マドモアゼル・ユリアが出会う、日本伝統の技 vol.4

2022.04.28

DJ、着物スタイリストとして活躍し、日本の伝統文化好きとしても知られるマドモアゼル・ユリアさんがさまざまな工房を訪ね、匠の技に触れる本連載。第4回は、石川県加賀市を拠点に国内外で活躍している木地師・漆芸家の田中瑛子さんを訪問。

YULIA’S NOTE

母が石川県出身ということもあり、私は加賀友禅や九谷焼、漆器など、石川県の伝統工芸には幼い頃から興味がありました。
 今回は加賀市で長い歴史を持つ工芸である「山中漆器」の伝統を受け継ぎ、木地師・漆芸家として活動されている田中瑛子さんにお話を伺いました。田中さんは伝統的な技法を用いながら、器だけなくアートピースも多く手がけており、山中漆器の世界を世界中に発信されています。
 田中さんの作品は、山中漆器の特徴である木目を生かした美しさを、伝統的な配色である黒と赤、生漆(少し茶色がかった透明)で表現しているのですが、その形や黒や赤の漆から湧き出るように出てくる黄金色の木目。見れば見るほど、その世界に吸い込まれるような感覚を覚えます。
 山中漆器だけでなく伝統工芸の世界において、その作業は分業で行われることが多いのですが、田中さんは木地挽(きじび)きから漆塗りまで一貫してご自身で手がけられています。
 木は、削り方によって木目の表情も全然変わるし、なにより、今までの漆器の世界になかった美しい曲線を持つ形を作り出すには、木地挽きをご自身で手がける以外の選択肢は最初からなかったんだろうなと、実際に作品を見て、手に取ってみて思いました。
 また、木地を挽くにあたり、その道具であるカンナもご自身で鍛造されているという点には驚きました。というのも、このカンナはみなさんが想像するカンナとは違い、先が彫刻刀のようになった長い鉄の棒に木の持ち手がついたものです。これは、垂直方向に自動で回るろくろ(旋盤のようなもの)に木をセットして回転させ、そこにカンナを当てて器の形に削り出すことから、こんな形状になっているとのこと。挽く人の身長や体格によって使い勝手が変わるので、山中漆器の職人さんはみなさんご自身で道具を鍛造するそうです。
 ご自身で木地挽きをして木の個性を引き出し、「拭き漆」という、漆を木地に塗り、紙で余分な漆を拭き取る作業を何回も繰り返す技法によって、薄く何重にも塗り重ねた漆から、木目が黄金色に輝きます。
 木地挽きの工程は、タイミングがよければ田中さんの旦那さんのカフェ「FUZON KAGA Café and Studio(フゾンカガ カフェアンドスタジオ)」でも実際に目にすることができます。作業をされている田中さんはとってもかっこよくて、私が子どもの頃にこの光景を見ていたら、漆器の作家さんにきっと憧れていただろうなと思いました。

左から、マドモアゼル・ユリアさん、田中瑛子さん。
左から、マドモアゼル・ユリアさん、田中瑛子さん。ユリアさん着用分ドレス ¥61,600/マメ クロゴウチ(マメ クロゴウチ オンラインストア https://www.mamekurogouchi.com/

田中瑛子さん

1983年生まれ。石川県加賀市在住の木地師、漆芸家。学生時代に漆芸に出会い、魅力を感じて現在の道へ。中嶋虎男氏に師事し、木地挽きから漆塗りまでを手がける。2012年に独立してからは、加賀市内で制作を続ける一方、東京やNY、ヨーロッパ、アジア各地で展示や技術指導を行うなど活動の幅を拡大。2019年、加賀市に「Gallery and Salon 漏刻(ろうこく)」をオープン。作品はこちらのサロンのほか、田中さんのご主人がオーナーを務める「FUZON KAGA Café and Studio(フゾンカガ カフェアンドスタジオ)」やオンラインショップでも購入可能。

マドモアゼル・ユリアさん

DJ、着物スタイリスト。10代からDJ兼シンガーとして活動を始め、現在は着物のスタイリング、モデル、コラム執筆、BSテレビ東京「ファッション通信」のアンバサダー、アワードの審査員など、幅広い分野で活躍中。2020年には京都芸術大学の和の伝統文化科を卒業し、同年、英国のヴィクトリア・アルバート博物館で行われた展覧会「Kimono Kyoto to Catwalk」のキャンペーンビジュアルのスタイリングを担当。最近では東京エディション虎ノ門やkudan houseなどで着付け教室も開催。YouTube「ゆりあときもの」https://m.youtube.com/user/melleyulia

Movie & Photo: Hiro Nagoya
Model: Mademoiselle Yulia
Editor: Kaori Shimura
Director: Kaori Takagiwa

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