SPIRE

女性たちを星々で包み込む、自由という名のきらめき

「シャネル」ハイジュエリー、90年の物語 vol.2

2022.6.17

Photos: ©CHANEL

運命の1932年。マドモアゼル シャネルが唯一手がけた伝説のハイジュエリー コレクションこそ、「Bijoux de Diamants(ダイヤモンド ジュエリー)」。その誕生から90周年を祝し、新たなハイジュエリー、「コレクション 1932」が今年一年を通じて続々展開している。1月に発表された象徴的ネックレスに続き、5月には第二弾として、星・月・太陽という天体のテーマを継承するシグネチャーピースの数々がローンチした。本記事では、最新ピースのハイライトをいち早くご紹介。マドモアゼルの夢を現代へ継承するシャネル ファイン ジュエリー クリエイション スタジオ ディレクター、パトリス ルゲローのメッセージを織り交ぜながら、シャネルのハイジュエリーに宿る永遠のモダニティと創造性の秘密に迫る。

シャネル ファイン ジュエリー クリエイション スタジオ ディレクター パトリス ルゲロー(Patirice Leguéreau) フランス生まれ。エコール・ブール国立工芸校で造型彫刻を学んだ後、国立宝石学研究所(Institut National de Gemmologie)で学位を取得。カルティエに6年間、ヴァン クリーフ&アーペルに11年間勤務し、トップメゾンのデザインスタジオで実績を積んだのち、2009年2月より現職。ファイン ジュエリーとハイジュエリー コレクションの制作を指揮する。「ココ クラッシュ」をはじめ、ファッションを着想源とした作品も多く生み出す。Photo: ©CHANEL

マドモアゼルの夢とへリテージを継ぐ者

生涯においてただ一度だけ希代のクチュリエ、マドモアゼル シャネルが発表したハイジュエリー「ダイヤモンド ジュエリー」。1932年、前代未聞のコレクション形式で星やリボンに彩られた新時代のジュエリーを提示し、受注生産が主流だったコンサバティブな宝飾界を激震させたのは、第1回目の記事でもお伝えしたとおり。だが、その後コレクション発表は途絶え、メゾンのジュエリー部門は93年まで休眠状態にあった。豊かなヘリテージを誇る一方で、シャネルのジュエリーの物語はまだ息吹を吹き返したばかり。そのクリエイションをけん引し、瞬く間に存在感を高めた立役者こそ、パトリス ルゲローである。

マドモアゼルが愛したシンボルの数々をモダナイズし、イノベーティブなきらめきへと昇華させてきたパトリス。「シャネルのジュエリーの出発点とは、メゾンの遺産。つまりマドモアゼルの人生そのもの」であるとパトリスは指摘する。あらゆるコレクションは、彼女のビジョンの延長線上にあるものなのだ。2022年、彼が挑んだテーマは、マドモアゼルがデザインした一度きりのハイジュエリー コレクション。その誕生から80周年を迎えてオマージュを捧げた2012年のハイジュエリー発表に続き、今作はアニバーサリーイヤーを祝う2度目のコレクションとなった。

ハイライトのひとつ「コメット ヴォリュート」ネックレスの制作場面。その名のごとく「渦」(フランス語でVolute)を描き、躍動するコメット(彗星)の姿を表現。ヴァンドーム広場のシャネルのアトリエで、宝石に生命を吹き込む職人たちの専門性と経験が、極上のしなやかさをかなえた。Photo: ©CHANEL

ダイヤモンドに讃歌を捧げ、80周年を記念して発表した2012年のコレクションでは、コメット・月・太陽といった天体のシンボルと、羽根・リボン・フリンジのクチュールモチーフの両方のエレメントに焦点を当てたパトリス。「80周年を祝った当時は、オリジナルコレクション全体を再解釈しようと考えました。それに対して2022年は、天体のテーマのみを抽出。自らの力で光り輝く、コメット・月・太陽という3つのシンボルを取り巻くメッセージを調和させたいと考えました」

パトリスは言う。「1932年、マドモアゼル シャネルがハイジュエリーの世界へ持ち込もうとしたビジョンに敬意を払い、オマージュを捧げるために主要なテーマを再解釈しました。“女性を星座で語りたい”とマドモアゼルが目指したように、私たちもまた、女性のデコルテに輝くダイヤモンドのシャワーを降り注いだり、きらめくコメットを手首に巻きつけたりしながら、天体モチーフとともに、女性自身の輝きを照らし出したいと願ったのです」。

デコルテを照らす光彩のスパイラル。「コメット ヴォリュート」ネックレス(WG×ダイヤモンド)¥929,170,000(参考価格) 指先にエターナルにきらめく流星を。「コメット アンフィニ」リング(WG×ダイヤモンド×イエローダイヤモンド)¥77,660,000(参考価格) Photo: ©CHANEL

時を超える“コメット”にさらなる自由と動きを

服と同様に、ジュエリーにもボディーへのフィット感としなやかさを求めたマドモアゼル。その思いから、体の自由な動きを制限するクラスプを排除し、胸元でコメットが瞬くオープンネックレスを考案したのは有名な話。1932年にマドモアゼルが宝石に吹き込んだ「動き」「自由」「フレキシブルさの精神」は、パトリスにとって、神話的コレクションの世界観を新たに甦らせるキーポイントとなった。パトリスによる21世紀のコメットは、素肌に寄り沿って銀河系にダイヤモンドのスパイラルを描き、そのまばゆい渦から流れ星が飛び出す「コメット ヴォリュート」ネックレスへと進化。

左から、天体のエレメントを動きの中に取り入れることで、コメットというメゾンの遺産を革新。「コメット ヴォリュート」ネックレス(WG×ダイヤモンド)¥929,170,000(参考価格) 形を変えてまとえる世にもぜいたくな“尾”をもつ、新時代のコメット。「コメット ヴォリュート」ブローチ(WG×ダイヤモンド)¥152,790,000(参考価格)Photos: ©CHANEL

彗星の姿をとらえた「コメット ヴォリュート」ブローチは、星のみを単体でブローチとして着用できるほか、コメットの尾をブローチやブレスレットとしてもまとえる。マドモアゼルが初のハイジュエリーで披露した、トランスフォーマブルなジュエリーのコードを継承した。今作の30点を占めるコメットのチャプターには、アイコニックなオープンタイプのネックレスも登場している。

左から、夜空を宿すようなブルーサファイアの彩りも、コメットの新たな表情を引き出す。「コメット サフィール」ネックレス(WG×ダイヤモンド×サファイア)¥108,240,000(参考価格) コレクションを象徴する多彩なカラーパレットのひとつ、燃えたつ太陽のごときイエローダイヤモンドの閃光(せんこう)。「コメット アンフィニ」リング(WG×ダイヤモンド×イエローダイヤモンド)¥77,660,000(参考価格)Photos: ©CHANEL

静寂なる三日月とまばゆい満月の美しさ

1932年のオリジナルコレクションにおいて、たった1点しか存在していなかった月モチーフが、18ピースで構成されるチャプターに。かつての三日月は、ときに大小のダイヤモンドを飾った繊細な三日月に、ときに満月にも姿を変えて神々しい光輪を放つ。太陽系で最もミステリアスであり、光を発するのではなく反射する無二の天体である月。マドモアゼルが好んだ月の神秘を讃えて。

左から、オーラに満ちあふれるダイヤモンドの満月が、未来までも照らし出す。「リュンヌ シルエット」ブレスレット(WG×ダイヤモンド)¥82,720,000(参考価格) 三日月の白い光の下で、タンザナイトが星夜の夢を優しく揺らして。「リュンヌ タリスマン」イヤリング(WG×ダイヤモンド×タンザナイト)¥31,790,000(参考価格)Photos: ©CHANEL

ポジティブなスピリットを宿す情熱の太陽

天空を司る太陽のパワーもコレクションに加わった。透き通るダイヤモンドばかりでなく、燃えたつような黄金色のイエローダイヤモンドや、真紅のルビーが印象を刻む太陽のチャプター。19点の卓越したジュエリーが織りなすそのカラーパレットは、コメットや月のテーマと比べてぐっと鮮やかに、情熱に満ちている。アイコニックなピースといえば、放射状の光線を放つ太陽モチーフをあしらった「ソレイユ 19 ウット」ネックレス。呼吸と鼓動に合わせてモチーフが繊細に揺らめき、首元に心地よくフィットする。

左から、太陽モチーフは取り外して付属のリングにセットすることも、単体でブローチとしても。ネックレスも単体でもまとえ、5通りの装着が可能。「ソレイユ 19 ウット」ネックレス(WG×YG×イエローダイヤモンド×ダイヤモンド)¥585,530,000(参考価格) 力強いイエローゴールドとダイヤモンドの光彩が共鳴する灼熱の太陽。「ソレイユ ドレ」リング(WG×YG×ダイヤモンド)¥73,150,000(参考価格)Photos: ©CHANEL

今年の7月には第三弾が発表され、形を変えられる13点を含む全77点の壮麗な新作ハイジュエリー コレクションが完成する。ボディーのランダムな動きに寄り添い、生命を宿すかのごとく生き生きと光り輝くマスターピースたち。身体の好きな場所に自由に飾れば、マドモアゼルがかつて願ったままに、まるで銀河に浮かぶ星座に包み込まれているようだ。

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問い合わせ先/シャネル(カスタマーケア)

TEL:フリーダイヤル0120-525-519

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※この特集中、以下の表記は略号になります。WG(ホワイトゴールド)、YG(イエローゴールド)

※掲載商品は、すべて税込・参考価格です。

Text: Etsuko Aiko Editor: Maiko Hamano