“春”に秘められた、生命の物語
眠っていた草木や生き物たちが、一斉に目を覚ます“春”の訪れ。ヴァン クリーフ&アーペルにとって、“春”はインスピレーションの源となる特別な季節だ。そんな“春”とメゾンのつながりを紐解いていこう。
春。それは、自然界があたたかな陽光とともに深い眠りから目覚め、いっせいに動き出す“再生”の季節。創業当時より自然界を愛し、生命の輝きをモチーフとしてきたヴァン クリーフ&アーペルにとって、豊かな1年の始まりとなる春は、まさにセレブレーションの季節といえる。そんな春の到来の祝福と、幸福への祈りをジュエリーに託し、メゾンは多様な、春にまつわる作品を発表してきた。
例えば、5月にその高貴な姿で私たちを魅了する芍薬(しゃくやく)の花をモチーフにした、ハイジュエリーを見てみよう。幾重にも重なるあでやかな花びらが見事なこのクリップは、まるで、宝石が絵の具であるかのように、芍薬を生き生きと描き出している。本物の花にも劣らないこの緻密な描写に、この季節へ対するメゾンの喜びの深さが垣間見れるようだ。
また、人気の「フリヴォル」コレクションからは、待望の新作が登場だ。立体的なハート形の花びらはイエローゴールドとローズゴールドで表現。その可憐な花の花芯には、それぞれエメラルドとルビーがセットされ、まるで春のガーデンから摘み取ったブーケを思わせるようだ。
そして、咲き誇る花々の輝きだけでなく、春を待っていた生き物たちへも、メゾンはとびきりの祝福を贈る。やわらかな日差しの中で、春の舞を繰り広げる二匹の蝶「ドゥ パピヨン」。変化し続ける自然界にインスピレーションを得たコレクションは、その美しさを非対称のデザインで賛美する。シーズンごとに、春を彩る色石で発表される新作の登場も楽しみなコレクションだ。
また、まるで春のガーデンパーティーへ招待されたかのような「ラッキー スプリング」も、メゾンのポジティヴなスピリットを反映したコレクションのひとつだ。
“幸運を呼ぶ”と呼ばれるてんとう虫の楽しげな佇まいとともに、プラムやスズランの花々が、互いにその美しさを引き立てあう。それぞれの生態をじっくりと観察し、スケッチされたこのジュエリーは、春の到来への喜びを宝石で彩るかのようだ。
さらに、流れゆく時を刻むウォッチにも、メゾンは春の生命を吹き込む。動植物分類学の父として知られるスウェーデンの植物学者、カール・フォン・リンネ。彼は、1751年の著作『植物哲学』の中で、1日における花の開閉時間を使用して時間を知るという”花時計”のコンセプトを考案した。メゾンは、そこからインスピレーションを得て、花を開閉させるモジュールにより、花が開いたり閉じたりすることで時間を測るという、夢のようなウォッチを発表したのだ。立体的な花や蝶々で埋め尽くされた文字盤上で、1時間ごとに12個の花が、多様な組み合わせで開花する。そして翌日、1時間ごとに開く花の組み合わせは、前日とは異なる順番にて現れ、文字盤上の風景を変えていく。時刻に関しては、ウォッチケースの側面の小窓にセットされた分表示により確認できる仕組みだ。時間を伝える行為そのものが、春の花畑を散策しているかのような情景に変わっていく。それこそが、ヴァン クリーフ&アーペルを象徴する、サヴォアフェール(匠の技)と卓越した時計制作の技術を融合させた「ポエティック コンプリケーション」ウォッチなのだ。
豊かな想像力と高度な伝統技術で“春”を祝福し描き続けてきたヴァン クリーフ&アーペル。そこには常にマンドール(黄金の手)と呼ばれる、職人たちの確かな美学が宿る。自然界が織りなす色調を詩的に表現するために厳選された、素材や宝石たち。微妙な色彩のバランスを見極め、綿密にカットされ、研磨を施されることで、その輝きは最大限に高められてゆく。
いくつもの工程を経て、ようやく命吹き込まれるメゾンのジュエリーたち。それは、長き休眠の時を過て、やっと訪れた春とともに目を覚ます自然界の輝きともよく似ている。だからこそメゾンは、“春”という季節に共感しながら、来たる春への祝福を永遠に贈り続けていくのだろう。新たなクリエーションという挑戦とともに。
Editor: Asako Kanno