モデリング職人が命を吹き込む、未来を運ぶジュエリー

作品のモケット(試作スケールモデル)を作る職人の仕事、“モデリング”。試作モデルが本物の芸術作品へと生まれ変わる奇跡の工程に、メゾンならではの詩的な世界が広がってゆく。

ヴァン クリーフ&アーペルは、独立したモデリング部門を持つ唯一のハイジュエラーだ。モデリング職人の仕事は、紙の上のスケッチを、実際のサイズとボリュームで緻密に復元していくこと。ここでできあがったモケットは、指輪のフィット感やネックレスの柔軟性、ブローチの重量など、人間工学的な観点から様々な検証がおこなわれる。また、そのジュエリーの最終的な価格も算出され、プロジェクトの実現可能性や、ジュエリーの強度なども評価される。このモデリング部門こそ、デザインという2次元のものから、3次元の世界へと最初の命を吹き込む場所となるのだ。

16粒の鮮やかなスぺサタイト ガーネットがちりばめられた華やかなネックレス。絶妙な色のグラデーションを描く宝石が、デコルテに吸いつくかのように、なめらかに添い、魅惑の輝きを放つ。 レイヨン プレシュー ネックレス(イエローゴールド、ダイヤモンド、イエローサファイア、スぺサタイト ガーネット)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

モデリング職人が、デザイン画に従い、作品のパーツごとに錫を切り出し、加工をしている作業風景。

まず、モケットの金属プレートは、加工が容易な錫でおこなわれる。錫は、融点が1064度の金と異なり、230度の温度で融接が可能だからだ。また、モケットに使用されるラインストーンやクリスタルは、ダイヤモンドと同じ重量のものを使用することにより、宝石部門はダイヤモンドの原価を、ほんのわずかな誤差の範囲で計算することが可能になる。

4.78カラットものパープルスピネルをセンターにセットしたリングは、渦巻のモチーフがグラフィカルなフォルムを描き出す。 ガトー ダムール リング(ホワイトゴールド、ダイヤモンド、ホワイト コーラル、パープルスピネル)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

メゾンが独自のモデリング部門を擁する唯一のハイジュエラーである理由。それは、ヴァン クリーフ&アーペルのDNAともいえる、メゾンだけが持ちうる詩情と生命の鼓動を、作品のなかに表現する必要があるからだ。デザイン画を受け取ったモデリング職人たちは、細部の構造を明確にし、各デザイナーのスタイルはもちろん、彼らの期待値や動機までを、メゾンの哲学というフィルターを通して理解し、再現していく。それは、作品の細部にまでいたる美意識や、完璧なフォルム、たたずまいを、メゾンらしい物語として書き上げていくような作業なのだ。

アシンメトリーにセットされた多種多様な花々が生き生きと表現されたブレスレット。計算され尽くした花の位置は、完璧な美的バランスとともに、手首の可動にしなやかにフィットする構造を実現。 フォリ デ プレ ブレスレット(ホワイトゴールド、ルビー)/ヴァン クリーフ&アーペル(ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク)

モデリング職人の仕事は、製図、彫刻、溶接など、宝石職人とほぼ同じ技能が求められる。例えば、メゾンの真骨頂のひとつに“変容するジュエリー”がある。取り外し可能なクリップを内包するネックレスなど、メゾンの複雑な構造のジュエリー制作は、モデリング職人の深い知識と解釈なしには成立しない。完成モデルに到達するまでの技法は制限されることがなく、長年かけて獲得した技能や経験値、メゾンで培った審美眼がいかされていく。そして制作が始まったのちも、デザイナーや宝石職人と対話を重ね、ビジョン、思考、アイデア、ソリューションを共有しながら進む。この職人の英知を結集した制作光景は、まさにヴァン クリーフ&アーペルらしい物づくりの特徴だ。

センターが取り外し可能なクリップとなる“変容するジュエリー”。極めて薄いベゼルにより、ネックレスの構造は半透明のカルセドニーの下に隠れている。また、連結部を少なくしてしなやかさを出すために細かいジュエリーワークがほどこされている。 ネックレス セフェイド(ホワイトゴールド、カボションカット カルセドニー、バゲットカット タンザナイト、モーヴサファイア、ツァボライトガーネット、ダイヤモンド)

試作モデルの完成の制作期間は、例えばネックレスであれば3〜15日間もの日程を要する。このたゆまぬ研究と、新しい技法開発の情熱により、過去においては実現不可能と考えられていたジュエリーが、制作可能になることも珍しくないという。

昔ながらの手仕事が開ける、まだ見ぬジュエリーへの扉。モデリング職人の仕事は、ジュエリーの未来を生み出す仕事でもあるのだ。

動画から、モデリング職人の仕事を垣間見ることができる。

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ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク

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Editor: Asako Kanno