アワードの審査員など、幅広い分野で活躍中。2020年には京都芸術大学の和の伝統文化科を卒業し、同年、英国のヴィクトリア・アルバート博物館で行われた展覧会「Kimono Kyoto to Catwalk」のキャンペーンビジュアルのスタイリングを担当。最近では東京エディション虎ノ門やkudan houseなどで着付け教室も開催。YouTube「ゆりあときもの」https://m.youtube.com/user/melleyulia

Movie & Photo: Hiro Nagoya
Model: Mademoiselle Yulia
Editor: Kaori Shimura
Director: Kaori Takagiwa

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