石留め職人が引き出す、宝石の魅力

ヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーが特別である秘密。それはメゾンが誇る「マンドール(黄金の手)」と呼ばれる職人の存在だ。希少な宝石と匠(たくみ)の技が紡ぐ物語を紐解いて行こう。

パリのヴァンドーム広場にあるヴァン クリーフ&アーペルのアトリエには、伝統的なサヴォアフェール(匠の技)と、革新的なサヴォアフェールを併せ持つ、「マンドール(黄金の手)」と呼ばれる職人たちがいる。宝飾職人、石留め職人、宝石カット職人、研磨職人、モデリング職人など、各分野のエクスパートが連携し、それぞれが磨き上げてきた技と感性、叡智をひとつとすることにより、メゾンの稀有なジュエリーが生み出されるのだ。

今回は、そのなかから、“石留め職人”のサヴォアフェールについて覗いてみよう。

優美な爪留めで3.26ctものセンターダイヤモンドを引き立てる。最高グレードのダイヤモンドの高貴な表情を引き出し、最大限の光を放つよう、アームのサイドストーンとのバランスも緻密に計算し尽くされている。ロマンス ソリティア(プラチナ、ダイヤモンド)0.3ct〜 ¥660,000〜(写真は3.26ct)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

石留め職人は、宝石の魅力が際立つように、宝石を金属の枠にはめ込み、固定する役割を担う。デザイナーが意図する図形、形状、スケッチを完璧に実現するというミクロの世界の作業に加え、メゾンの石留め職人には、最終的にメゾンの美学を醸し出すスタイルや輝きに仕上げるという、視覚的にも感覚的にもクリエーティブな感性が求められている。

おとぎ話のお城に爪留めでセットされた、目を奪うような39.85ctのブラジル産オーバルカットエメラルド。個性的な青みがかったこの貴石は、メゾン独自の基準を設けた「ピエール ド カラクテール(個性ある石)」と呼ばれる。そんなメゾンらしい石の魅力を、さらに引き出す職人の卓越した技術。シャトー アンシャンテ クリップ(ホワイトゴールド、エメラルド、サファイア、ダイヤモンド)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

エメラルドカットをほどこした4.05ctものファンシービビッドイエローダイヤモンドが、格調高いセッティングで稀有な色調を引き立てる。周りを囲むイエロー&ホワイトダイヤモンドのグラフィックなデザインも芸術的だ。ボーテ セレスト(ファンシービビッドイエローダイヤモンド4.05ct、ダイヤモンド、イエローダイヤモンド、ホワイトゴールド、イエローゴールド)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

石留めは、宝石に傷をつけず、そして全体が脆くならないように注意しつつも、可能な限り金属が見えなくなるようセットしていくという、高度なテクニックを要する技術だ。そのため石留め職人は、ゴールドやプラチナなどの地金、そしてそれぞれの宝石の性質や強度を熟知した上で、宝石にかかる力加減を調整しながら仕上げていくという。

フリヴォル シークレット ウォッチ(ホワイトゴールド、ダイヤモンド)¥16,764,000/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

また、セッティングには、いくつもの技法が存在する。ひとつのジュエリー作品において、デザインや石の性質にあった複数のセッティング技法を駆使しなければいけないからだ。

「グレインセッティング」は、そのなかの一つの技法だ。石を固定するために、金属プレートに小さな穴を作製し、周辺の地金から爪を彫り起こして宝石を留めていく。金属プレートは、注意深く、なめらかになるまで手で磨きをかけられ、宝石一粒一粒の輝きを引き出してゆく。

イエローサファイアとツァボライトガーネットをダイヤモンドと共鳴するように、美しくセッティングしたウォッチが、ハイジュエラーならではの高貴な華やぎをそえる。レディ アーペル ポン デ ザムルー エテ ウォッチ(ホワイトゴールド、サファイア、スペサルタイト、ダイヤモンド、クォーツムーブメント、33mm)¥48,180,000 /ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

パヴェセッティングは、メレダイヤモンドをパヴェ(石畳)のように隙間なく埋めていく技法だ。石と石の間隔が狭いその隙間に、職人は前述の「グレイン」を作らなければならない。そして指で触れた時、取り付けられた石の凹凸や突起が感じられないように、緻密にグレインの深さは計算され、磨きをかけられる。気の遠くなるような忍耐強い作業が繰り返されてゆくのだ。

石の性質により、技法を使い分けて石留めしてゆく職人の高い技術。メゾンのアイコニックなビーズの縁取りもすべて手作業により磨きあげられる。カナール クリップ(YG、グレーマザーオブパール、マラカイト、ラピスラズリ、オニキス)¥1,003,200/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

「クローズド(覆輪留め)」と呼ばれるセッティングは、金属の地金の中に宝石を入れ、縁を倒して石をセットする宝石の留め方で、宝石の全周を囲む最も古い技法のひとつだ。正しいサイズにカットされた宝石は、通常その周囲10分の2または3程度が金属の中に埋め込まれる。石留め職人は、石のアウトラインを金属がぴたりと一周するよう、力の加減を素材ごとに変えながら、ハンマーで宝石のヘリに金属のエッジを押しつける作業を繰り返していく。

立体感と動きのある6枚の花びらを強調するため、重なりが一様にならないように精緻に配置。センターダイヤモンドがあしらわれた花の中心部は、ほかの石をセットする前に手作業で調整される。ローズ ド ノエル ペンダント&イヤリング ミニモデル(イエローゴールド、ホワイト マザー オブ パール、ダイヤモンド)ペンダント ¥1,201,200 イヤリング ¥1,927,200/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

メゾンが誇る卓越性の伝統を受け継ぐアルハンブラ コレクション。ハイジュエリーメゾンが培ってきたあらゆるサヴォアフェールが反映されている。マジック アルハンブラ イヤリング、3モチーフ(イエローゴールド、マラカイト、ダイヤモンド)¥2,296,800/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

宝石カット職人、宝飾細工職人、セッティング職人、研磨師など、メゾン専属の職人がさまざまな技を駆使して、ひとつの作品を作り上げていく。ヴィンテージ アルハンブラ ブレスレット、5モチーフ(イエローゴールド、アゲート)¥599,500/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

誕生から50年以上、多彩な色石によって無限の表情を見せてくれるアルハンブラ コレクションも、素材を知り尽くした、職人たちの技術があってこそ。ヴィンテージ アルハンブラ ペンダント(ローズゴールド、グレー マザー オブ パール)¥368,500/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

アシンメトリックなデザインが特徴のイヤクリップ。小さなジュエリーの中にも複数のセッティングがほどこされ、宝石の輝きと豊かな詩情を引き出す。ドゥ パピヨン アントレ レ ドア イヤリング(イエローゴールド、イエローサファイア、ホワイトゴールド、ダイヤモンド)¥3,181,200/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

クロー・セッティング(爪留め)は、その宝石用に特別に作られた石座の上に石をセットし、小さな爪で宝石をつかんで固定する技法だ。横からも、まばゆい宝石の輝きを目にすることができる構造が、身に付ける者の目を魅了するテクニックでソリティアリングなどに使用されることが多い。留めが強すぎれば石が割れる原因となり、逆に留めが弱いと石が外れる原因となるため、石留め職人は巧みに爪を折り曲げ、ハンマーで叩きながら、完璧なバランスへと仕上げてゆく。

「シャトー アンシャンテ クリップ」のセンターストーンを爪留めでセットする「マンドール(黄金の手)」の確かな技術。

「レディ アーペル ポン デ ザムルー エテ ウォッチ」のベルト部分のパヴェダイヤモンドを慎重にセットする石留め職人。

「マンドール(黄金の手)」たちのもつ、あらゆる種類のセッティングを可能にする高度な技術、そしてヴァン クリーフ&アーペルの美的基準に呼応する感受性と創造性。そんな伝統と革新性を備えたメゾンの石留め職人の仕事は、今日もヴァンドーム広場のアトリエで宝石に命を吹き込み、芸術的なジュエリーを生み出してゆく。

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Editor: Asako Kanno