マドモアゼル・ユリアが出会う、日本伝統の技 vol.9

2022.09.16

DJ、着物スタイリストとして活躍し、日本の伝統文化好きとしても知られるマドモアゼル・ユリアさんがさまざまな工房を訪ね、匠(たくみ)の技に触れる本連載。第9回は200年以上の歴史をもち、今も多くの歌舞伎役者や能楽師、力士などから愛され続ける足袋店・大野屋總本店へ。

YULIA’S NOTE

足下を極める。これは洋装でも和装でも、ファッションにおいて、とても大事なことだと思います。足袋は着物を着ない方にとっては、あまり身近ではないかもしれません。ですが、着物を着る人には、足袋は重要なおしゃれのポイントなのです。
 というのも、草履は鼻緒に指を通して履くので、着物の場合、ぱっと見た足下の印象はほとんどが足袋。足袋に気を遣うのは、洋装でいうと靴に気を遣うのと一緒なのです。靴下のような役割と思われがちですが、その存在感はまったく違います。
 大野屋總本店さんでは既製品の足袋も販売していますが、なんといってもオーダーメイドの足袋を作っていただけるのが醍醐味です。細かく採寸して型紙を作り、自分の足にぴったり合った、美しい足袋ができあがります。また、コハゼ(足袋を留めるための金具)に名入れをしてくれるのも特別感があってうれしいです。
 大野屋總本店さんとの出会いは、ある日本舞踊の先生の足下が始まりでした。それは、大学の授業の特別講師としてお越しになった先生。授業内容もとってもおもしろかったのですが、一番前の席に座っていた私は、途中から先生の足下にくぎ付けになりました。男性の先生だったのですが、スッと細く、美しい足下に感激してしまったのです。
 日本舞踊をされる方は、足が美しく見えるようにピタッとした足袋を履いていらっしゃるのですが、先生の足下は私が今まで見たなかでいちばん美しかったです。
 それからいろいろ調べてみると、新富町にある大野屋總本店さんが歌舞伎役者や舞踏家、能役者など多くの方々の足袋を手がけていると知って、お店に伺ったのでした。今回取材した日も、たくさんの歌舞伎役者さんの足袋を制作されていました。
 新富町の一角にある、歴史を感じる町屋が大野屋總本店さんです。建物自体も国の登録有形文化財に指定されているので、ぜひ足を運んでみてください!

左から、マドモアゼル・ユリアさん、大野屋總本店の7代目当主の福島茂雄さん。
左から、マドモアゼル・ユリアさん、大野屋總本店の7代目当主の福島茂雄さん。

大野屋總本店

安永年間(1772~1780年)に創業。嘉永2年(1849年)に新富町に移転。江戸後期以降、この界隈が日本で最も多くの芝居小屋が集うエリアとなっていったことから、芸能や茶席で使用されるお座敷用の足袋を専門に仕立てるように。5代目が開発した「新富形」と呼ばれる、足が細くすっきりと見える足袋が看板商品。現在の当主は7代目の福島茂雄さん。関東大震災後に建て直された木造の2階建ての建物で、今も職人たちが昔ながらの手法で足袋を作り続けている。

マドモアゼル・ユリアさん

DJ、着物スタイリスト。10代からDJ兼シンガーとして活動を始め、現在は着物のスタイリング、モデル、コラム執筆、BSテレビ東京「ファッション通信」のアンバサダー、アワードの審査員など、幅広い分野で活躍中。2020年には京都芸術大学の和の伝統文化科を卒業し、同年、英国のヴィクトリア・アルバート博物館で行われた展覧会「Kimono Kyoto to Catwalk」のキャンペーンビジュアルのスタイリングを担当。最近では東京エディション虎ノ門やkudan houseなどで着付け教室も開催。YouTube「ゆりあときもの」https://m.youtube.com/user/melleyulia

Movie & Photo: Hiro Nagoya
Model: Mademoiselle Yulia
Editor: Kaori Shimura
Director: Kaori Takagiwa

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