「ロミオとジュリエット」現代に蘇る愛の物語
16世紀に誕生して以来、伝説的な傑作として知られるウィリアム・シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」。誰もが知るこの物語をテーマに、ヴァン クリーフ&アーペルの新しいハイジュエリーコレクションが発表された。
この世界的に愛される不滅の物語を多様な視点から解釈し、メゾンらしい詩的なクリエーションへと昇華させた、新作ハイジュエリーコレクション「ロミオ&ジュリエット」。特に印象的な4つのテーマ、「愛」「色」「建築」「衣装」のインスピレーションについて、メゾンの綴る“宝石の物語”を読み解いていこう。
まずは、ヴァン クリーフ&アーペルの大事な哲学であり、ロミオとジュリエットを象徴する「愛」のテーマ。
情熱的な恋人たちに捧げられた、ペアのロミオとジュリエットのクリップは、まさにコレクションのアイコンとなる傑作だ。多彩なカットやセッティング、貴石の色を用いて立体的なボリュームを表現した作品は、命を吹き込まれたように輝き、物語の始まりへと誘いこむ。
また、この戯曲のハイライトのひとつである、バルコニーのシーンを表現したクリップがある。ダイヤモンドのバルコニーには、鮮やかなエメラルドやツァボライトガーネットで表現した蔦が垂れ下がる。そんな、まばゆい貴石を背景に、クリップの裏側には、暗闇に紛れて愛を誓いあうロミオとジュリエットが隠されているのがメゾンらしいロマンティシズムだ。
夜に美しい唄声で鳴く鳥「ナイチンゲール」の名前を冠したネックレスは、寝室でのシーンをイメージしたジュエリー。最後の一夜を共に過ごす二人は、夜が明ける時刻には別れが待っている。ロミオが去ろうとするとき、「まだ、ナイチンゲールが鳴いているから」と引き止めるジュリエットの切ない恋心を描きだしたこの逸品には、二人の希望の愛を表すヘキサゴナルカットのエメラルドが配され、稀少な11.85カラットもの石が圧巻の眩さを放っている。
コレクションに登場する鮮やかな「色」にも、数々の物語が秘められている。カラーパレットの中心となるのは、ジュリエットのキャピュレット家とロミオのモンターギュ家の紋章から着想を得た、赤と青の色調だ。レッドのグラデーションで描いたキャピュレット家のネックレスは、花のモチーフを取り外し、ブローチとしても使用できる、メゾンの得意とする “変容”するジュエリーとなっている。
対するモンターギュ家を象徴するブレスレット。ベルベットのように深いマダガスカル産のエメラルドと、煌めくダイヤモンドが巧妙なカーブと立体感を描き、凛とした気品を漂わせる。
ルネサンス期の衣装からインピレーションを得たジュエリーも、繊細な技巧が際立つ作品だ。リボンのモチーフを流麗に描いたブレスレットはリングとセットになっており、ブレスレットの中央にセットされたクッションカットのダイヤモンドは、リングの中央のピンクダイヤモンドのパーツと入れ替えが可能。こちらもメゾンらしい遊び心とサプライズが散りばめられた作品だ。
恋人たちの愛を育んだヴェローナの街。古都を彩る「建築」もコレクションの大事な要素となっている。街の中心となるブラ広場をイメージしたピアスは、中世の面影が残る石畳や広場から続くアレーナ(ローマ時代の円形闘技場)を彷彿とさせるデザインを、34石ものエメラルドビーズで表現。幾何学的なリズムが、いにしえの時代へと誘いをかける。
これらの圧倒されるほどの創造性は、選び抜かれたメゾン独自の基準をもつ宝石 “ピエール ド カラクテール(個性ある石)”により、輝きの色をまとう。さらに“黄金の手”と呼ばれる職人たちの卓越した技巧により、時空を超えた愛の言葉と、宝石の言葉が出会うのだ。唯一無二のクリエーションは、恋人たちの情熱を永遠に輝くジュエリーの中に宿し、二人の悲劇の愛を新たな物語へと昇華させていく。かけがえのない“愛と平和”という、この戯曲の続編を綴るかのように。
Editor: Asako Kanno