マドモアゼル・ユリアが出会う、日本伝統の技 vol.11

2022.11.18

DJ、着物スタイリストとして活躍し、日本の伝統文化好きとしても知られるマドモアゼル・ユリアさんがさまざまな工房におじゃまし、匠(たくみ)の技に触れる本連載。第11回は、釘を使わずに木材を組み、美しく仕立てる木工品「指物(さしもの)」づくりで国内外から注目を集める「指物益田」の益田大祐さんを訪ねた。

YULIA’S NOTE

日本で古くから続くものづくりには、資源を無駄にせず、長く、大事に使うための知恵や工夫が凝らされていることが共通している気がします。当時は資源が豊富ではなかったという理由もあるかもしれませんが、現代人としては、そこから学ぶことが山ほどあるように思います。
 「指物」は現代ではあまり聞き慣れない言葉になってしまいましたが、釘を使わずに、パズルのように美しく木と木を組み合わせてつくられる木工の家具や建具、調度品のことを指します。
 完成品は膠(にかわ)などである程度接着されているようなのですが、組んでいる部分を外していけば、パーツごとにバラバラに分解することができます。つまり、部分的に直すことが可能なので、ちょっと仕様を変えたり、メンテナンスしたりしながら、長く使っていけます。釘を使うとこういうわけにはいかない、という話を聞いたときに、「着物と似てる!」と反射的に思ってしまいました。
 というのも、着物も反物を直線裁断し、手縫いで仕立てるので、糸を解くと簡単に反物の状態に戻るのです。そのため、簡単に仕立てを変えることができるし、布として別の用途にも使えます。ですが、反物をミシンで縫ってしまうと、生地に穴が開き、仕立て変えはかなり難しくなってしまうのです。
 指物の歴史を振り返ると、京都の指物は朝廷や公家のお茶道具が中心だったのに対し、江戸の指物は、武家や商人などの町人、歌舞伎役者が日々仕事で使うものとして発展しました。そのため、シンプルで機能性が高く、堅牢(けんろう)なものが求められていました。使い込むほどになじんでくるし、流行や好みに左右されず、代々受け継げる。歌舞伎役者さんの鏡台などは、代々受け継いで使用しているものがほとんどだそうです。
 ムダのない美しさ。まさに「用の美」を極めた指物は、現代の生活にも取り入れやすいものが多いので、私もまたゆっくり工房におじゃましたいなと思いました。

右から、マドモアゼル・ユリアさん、「指物益田」の益田大祐さん。
右から、マドモアゼル・ユリアさん、「指物益田」の益田大祐さん。

指物益田

東京・墨田区の指物師、益田大祐さんの工房。益田さんはもともと家具デザイナーとして働いていたが、指物づくりの技術に魅了され、台東区の「渡邊」で7年間修行したのち、2005年に独立。受注生産をベースに和家具の製作と修理を行い、歌舞伎役者の楽屋鏡台、茶道具なども数多く手がける。近年はスーツケースに入れて世界中どこへでも持ち運べる茶室「ZEN-An 禅庵」の製作、フランスやイタリアの国際見本市での展示、実演などを通して、指物の魅力を海外にも発信。

マドモアゼル・ユリアさん

DJ、着物スタイリスト。10代からDJ兼シンガーとして活動を始め、現在は着物のスタイリング、モデル、コラム執筆、BSテレビ東京「ファッション通信」のアンバサダー、アワードの審査員など、幅広い分野で活躍中。2020年には京都芸術大学の和の伝統文化科を卒業し、同年、英国のヴィクトリア・アルバート博物館で行われた展覧会「Kimono Kyoto to Catwalk」のキャンペーンビジュアルのスタイリングを担当。最近では東京エディション虎ノ門やkudan houseなどで着付け教室も開催。YouTube「ゆりあときもの」https://m.youtube.com/user/melleyulia

Movie & Photo: Hiro Nagoya
Model: Mademoiselle Yulia
Editor: Kaori Shimura
Director: Kaori Takagiwa

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